人間観察図鑑3
人間観察学と言う学問が存在する。
それは、人間側からではなく人間以外の側から人間を観察すると言う視点の学問である。
その中でも取り分け、人間行動学に重きを置き、地道に調査、検証に勤(いそ)しむある研究員がいた。
彼は、姓を ‘’柴‘’ 名は ‘’わんこ‘’という少し風変わりな名前を名乗る。
皆より、ちょっと低い視線と、どの研究員とも違うアプローチで、ヒューマンウオッチングを切り取り、編纂(へんさん)したものが ‘’人間観察図鑑‘’である。
しかし、この優れた?研究成果も世間には受け入れられないちょっとした理由があった。
その理由とは、彼が人間の感性を持ち合わせながらも、人間にはなれなかった‘’柴わんこ‘’つまり、日本犬の代表として名高い「柴犬」だからなのである。
そんな柴犬研究員の心の中をエッセイ仕立てで紹介する研究記。
では、その研究成果の中からエピソードを少し…
ゲ・ン・ キ・ン
ジ・ド・ウ
ア・ズ・ケ
バ・ラ・イ・キ
essay No.1
ボクの名前は‘’柴わんこ‘’
ごく普通の赤毛の柴犬である。
首輪はしないが、唐草模様のスカーフがアクセントの、ちょっと昔気質な日本犬なのだ。
ご主人様はお出かけが大好きで、休みの度に何処かに出かける。
その時は必ずお供するのだ。
今日もご主人様と共にお車で出発!
と行きた所だが、出発前にはそれなりに先立つものが必要である。
用立てのため、ご主人様とBANKへ直行。
そこで見かけたちょっと気になる、Old Peopleの行動をご紹介。
平日のお昼前、ATMは意外にも込み合っていた。
そのATMは、Bank内で離れた2箇所に分かれており、どちらからも、もう1箇所の状況は分からない。
先ずは外から入り、1箇所目のATMのある扉を開けると、10人位の列が出来ていた。
もう1箇所の状況はわからないが、そちらに期待を込めて向かってみる。
しかし、こちらも同じ様な状況だった。
仕方なくご主人様は、諦めてその列に並ぶ事を選択した。
ボクは最初、ご主人様に抱っこされて並んでいたのだが、出金までにしばらく時間がかかりそうな事もあって、地上に置かれることになった。
普通なら人の多い、この様な場所に“わんこ“を連れて入るなど許されないのだが、ご近所の人気者であるボクに限っては、顔パスなのだ。
そんな柴犬人気も利用しながら、人間観察の研究をして行くのである。
前から7番目に並んだボク達は、次々に利用を終えて去って行く人々を見送り、4番目に至るまでは順調だった。
しかし、ここから一向に進む気配がなくなり、順調さは途切れてしまう。
目の前にあるATMは2台。
2台共に年の頃なら60歳は超えているだろう女性が立っていた。
少し前から様子を見ていたのだが、左側の女性は、ボク達が並び始めたころからずーっとそこで操作している。
そちらに耳を澄まして見ると、こんな音声が幾度となく流れてくる。
ATM
「お客様の入力された情報は正しくありません。もう一度最初から・・・」
操作の度にこの音声が繰り返し流れ続けている。
人間は、並んだ列が少しでも流れていると、まだ我慢出来るようだが、停滞が始まると“ストレス“が溜まる動物らしい。
途端に所々でざわめき出す。
ここで、ちょっとボクの後ろの声に耳を傾けて見た。