ひな祭りの時期にだけ見る菱型の餅
しゃちほこです。
段々と暖かい日が多くなってきましたね。春がすぐそこまで来ているように感じます。
私は花粉症ではないので、温かくなり始めのこの時期がとても好きです。
さて、今回は久しぶりに和菓子の紹介をしたいと思います。
皆さんはひな祭りの時期にだけ現れる、あの和菓子の名前をご存じでしょうか。
そう、菱型の形をした餅「菱餅」です。
そのままかよ!と思うかもしれませんが、実はこの名前にもきちんとした由来があるんです。
菱餅とはそもそも、中国で「上巳節(じょうしせつ)」という季節の節目に、
菱の実の粉で作った餅に母子草を混ぜて食べていたものがルーツとなります。
日本発祥のお菓子ではなく、中国から伝わってきたものなんですね。
ちなみに、ひな祭り自体も中国から伝わった行事なのですが、この話はまた別の機会で。
菱餅の話に戻ります。
菱という水草は繁殖力が強く、菱の実には子孫繁栄や長寿になる力があると信じられており、
そこに、母と子が健やかでありますようにとの願いを込め、母子草を混ぜて食べるという習慣が根付いていました。
この習慣は後に日本に伝わりましたが「母と子(母子草のこと)を搗いて餅にするのは縁起が悪い!」と考えられ、
母子草の代わりにヨモギが使われるようになりました。
江戸時代に入ると、白色(菱の実で作った餅)と緑色(ヨモギを練り込んだ餅)の
二色の餅を現在の菱型に成型するようになりましたが、
その理由は、菱の実の形(仙人が菱の実を食べて不老長寿を得た伝承があった)や
心臓の形(心臓の病気に効果があるといわれていた)など様々な言い伝えがあり、
はっきりとは分かっていません。
しかし、長寿や健康を願って作られたことは確かなようですね。
さらに時代が進み明治時代になると、クチナシの実で色づけされた桜色の餅が加わり、
今の三色の餅を重ねた形になりました。
これが菱餅の由来となります。
中国から伝わった文化が日本独自の文化と合わさって今の形になったのですね。
例年であれば特に意識することも無かったのですが、
今は新型コロナウイルスが蔓延し、世界中の誰もが健康を祈っている状況だと思いますので、
菱餅に込められた思いを強く意識してしまいます。
来年のひな祭りでは、こうした意識を持たなくてもいいような世の中になっていることを願っています。