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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

啓蒙の光17-ルソー「人間不平等起源論」

2021.03.06 08:47

1755年、「人間不平等起源論」というラディカルな著作が飛び出す。書いたのは、ジャン・ジャック・ルソー、ディジョンのアカデミーが、「不平等の起源は何か」というテーマで出した懸賞論文である。ルソーは今でこそ有名だが、他の文化人と違い、アカデミックな就学はしていない。

彼は1712年にジュネーブの時計職人の子として生まれたが、10歳の頃、父が没落しで故郷を追われ、孤児同様の境遇となった。彼はそれからも苦労し、職を転々とし、結局ヴァランス夫人の愛人となって、そこで本格的な学問を独学し、42年にパリ社交界デビューを飾ったというわけだ。

「人間不平等起源論」は、人間の「自然状態」の未開人には、知能がなく、不平等はなかった、と論じる。人間の知能が発達し、社会を持つと不平等が生まれ、それは所有権と為政者が生まれてそれが守られて、固定されたというわけである。不平等は自然だが、固定されて格差が拡大されると自然ではない、と。

この理論の裏付けは、今に至るも完全にはされていない。が、平等が本来の在り方だという理論はたいへんラディカルだった。ルソーは、ここで啓蒙主義文人として認められ、彼の思想はフランス革命は、おろかマルクス=エンゲルスに至るまで、大きな影響をもつことになる。