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ogawa fumio HP

クララとお日さま

2021.03.11 21:11

カズオイシグロの新刊「クララとお日さま」読了。生きることの大切さを考えさせてくれ、最後は少し悲しい気分になる物語だ。

成長期にある子どもに特有の友情の物語として、今回はテーマが選ばれている。マーガレットアトウッドと比較するのが適当かどうか、わからないけど、あちらが「ハンドメイズテイル」の続編である新作「ザテスタメンツ」(2019年)で、ハリウッドの映画にもなりそうな劇的な展開を選んだのに対して、カズオイシグロのこの作品は、終始抑制が効いている。

今回の作品も、「私を離さないで」のように、じわーっと感情が高まってくる。そこも素晴らしい。ものすごいビターエンドではなく、青春のほろ苦い、ひとコマのような物語でもある。でも多様な解釈を許す(であろう)ところが上手だ。

お日さまというモチーフが、ソーラーパワーで動くAIの動力源という意味では現代的であり。かつそれでいて、人間型のAIが太陽を原始宗教のようにあがめる。考えてみると、その二つは乖離せずに、ひとつのものごとの表裏のような関係というのがおもしろい。