説明と理解、そして決定…①
荻窪病院 虹クリニック 北村誠司院長のお話
『i-wish ママになりたい 妊娠しやすいからだづくり』より
子どもが授かるようにその虹の架け橋になれるようベストを尽くす
東京都杉並区にある虹クリニックは、荻窪駅の近くにあります。本院である荻窪病院から不妊に関わる診療を独立させ、虹クリニックとして2008年に開院しました。
荻窪病院といえば、日本で4番目の体外受精児出産例のある、生殖医療では老舗の病院。今は、不妊治療の部門を虹クリニックで行い、本院の荻窪病院とも連携をしながら診療をしています。
虹クリニックという名前は、院長の北村先生と本院前院長、スタッフで考えたのだそうです。子どもを願うご夫婦の虹の架け橋になりたいとの思いからの採用でした。
私たちが取材で伺ったのは7月初旬。虹クリニックの待合室には、七夕飾りがありました。訪れた方の願いが込められた短冊がたくさん飾られている中に、先生の短冊もありました。「皆様の生活が豊かになりますように」と…。
七夕飾りに心を和ませて、北村先生への取材が始まりました。
荻窪病院 虹クリニック
北村誠司院長
虹クリニックの特徴
子どもさんを希望して、ここに来られるご夫婦は、「妊娠しづらいご夫婦」だと考えています。それに対し、不妊症という言葉はインパクトが大きく、どこか「尖っている」ように聞こえるため、あまり使っていません。
お見えになるご夫婦は、妊娠しづらい状態なわけですから、なにが問題になっているのか、障害になっているのかをきちんと診ていく必要があります。
ホルモン環境はどうか? 卵巣の状態はどうか? 何歳だろうか? など、ご夫婦の状況をよく診て、なるべく自然妊娠に近い方法から治療を始めていきます。
治療はなるべく自然に近い方法から個人個人に合ったものを
一通りの検査をして、可能であればタイミング指導や人工授精など、なるべく自然に近い方法から治療を始めます。ただ、目安となる期間がありますので、その間に妊娠が成立しないようであれば、治療をステップアップしていきます。
ただ、そこですぐに体外受精か? というとそうではなく、それも1つの方法ですが、さらに検査を進め、問題となるような子宮筋腫や子宮内膜症などがあれば、それを解消して改善できる腹腔鏡手術などをお勧めすることもあります。
私は内視鏡専門医でもありますから、こうしたいくつかの方法を提示しながら、その中で最も適していると考えられるものをお勧めします。そして、患者さんと相談しながら、最終的には患者さんご夫婦が決めた方法で治療を進めていくようにしています。
体外受精治療周期では、その方の年齢、卵巣機能、卵巣予備能などを調べて、その方に合わせた排卵誘発方法を決めています。刺激周期が適している方もいますし、低刺激などのマイルドな方法が適している方もいます。個人個人によって違いがありますので、よく見極めていくことが大切です。
特に、私たちクリニックでは、患者さんの年齢制限を設けていないので、40代半ばを過ぎている方もいらっしゃいます。時間的にも、あまり余裕がないケースもありますので、その見極めはとても重要になってきます。
年齢が高い方には、きちんと説明して治療に臨むことが大切
年齢制限を設けてはいませんが、年齢が高い方には治療を始める時に現実的な厳しさも話さなくてはなりません。女性の年齢が44歳、45歳と上がってくるにつれ、妊娠も出産も難しくなります。
50歳前後で通われている方の中には、卵子を採ることができる人もいますが、妊娠するのは難しく、さらに出産となると、なかなか結びつきません。40歳半ば以降で出産までこぎつけるケースはごく少数です。
治療して、子どもを授かることは大変厳しい現実だということを、まず最初にお話をして、「それでも治療をしますか?」と投げかけています。そうして、厳しいことも理解して、納得していただいてから治療をスタートすることが、年齢の高い女性には大切なことだと考えています。