犬猫の真菌症 ~実は水虫と同じカビなんです~
皮膚糸状菌は“カビ(真菌)”の一種であり、犬猫のみならず、ウサギ・フェレット・モルモット・チンチラなどにも見られ、人にも感染を起こす人獣共通感染症として知られています。
なりやすい時期
通常は、幼い犬猫に症状が現れることが多く、放っておいても自然に治ることもあります。また、不顕性感染(菌は持っているが、症状はない)をしていて、キャリア(無症状の状態で病原菌を保有し、他の個体へ運んでしまう恐れがある)になってしまうこともあります。
また、大人になっても、皮膚状態の悪化・抵抗力減弱、他の全身性の病気(基礎疾患)による抵抗力の低下によって症状が現れることがあります。
症状
動物種によって異なる面もありますが、一般的には脱毛・鱗屑(りんせつ)・紅斑などの症状が現れます。犬の初期症状としては、円形に脱毛・鱗屑を生じ、赤く炎症を帯びることが多いようです。猫は犬とは異なり、赤く炎症を起こすことは少なく、普通の湿疹のようなこともあるので、最初は糸状菌症として扱われないこともあるかもしれません。
痒みは通常ないか、あっても軽度なことが多いです。ただし、モルモットでは二次感染から痒みが強い傾向にあります。
犬や猫などから人に感染した場合は、比較的特徴的な症状として、リング状の赤みと痒みが現れます。感染の原因は、感染動物との接触、または環境中の真菌要素(胞子など)の定着などによって起こります。
足の指などにも症状は出ますか?
四肢の指に出ることも多く、ほかにも顔・頭~頸部などにも多く見られます。身体の様々なところに感染を起こし、全身へ進行していくこともあります。
診断方法
皮膚病を起こしている部分の被毛を顕微鏡で調べることで、ある程度診断されることもあります。しかし診断を確定するには、被毛や鱗屑を使った培養検査を行う必要があります。
培養検査の場合、結果は7~10日後となりますので、それまでは獣医師の指示に従い、初期治療が行われることもあります。
完全に治りますか?
適切な治療により、特に幼若時ほど、たいていの場合は完全に良くなります。成犬で基礎疾患があり全身的に症状が広がっている場合や、治療に対しての反応が良くない場合では、完全に治らなかったり、再発を繰り返すこともあります。
治療中はできれば毛刈りをし、全身薬浴、病変部への外用薬の使用、それらと併行して内服薬を処方していきます。状態によって、補助製剤も使います。
特に大人で基礎疾患がある場合は、上記のような治療が重要といえるでしょう。
まとめ
皮膚糸状菌症は、比較的身近なものだと考えられます。幼若時に多く見られますが、治療によって大多数は良くなるので心配は少ないとも思われます。しかしながら、人獣共通という観点から考えると、きちんと完治まで治療を続け、飼い主さんにも疑わしい症状が見られれば、すぐに皮膚科へ行くことも重要です。
再発してしまったり、キャリアになってしまわないように、しっかりと治療を行うと共に、環境への対処として、日頃から十分換気をし、愛犬や愛猫が普段使用しているもの(タオル・ベット・服など)をよく叩く・こまめに洗濯する・定期的に日干しにするなど、清潔に保つことを心がけましょう。
治療が終了した後も、定期的に体を洗って皮膚・被毛のケアを実施し、健全な状態を保つようにしてあげてください。