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レイフロ@台本師&声劇民☮

貰い泣き駅の彼女(2人台本)

2021.03.09 00:30

【ジャンル:シリアス/恋愛】

【所要時間:50〜60分程度】


●上記イメージ画像は、ツイキャスで生声劇する際のキャス画にお使い頂いても構いません。

●ご使用の際は、利用規約をご一読下さい。


⬇この台本のPV作りましたので、良かったら見てくださいね( 'ω')/


【人物紹介】

片矢 太紀(かたや たいき)♂:

長く付き合った彼女と別れ、傷心中。

都市伝説の「貰い泣き」駅に迷い込んでしまう。


睡(スイ)♀:

貰い泣き駅にいる女性。

※冒頭に一言だけ車内放送があるので、兼役お願いします。






【演じる際の注意点】

・「貰い泣き駅」って微妙に言いづらいので気を付けて下さいw






↓生声劇等でご使用の際の張り付け用

――――――――

『貰い泣き駅の彼女』

作:レイフロ

太紀:

睡:

https://reifuro12daihon.amebaownd.com/posts/15447559

――――――――







以下、台本です。


太紀:

学生時代から付き合っていた彼女、

高口美結(こうぐちみゆ)に別れを切り出された。

仕事に追われ、ようやく時間を作って会いに行った挙句の出来事だ。

俺も俺で、しばらく見ないうちに派手に様変わりしていた彼女に驚き、

引き留めることも忘れ、逃げるようにその場を離れた。


帰りの電車の中。

鞄の中で、美結(みゆ)に渡すはずだった

プレゼントの揺れる振動が手に伝わり、胸が苦しくなった。






車内放送(睡役の人がやって下さい):

次は~「貰い泣き」。

「貰い泣き」でございます。





太紀N:

電車は「貰い泣き」と言う駅に止まった。

そんな駅は無かったはずだが、

俺は興味本位で駅のホームに降り立った。

電車のドアはすぐに締まり、走り出してしまった。







睡:

(静かに泣く)


太紀:

あ、あの…大丈夫、ですか?

すみません、ここって…


睡:

ここは貰い泣き駅よ…?

貴方、来ちゃったのね…


太紀:

貰い泣き駅って…え、あの都市伝説の?!

そんな…本当に存在するだなんて。

夢でも見てんのか?


睡:

この駅のこと知ってるの…?


太紀:

確か都市伝説では、

「駅にはいつも泣いている女の子がいて

相談事をすると解決してくれる」とか何とか…。


睡:

そうよ、恋の相談事だけだけどね。


太紀:

恋の?


睡:

ここに来れたってことは、

貴方にもあるでしょ?恋の相談事。


太紀:

何なんだこの展開…夢、だよな…?


睡:

貴方の名前、聞いてもいい?


太紀:

あ、片矢 太紀(かたやたいき)だよ。

君は?


睡:

…スイ。


太紀:

スイ?綺麗な響きだな。どんな字書くんだ?


睡:

「睡眠」の睡(スイ)よ。

さ、恋で悩んでること、話してみて…?





太紀N:

俺は半分自棄(やけ)になって話した。

高校で3年間想い続けた女性に告白したこと。

社会に出てお互い違う職についたが、上手くやっていたこと。

彼女の勤務地が都会に移り、

遠距離恋愛が始まってから、歯車が狂い始めたこと。




太紀:

8年付き合ったよ。

でも都会に行ったら、

あっという間に俺との思い出は風化しちゃったんだろうな…。


睡:

彼女から別れを切り出されても止めなかったのね。


太紀:

久しぶりに会った彼女は、

髪も茶色くて、ゆるふわ?っていうのかな?

パーマがかかってて、口紅も真っ赤で…

地元に居た頃とは大違いだった。


睡:

変わっちゃってたのね。


太紀:

別にそれが駄目ってわけじゃないんだけどさ、

でもなんか俺…


睡:

ショックだった?


太紀:

かもな。

えっと…ここって、霧雨が降ってるんだな?


睡:

いつでも降ってるの。

でもこの駅で降ってるのはね、

「遣(や)らずの雨」なの。


太紀:

「遣(や)らずの雨」って?


睡:

「まるで来客を帰らせないかのように降ってくる雨」のことよ。


太紀:

怖いなぁ。

もしかして俺、もう帰れなかったりする?


睡:

そんなことないよ!そのうち電車が来ると思う。


太紀:

良かったぁ。

でもさ、恋の相談事を解決するって言われても、俺の場合はもう別れちゃったしなぁ。


睡:

でも未練があるからここに来たんだよ。

復縁することだけが解決法じゃないけど…。


太紀:

そっか。

なぁ、睡(スイ)?

ずっと俯(うつむ)いてるけど、ちゃんと顔見せてくれないか?


睡:

…泣きすぎて酷い顔だから、ヤなの。


太紀:

それでもいいよ。



太紀N:

ゆっくりと顔を上げた睡(スイ)の目は、

泣きはらして真っ赤だった。

年は俺より年下だろう。

顔立ちは整っていて、

セミロングのストレートヘアがよく似合っていた。



睡:

何か言ってよ…?

やっぱり酷い顔してるんだ?


太紀:

いや、違うよ!

その、なんていうか、少し安心した。


睡:

貰い泣き駅にいるのは、化け物か何かだと思ってた?


太紀:

あ、いや…

てゆーか俺、ほんとに今、

都市伝説の貰い泣き駅にいるのか?!夢、だよな?


睡:

まだ信じてなかったの?

頬っぺたつねってみたら?


太紀:

あだだ!普通に痛いけど…

まだ信じらんないなぁ。


睡:

ここは昼も夜もないし、お腹も空かないし、

眠たくもならない不思議な場所なの。


太紀:

時間が止まってる、みたいな?


睡:

随分冷静ね。


太紀:

現実味がないだけだよ。


睡:

ね、話の続きを聞かせて?


太紀:

彼女に振られた話なら全部したよ。


睡:

嘘。悩み事を解決して欲しいなら隠さずに言って。


太紀:

んん…わかった。

さっき、彼女の容姿が様変わりしてたって言ったけどさ。

本当は、サプライズで会いに行ったら、

ほぼ半裸で出てきたんだ。

ベッドには大学のサークルの先輩が全裸で寝てて。

俺と彼女のことをずっと応援してくれてた先輩がだぜ?


睡:

寝取られちゃったのね…


太紀:

ベタな話だけど、アイツ、俺と遠距離になって寂しくて、

急に知り合いもいない都会に放り出された時に、

たまたま再会した先輩と飲みに行ってそのまま…みたいなことらしいよ。


睡:

寝取られちゃったのね。


太紀:

なんで2回言ったんだよ!


睡:

ふふ。


太紀:

あ…笑った!


睡:

え?


太紀:

笑った方が可愛い…と、思、う。


睡:

私、は…


太紀:

ん?電車の音がする。


睡:

今日はそれに乗って帰って?

必要があればまた会えるから。


太紀:

え、でもまだ…


睡:

ほら、早く乗って!


太紀:

あ、睡(スイ)…!



睡N:

電車が貰い泣き駅に停車すると、

太紀(たいき)の足は勝手に動き、電車に乗り込んでしまった。

私は泣かずに見送ろうとしたが、

どうしても涙がこぼれてしまった。

…本当は行ってほしくなかった。


電車はすぐさま遠ざかり、見えなくなった。







太紀N:

気が付くと、自分の降りるべき駅にいた。

俺は帰宅するなり泥のように眠った。

夢では、今日別れたばかりの彼女・美結(みゆ)が、

先輩とベッドで重なっていた。

俺はその光景を馬鹿みたいに突っ立って見ていた。


目覚めた俺は、美結に渡すはずだったプレゼントを手に取る。

雫のような形をしていたネックレスは、

俺にはもう、涙にしか見えなかった。


「貰い泣き」駅で会った、睡(スイ)を思い出す。

彼女の透き通った涙を。







SE:ガタンゴトン(電車の音)







太紀N:

数日後。俺はまた貰い泣き駅に来ていた。




睡:

またここに来たってことは、彼女のこと本当に好きだったのね。


太紀:

好きだったよ。

これからもずっと一緒にいるもんだと思ってた。


睡:

思ってること、何でも話して?


太紀:

…これが、捨てられなくてさ。

睡:

綺麗なネックレス…


太紀:

デートで海に行った時、二人で綺麗な貝殻拾ってさ、

それを特注で加工して、ネックレスにするって約束してたんだ。

最近構ってやれなくてごめんって、

サプライズで渡すはずだったのに…俺ってほんと間抜けだよな。


睡:

わぁ、見る角度によって色が変わる…ステンドグラスみたい!

なんていう貝殻?


太紀:

色々説明されたけど、

早くプレゼントしたいって考えてたら、細かいことは忘れたよ。


睡:

可愛いね。


太紀:

女の子ってこういうの好きだよな。

やっぱりそれ可愛いか?


睡:

え?あぁ、ネックレスも可愛いけど、

今言ったのは貴方のこと。


太紀:

え?


睡:

出来上がったネックレスを見ながら、

気もそぞろに説明を聞き流す太紀(たいき)が、可愛いなって。


太紀:

ばっか…!可愛いって言われて喜ぶ男はいないよ!


睡:

そうなの?ごめんなさい。


太紀:

い、いいけどさ。


睡:

ね、これ私にくれない?


太紀:

え?


睡:

捨てられないんでしょう?ダメかな?


太紀:

嫌じゃないか?

他の女にやる予定だったものなんて。


睡:

でも、貴方の心がこもってる。

誰にもつけて貰えずに捨てられるなんて悲しすぎるよ。


太紀:

それはそうだけど…


睡:

太紀(たいき)が持ってたいならいいの。

いつか彼女を許せる時が来るかもしれないし。

そうしたら彼女にこれを…


太紀:

やめてくれ!

今は、あんまり許すとか許せないとか

考えたくないんだ…


睡:

そっか…ごめん、変なこと言って。


太紀:

俺もごめん、強い言い方して。

…(少し考える)

もしも、そのネックレスを本当に欲しいと思ってくれたなら、貰ってくれ。


睡:

いいの?!


太紀:

うん。


睡:

ありがとう…大事にするね!


太紀:

俺が持ってても未練が残るだけだし、

きっと手放した方がいいんだよな…。

うん、少し胸のつかえが取れた気がする!


睡:

ん、と、留め具これどうなってる?

なかなかハマらない…


太紀:

つけようか?


睡:

お願い。


太紀N:

そう言って睡(スイ)は、しなやかな黒髪を左側に纏めた。

うなじがやけに白く見える。

微かに、爽やかなミントの香りがした。


太紀:

ほんとだ、結構難しいんだな。

俺指太いから余計…


睡:

よく見てやれば大丈夫よ。

…出来た?


太紀:

あ、…うん。


睡:

ありがとう。どうかな?


太紀:

似合うよ。

こいつも捨てられなくてよかったってホッとしてるかもな?


睡:

ふふ、そうね。


太紀N:

睡(スイ)が微笑むと、すさんだ気持ちが温かくなるのを感じた。

睡ともっと話がしたい。

そう思った途端、遠くから電車の音がしてきた。


睡:

また会えて嬉しかった。

このネックレスを手放すことで、

彼女への思いに一区切りつけばいいね?

あ、でも相談事がなくなっちゃったら、

太紀(たいき)はここには来れなくなるから、

私とはお別れになっちゃうか…


太紀:

睡(スイ)はずっとこの駅に居るのか?


睡:

…うん。

私はここから出られないの。


太紀:

出られない?


睡:

…私はここで祈ってるから!

早く太紀(たいき)の心が落ち着くように。


太紀:

睡(スイ)!俺、もっと君と…!



睡N:

電車が停車すると、またもや太紀(たいき)の足は勝手に動き

電車の中へと入ってしまった。

行かないで、という言葉を飲み込み、

私は必死に涙を堪えたが、結局泣いてしまった。

動き出した電車は、あっという間に視界の彼方へと消えていった。













太紀N:

あれから2週間が過ぎた。

未練が残る物を手放したせいか、失恋の痛みも落ち着き、

電車に乗っても貰い泣き駅に行けなくなった。


だが、睡(スイ)の悲しげな顔が頭から離れない。

睡に会いたいと思っている自分がいた。






太紀N:

1か月が過ぎようとした頃、事態は動き出す。

俺の元カノ・美結(みゆ)から電話が来たのだ。

「会って謝りたい」と泣きながら訴える美結に、

貰い泣き駅で泣いていた睡(スイ)を思い出し、

断ることは出来なかった。


俺の心は、再び乱れた。









SE:ガタンゴトン









睡:

(静かにしくしく泣く)


太紀:

睡(スイ)、久しぶり。

また泣いてたんだな、大丈夫か?


睡:

太紀(たいき)の方こそ…辛そうな顔してるよ。


太紀:

俺はどうしようもないバカ野郎だ…


睡:

何があったの?


太紀:

元カノが謝ってきたんだ。

浮気現場見られて、開き直って別れを切り出したものの、

すごい後悔してるって。

俺の傷ついた顔思い出すと眠れなくて、

どうしても会いたくて謝りたくて…

って涙ながらに訴えられた。


睡:

浮気相手の先輩とはどうなったの?


太紀:

切れたって。

浮気は結局、俺の気を引きたいだけだったって言ってたけど、

どこまで本当なんだか…勝手な話だよな。


睡:

許してあげたの?


太紀:

どうかな。

とりあえずその場は宥(なだ)めたけど…

そうでもしなきゃ泣き止まなかったし。


睡:

実際は?


太紀:

上手く考えが纏まらない。

裏切られて、俺も別れ話受け入れたけど、

泣いてる姿見てたらまた揺らいできちまって…。

心の奥では、結局俺も未練タラタラなんだよな…情けない。


睡:

8年も付き合ったんだもん。

そんなにすぐ割り切れるはずないよ。


太紀:

睡(スイ)、俺どうしたらいいと思う?

…ってあれ?ネックレス、もうしてないのか?

てゆーか首、どうした?!血が滲んでるじゃないか!


睡:

あ、えっと、大丈夫だよ!


太紀:

引っ掻かれたみたいな痕だな…

あ、俺、ハンカチ持ってる!


睡:

本当に大丈夫だから!

見た目より全然大したことないの!

それよりもごめんなさい。

ネックレス、失くしちゃったの…


太紀:

睡(スイ)はこの駅から動けないんだから、ホームのどこかにあるはずだろ?

睡、俺に何か隠してるんじゃないか…?


睡:

大事にするって言ったのに。

ごめんなさい…っ…


太紀:

泣かないでくれ…

女性に泣かれると俺、ほんとポンコツでしかなくなる…


睡:

さっきは馬鹿野郎だったのに、今度はポンコツ…?


太紀:

うん。だから勘弁してくれよ…。


睡:

うん、ごめん…

太紀(たいき)は優しいね。


太紀:

俺はただ、臆病なだけだよ。


睡:

それでも。優しいよ。


太紀:

ん?電車の音…もう来たのか。

まだ色々睡(スイ)に相談したいことがあんのに…


睡:

太紀(たいき)、あのね?

彼女のこと、もう一度ちゃんと考えてあげて?


太紀:

え?


睡:

貴方のことを想う気持ちは、とても強いと思うから…!


太紀:

なんでそんなこと言えるんだよ?


睡:

浮気は確かにやりすぎたけど、

美結(みゆ)ちゃんは、あなたの愛を確かめたかっただけなの。


太紀:

え?美結(みゆ)ちゃんって…

なんで元カノの名前知ってるんだよ?!

ああ、くそっ!足が勝手に電車に向かっちまう!

俺はまだ帰りたくないのに!


睡:

美結(みゆ)ちゃんのこと、許してあげて…?


太紀:

睡(スイ)…っ!

また来るから!絶対来るからなっ!!



睡N:

扉は無情にも閉まり、太紀(たいき)はドアを強く叩いていた。

私は心配させまいと笑おうとしたが、

どうしても涙が溢れてしまう。

私は、どうしてこんなにも弱いのだろうか…。

本当は、太紀に側にいて欲しいと思っている自分がいた。















太紀N:

睡(スイ)が美結(みゆ)を知っていたこと、

睡の首に争ったような傷跡があったことから、ある考えに至った。

帰るなり、美結のアパートに直行し、部屋中を探す。

そして、見つけてしまった。

睡(スイ)にあげたはずの、貝殻のステンドグラスのネックレスを。


押し黙る美結(みゆ)を問い詰めると、彼女はこう言った。


「これは私がもらう予定だったものでしょ?!あの女から取り返しただけだもん!」

と。


やはり美結も睡を知っている。

美結も、貰い泣き駅に行っていたのだ。











SE:ガタンゴトン









睡:

(静かに泣く)


太紀:

睡(スイ)…


睡:

太紀(たいき)!

大丈夫?酷い顔してるよ?


太紀:

あれから美結(みゆ)と話し合ったんだ。

全部聞いた…

ごめんっ!!

睡(スイ)の首の傷も、美結がネックレスを奪い返すためにやったんだな。

ほんとごめん!!


睡:

そんなこと言ったら私も謝らないと…。

この駅に美結(みゆ)ちゃんも来てたこと、

貴方に黙ってたから。


太紀:

なんで言ってくれなかったんだ?


睡:

ここはね、

本当はお互い好きなのに、すれ違って、

抉(こじ)れちゃったカップルが来る所なの。

私はお互いの話を別々に聞くことで解決に導く…

そんな存在なんだよ。

だからお互いの話を聞いてすぐわかったの。

貴方達に足りないのは、遠慮せずに腹を割って本音を言うことなんだって。


太紀:

それは…っ確かに…

遠距離になってから、変に遠慮したり、すれ違ってばかりだったけど…


睡:

太紀(たいき)がここに来た時、

いずれ太紀の彼女もここに来るって、私は分かってたの。

そう思った上で、ネックレスが欲しいって言ったんだよ。


太紀:

いつか美結(みゆ)にプレゼントするって言ったネックレスを

わざと睡(スイ)が付けることで、

美結がそれに気付くか試したのか?


睡:

そう。美結(みゆ)ちゃんはちゃんと気付いたよ。

だから必死に取り返そうとした。


太紀:

美結(みゆ)…


睡:

美結ちゃんは今、あのネックレスに支えられてるの。

あのネックレスは、二人の想い出の貝殻で

太紀(たいき)が作ってくれたもの…。

貴方にちゃんと愛されていた証拠だって、

素直な心を取り戻せたんだよ。


太紀:

そっか…。

デザインも何回も打合せして一生懸命作ったのに、

浮気なんかされて…

自分は大バカだって思ったけど、

無駄じゃなかったんだな。


睡:

うん。

美結(みゆ)ちゃんはちゃんと反省して、

あなたの信用を取り戻そうと今必死だよ。

それはわかるでしょ?


太紀:

うん。今は献身的に尽してくれてる。


睡:

でも…

そこまで伝わってるんだったらどうしてまた此処に来たの?

美結(みゆ)ちゃんと話し合って分かり合えたんじゃないの?


太紀:

それは…

美結(みゆ)が睡(スイ)を傷つけたことを謝りたかったから…


睡:

貰い泣き駅はそんな理由で来れるところじゃないの。

恋の相談事がないと来れないんだよ?


太紀:

それは…


睡:

まだ完全に寄りを戻すこと躊躇ってる?


太紀:

俺、変なんだ…。

美結(みゆ)の事情は理解したし、

またやり直したいって気持ちもあるのに…

睡(スイ)のことが頭から離れない。


睡:

え?私…?


太紀:

睡(スイ)は恋の相談事を解決するのが役目だって言ってたから、

別に俺だから優しくしたわけじゃないって分かってる…

でも、睡みたいな子が恋人だったら、幸せなんだろうなって…


睡:

太紀(たいき)…それは、恋じゃないよ…


太紀:

なんでそう言い切れるんだよ?


睡:

私は、太紀(たいき)と美結(みゆ)ちゃんに幸せになって欲しいの…!


太紀:

それは答えになってないだろ?!


睡:

ここは「恋の相談事を解決する」場所なのよ!


太紀:

だからって、

睡(スイ)が恋をしちゃいけないって決まりでもあるのか?!


睡:

それは…っ


太紀:

俺が貰い泣き駅を出る時、

いつも睡(スイ)は泣きながら見送ってるよな?

俺に、行かないでって言ってるんじゃないのか…?


睡:

そ、そんなことっ…適当なこと言わないで!


太紀:

じゃあなんでそんな辛そうな顔してるんだよ!


睡:

してないよ…


太紀:

してる!


睡:

してない!!


太紀:

してるだろ!!






SE:ガタンゴトン






睡:

ほら、電車が来たから…もう行って…!


太紀:

睡(スイ)も一緒に行こう!ここから出るんだ!

(睡の手を掴む)


睡:

そんなこと出来っこないよ…私は電車には乗れないの!

手を離してっ!


太紀:

嫌だ!離さないっ!


睡:

太紀(たいき)、聞いて。

美結(みゆ)ちゃんは言ってたよ?

浮気現場を見られた時、

太紀(たいき)に怒って貰えなかったことが、一番悲しかったんだって!


太紀:

なんだよそれ…

寝てる先輩叩き起して、

「俺の女に手を出すな」って怒ればよかったのか?!


睡:

そうだよっ!!そうしてほしかったの!!


太紀:

そんなの勝手すぎるだろ!


睡:

女の子はね…勝手なの!愛されたいの!!

それじゃダメ?!


太紀:

睡(スイ)…


睡:

美結(みゆ)ちゃんのこと、大事にしてあげて!

寂しがり屋で、貴方のこと本当に愛してる!

信じてた相手に裏切られて、太紀(たいき)が不安に思う気持ちもわかるよ。

でも、ようやく美結ちゃんが真っ直ぐな気持ちを伝えようとしてるのに、

目を逸らさないで!!

私への想いにすり替えることで、逃げないで!!


太紀:

そ、そんなつもりは…!

くそっ…まだ話したいのに、足が勝手に電車に向かっちまうっ!

睡(スイ)…!俺は…っ!



睡:(泣きながら)

私も、太紀(たいき)みたいな人を好きになればよかった…。

ごめんね……っ、ありがとう……




太紀:

睡(スイ)ーーーーッ!!!






太紀N:

俺がが電車に足を踏み入れると、まるで

睡(スイ)を拒絶するようにバチッと鋭い電気のようなものが走り、

俺達の手は解かれた。


走り出す電車。


あっという間に遠ざかる睡(スイ)は、

音もなく降る雨に打たれながら、

貰い泣き駅で一人、泣き崩れていた。





















太紀N:

貰い泣き駅に囚われている睡(スイ)を助けたくて調べているが、根拠のない噂ばかりだ。

どの噂にも共通していることは、

貰い泣き駅にいるのは必ず女性で、一人であること。

だが、その女性の外見の特徴はバラバラで、必ずしも睡とは一致しなかった。

調べはそこで行きづまってしまった。


美結(みゆ)は、すっかり昔の優しい彼女に戻り、献身的に俺を支えた。

次第に俺も、睡に言われたことを

冷静に考えることが出来るようになっていった。





太紀N:

睡(スイ)の言う通り、俺はまた裏切られることを恐れて、

美結(みゆ)のまっすぐな気持ちを受け止めることから逃げていた。

睡に惹かれたのは本当だ。

でも、片思いの期間を入れれば、11年も美結のことを想ってきたのだ。

何があったとしても、美結への気持ちがそんな簡単に消えるはずがない。


心を決めよう…!


でも俺が、本当の意味で前に進むためには、

やるべきことがある…!












(SE:ガタンゴトン)










睡:

久しぶりだね…何か月ぶりかな?


太紀:

ようやく来れたよ。

どうしても睡(スイ)と話したかった。


睡:

…うん。


太紀:

あれから色々考えて、美結(みゆ)とも沢山話し合ってさ。

…寄りを戻そうと思う。


睡:

そっか…。


太紀:

睡(スイ)に言われた通り、お互い腹を割って話したよ。

全部ぶち撒けた。

そしたらなんか、お互い好き同士なのに何やってんだろうなって、笑えてきてさ。


睡:

分かり合えたんだね…


太紀:

だから、今日帰ったら美結にちゃんと言うよ。

また俺と付き合ってほしいって。


睡:

うん…!

恋愛って難しいね…。

すれ違ってばかりだと、純粋な想いもどんどん歪んでいっちゃう。


太紀:

今回のことで身に沁みたよ。

…だからもう、美結(みゆ)を離さない。


睡:

…うん。


太紀:

こんなこと言っても信じてもらえないかもしれないけど、

睡(スイ)に惹かれたのは本当なんだ!

睡みたいな優しい子が彼女だったら幸せなんだろうなって思うよ…。

睡に対する恋の悩みで、また此処に来れたのがその証拠だろ?


睡:

私に会ってちゃんと想いを断ち切って、

美結(みゆ)ちゃんとしっかり向き合うために来てくれたの?


太紀:

それもあるけど、もう一つ心残りがあるんだ。


睡:

何?


太紀:

睡(スイ)は、ここから出たいんじゃないか?


睡:

えっ!?ど、どうしてそんなこと…


太紀:

帰りの電車に乗る俺を見る目が、すごく悲しそうでさ。

あれは、睡(スイ)も帰りたいから泣いてるんじゃないのかって…


睡:(涙をこぼし始める)

あ…あれ?…私…


太紀:

やっぱりここから出たいんだろ?

自分は電車に乗れないって前に言ってたけど、

本当は何か方法があるんじゃないのか?


睡:

…あるけど、無理なの。

私のためにそこまでしてくれる人なんていないもの…


太紀:

何をすればいい?俺に出来ることなら…


睡:

私は、この貰い泣き駅に来た人の、恋の相談事を解決しようと頑張ってきた…!

でも皆、自分の悩みが解決した途端、

私の涙の理由なんてどうでもよくなっちゃうの…


太紀:

そんなことない、俺は睡(スイ)を助けたい!


睡:

じゃあ太紀(たいき)は、大切なものを失う覚悟はある?!


太紀:

大切なものって?


睡:

…わからない。


太紀:

俺の大切なものと引き換えにすれば、

睡(スイ)をここから連れ出すことが出来るんだな?!

教えてくれ!どうしたら君を助けられる?!


睡:

方法は簡単なの…

最後の電車に乗る時に、私の手を引いて電車に乗せてくれればいい。


太紀:

それだけ?!


睡:

でも貴方が、「自分の大切なものと引き換えにしてでも私を助けたい」って、

心の底から思っていなければ、私は電車に乗れないの!

前にも助けてくれようとした人がいたけど駄目だった!

口先だけの想いじゃダメなの!

だからきっと貴方も無理…。


…もうすぐ電車が来るわ。

それが最後の電車よ。私とも、さよなら。



太紀:

大切なものって、

俺の命って可能性はあるか?


睡:

それはないと思うよ。

私は一緒に帰ってくれる人がいないと、電車に乗れないんだから。





(SE:ガタンゴトン)






太紀:

電車が来た…。


睡:(涙をこらえながら)

変なこといってごめんね。ほんとに気にしなくていいから。

私は、ここにいるのがお似合いなんだと思う…。

こうやって太紀(たいき)みたいな優しい人にも会えたりするし…

ここも、悪くないよ…?


太紀:

嘘つくなよ、そんな顔して辛くないわけないだろ?!

俺に会うのが今日で最後なんだったら、なおさら本心言っちまえよ!


睡:

私、応援してるから…幸せに、なって…うぅ…!(泣き崩れる)


太紀:

そんなことじゃない!ちゃんと自分の気持ちを言えッ!!


睡:

…うぅ…!(泣く)


太紀:

睡(スイ)がこれまで、どれだけの人達の相談聞いてきたかわかんないけど、

俺は睡のことも助けたい…!

前にも助けてくれようとした人がいたけど、電車に乗れなかったっていったよな?

俺はさ、睡の想いも足りなかったんじゃないかって思うんだ!


睡:

私の、想い…?


太紀:

「今回もどうせダメだろう」って心の中で諦めちまってるんだよ!

俺は睡(スイ)のおかげで、美結(みゆ)と、自分と向き合えたんだ!

人に希望与えといて自分は諦めるなんて、そんなのおかしいだろ!?!


睡:

うっ…う…太紀(たいき)、私…は…


太紀:

ダメだったらその時にまた考えればいいだろ!?

俺が手を引いてやる!

だから睡(スイ)が!自分で!

俺の手を掴めっ!!!


睡:

私も…っ、帰りたいよぉ…!

こんなところで、一人で泣いてるのはもうイヤなの…!

ひっく、お願い…!


私も連れてって!!!!













(SE:電車のドアが閉まる音)














太紀:

…はは、…!睡(スイ)!

乗れた…!乗れたよっ!!


睡:

あ…私…、

嘘、ほんと、に?


太紀:

本当に乗れた!

よかったな!一緒に帰ろう!


睡:

あっ!でも、太紀(たいき)の大切なものが…!

ごめんね、ごめんね…っ!


太紀:

今のところ、俺は何を失ったのか全然わかんないけどな?


睡:

……。


太紀:

そんな顔するなよ。

このまま睡(スイ)を置いて言ったら

それこそ俺は一生後悔する。

そんなの嫌だったんだ。


睡:

太紀(たいき)…


太紀:

それに、大切なものだかなんだかわかんないけどさ、

生きてればなんとかなるだろ?


睡:

うん…そう、だね…!うぅ…(泣く)


太紀:

おいおい、

せっかく貰い泣き駅から脱出出来たのに

結局泣くのかぁ?


睡:

だって…だって、嬉しくて…!

太紀(たいき)、ありがとう…本当にありがとう…!


太紀N:

うれし涙を流しながら微笑む睡(スイ)の笑顔は、とても美しかった。

俺たちは自然と抱き合い、お互いの体をきつく抱きしめた。



睡:

私…本当にここから出られるんだね…!





太紀N:

電車がゆっくりと動き出す。

俺は、見納めとなるであろう「貰い泣き」駅に視線を移した。

遣(や)らずの雨が降るこの不思議な駅が、徐々に遠ざかる。

そのホームには、もう誰もいない。















誰もいない
















はずだった…。
















太紀:

……え……?????















太紀N:

貰い泣き駅のホームに、人影が見えた。

ウェーブがかった明るい茶髪の女性が、

電車を追いかけてホームのギリギリまで走ってきて、

泣きながら必死に、何かを叫んでいる。






太紀:

…み…

…美結(みゆ)……?






太紀N:

俺の体はガクガクと震え始めた。

腕の中でうれし涙を流す睡(スイ)に視線を落とす。

睡はゆっくりと顔を上げると、

美しく微笑んだ。



睡:

ふふ…



太紀:

どういう、ことなんだ…!

これは、どうなってるんだよッ!?


美結(みゆ)!

美結――――ッッ!!!!







睡:

本当にありがとう、太紀(たいき)。

私をあそこから連れ出してくれて…


太紀:

説明してくれ!

なんで貰い泣き駅に美結(みゆ)がいるんだよッ!!


睡:

今日太紀(たいき)が来る少し前に、美結(みゆ)ちゃんも来てたの。

太紀とまたやり直せるかもしれないって、

私のアドバイスのおかげだって。

だから私の相談事も、何かあるなら聞いてくれるって言うの。

優しいよね、美結ちゃん。


太紀:

何を…、美結に何を相談したっていうんだッ!


睡:

別に?普通に私の酷い男遍歴(おとこへんれき)を語っただけだよ?

暴力振るわれて捨てられても離れられなくて、

でもその人のこと大好きだったから、全部私が悪いのって泣いたの。シクシク泣いたの。


太紀:

それが…なんだって言うんだよ…


睡:

貰い泣き駅にはね、『ルール』があるんだよ?


太紀N:

すると睡(スイ)は、まるで絵本でも読むかのような調子で話し始めた。


睡:

『「貰い泣き」駅では、睡(スイ)という女の子が、いつも一人で泣いていました。

その駅には、恋の相談事を抱えたカップルだけが来ることが出来ます。

睡はそれぞれと話をし、問題を解決してあげるのでした。

ある日、美結(みゆ)という女の子が貰い泣き駅にやってきました。

ですが、気をつけなくてはいけません!

美結ちゃんは、睡から決して「貰い泣き」をしてはいけないのです…!

睡から貰い泣きをしてしまうと、美結ちゃんは、帰りの電車に乗れなくなってしまうのでしたぁ!』


太紀:

美結(みゆ)は、お前の話を聞いて貰い泣きしちまったのか…?

だから電車に乗れずに、あの駅から出られなくなった…?


睡:

んふふ~。

美結(みゆ)ちゃんは一緒に泣いてくれたよ?

「睡(スイ)ちゃんも色々あったんだね、辛かったね」って。


太紀:

そんな…!

じゃあ、睡(スイ)が貰い泣き駅を出るためには、

「俺が手を引いて電車に乗せなきゃいけない」っていうのは嘘か?!?


睡:

話はちゃぁんと最後まで聞こうね~?

『美結(みゆ)ちゃんを貰い泣きさせることに成功した睡(スイ)は、

駅から出られる権利を得ます!

でもここからがたーいへん!

睡が貰い泣き駅を出るには、自分の大切なものを失ってでも、

睡のことを心の底から助けたいと願う男性に手を引かれ、

共に電車に乗せてもらうしかないのです』


太紀:

ああ…っそんな!

じゃあ俺が、睡(スイ)の手を引いたから…


睡:

私の代わりに貰い泣き駅に残ってくれる女の子をキープしつつ!

かつ!私のことを本気でここから出してあげたいと願う男の力…

つまり太紀(たいき)の力がないと、私は出られないわけ!

あはははは!

ヤバくない?この難易度ヤバくない??


太紀:

美結(みゆ)ごめんッ…!

俺…っなんてことを…!


睡:(キレて)

私だって美結(みゆ)ちゃんと同じ目にあったのよ!?!

前にあの駅にいた女に騙されて、

男に裏切られて、私は貰い泣き駅に囚われた!!

あのクソ女と同じことをすれば出られるってわかって、

駅に来るバカなカップルの相談を聞き続けたわ!!

女を貰い泣きさせることは、

過去に何回も成功したけど、男がなかなかうまく行かないのよ!

ちょっとやそっと「助けたい」って思った程度じゃ電車に乗れないの!!

色仕掛けしたり、同情引いたり色々やったけど、

ほんっと上手く行かなくて頭おかしくなりそうだった!!


太紀:

美結(みゆ)は…美結はどうなるんだよッ?!


睡:

だーかーらぁぁぁ。

美結(みゆ)ちゃんは、これからは私の代わりに、

貰い泣き駅でクソみたいなカップルの悩みを聞く、都市伝説の女の子になるの!

あの陰気(いんき)な貰い泣き駅で、

次のカップルが相談に来るのを

シクシク泣きながら待つしかないのぉ!

でも大丈夫っ!

美結(みゆ)ちゃんも私と同じことをすれば、また電車に乗れるってばぁ!

何十年かかるかわっかんないけどねー?


太紀:

こ、の、…このやろぉぉぉぉぉ!!!(睡の首を絞める)


睡:

ぐっ…う゛…ん゛ふふ…首、なんか絞めたって、ムだなんだ、からぁぁッッ!


太紀:

(突き飛ばされる)

…ぐはっ!


睡:

貰い泣き駅に来れるのは魂だけなの!

私も太紀(たいき)も、今は魂だけの存在!!

何されたってどうせ死なないんだよ!


太紀:

なんでだ…!なんでこんなことになったんだ?!?

なんでだああああああ!!!


睡:(急に優しくなって)

太紀(たいき)…騙すようなことして本当にごめんね?

でもね、安心して?辛いのは今だけだからね…?


太紀:

どういう、ことだ…?


睡:

んふふ。

『睡(スイ)はめでたく帰りの電車に乗ることが出来ました。

待っているのはハッピーエンドですっ!

太紀(たいき)も現実に戻ることができ、

「美結(みゆ)ちゃん」と

幸せに暮らすのでした。』


太紀:

美結(みゆ)ちゃんと、って…?!

美結の魂は貰い泣き駅に囚われちまってんじゃねーか!

現実に戻った俺が、どうやって美結と幸せに…!?!


睡:

ここでクーイズーっ!

私は貰い泣き駅に魂を囚われて

現実には空っぽの肉体だけが取り残された。

でも私は、もう自分の肉体に戻ることは出来ない。

なんでだと思う?


太紀:

ここに囚われている間に…現実では時間が過ぎて、

もう肉体が死んだからじゃないのか…?


睡:

半分当たりで半分外れ。

貰い泣き駅では時間が止まってるから、

私が囚われてから現実でどのくらい時間が経ったのかわからないけど、

私の肉体がまだ生きてる可能性は十分ある。


太紀:

え?どういうことなんだ…?


睡:

今私の肉体に入っている魂はね?

私の前に、貰い泣き駅にいた女なのぉ。


太紀:

ま、まさか…!?そんなッ!!


睡:

あの女は、私の魂が抜けた肉体に入って、

睡(スイ)として現実で生きてるのよ!!!

だから私もね?おんなじことするのぉ。


太紀:

そんな…!こんなの嘘だ…

嘘だあああああああ!!


睡:

感動のラストはこうだよ?

『貰い泣き駅の睡(スイ)は、

現実で魂が抜けた状態の美結(みゆ)ちゃんの肉体に入りました。

そして、貰い泣き駅の記憶がすっかり無くなった太紀(たいき)と、

幸せに幸せに暮らしましたとさ。

めでたし、めでたし』


太紀:

あ゛あああああああああああああ!!!


睡:

(上記と同タイミングで笑って下さい)

あははははは!!






























太紀N:

誰かに肩をたたかれて目が覚めた。

「お客さん、終点ですよ」と駅員さんに言われ、慌ててホームに降り立つ。

疲れていたのか眠ってしまったようだ。




太紀:

やっべ…!急いで帰らないと…!




太紀N:

俺は急いだ。

色々あったが、俺は元カノと寄りを戻すことにしたのだ。

浮気をされたことは許せないが、

彼女を孤独にし、追いつめてしまったのは俺だ。

それに初めて本気で人を好きになって、

8年も付き合ったのだ。

そう簡単に別れていいはずがない。



二人の想い出の貝殻で作ったネックレスを、ちゃんと渡そう。



それで、何もかもやり直すのだ。


















太紀:

ただいま…!


『 美結(みゆ) 』…!













美結?(睡):

おかえり。

太紀(たいき)。













End.