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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

大王対女帝16-三枚のペチコート事件

2021.03.04 10:59

ヴェルサイユに入ったオーストリアのカウニッツは、何をするかといえば、とりあえず金をふんだんに使ってパーティをしたのである。貴族のサロンにも足しげく通う。彼は教養にあふれ、フランス語も流暢に話し、洗練された宮廷儀礼はお手のものだった。ヴェルサイユで噂にならないはずがない。

彼はそんなことに2年をかけてオーストリアに帰って宰相に就任した。もちろんお目当てのポンパドゥール夫人のサロンにも通い、手応えを得た筈である。しかし宮廷にもプロイセン派が居る。あとは外交交渉である。墺側は、自領の下ネーデルランド西半分とロレーヌ地方の権利の放棄を提案した。

フランスといえば、そもそもスペインがブルボン家になった以上、ハプスブルクから挟撃される脅威は消えていたのである。そして、反ハプスブルク以外プロイセンと組むメリットはなく、何より勝手に戦争を仕掛ける普王は信頼できないし、教養とマナーのあるカウニッツは信用できた。

ということで、ポンパドゥール夫人はルイ15世に、仏墺同盟を提案する。仏墺露同盟は、女性が主体となったので「三枚のペチコート事件」と言われる。これで仏墺は政治的にも文化的にも交流が生まれ、モーツァルトもパリに行き、そしてアントワネットがフランスに輿入れするというわけである。