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鍼灸師としての美意識

2021.03.11 23:11

鍼灸師として長年やってきて、鍼灸師の美意識を再確認してみようと思いました。


私にとって、鍼灸における美意識とは無数の鍼をハリネズミのように打ち、物療で勝負するような刺激をしないことです。これは鍼灸師になった時からの思いです。


もちろん、そういう方法を試したことがない訳ではありませんがやっぱり品がないと思いました。 それが良いとか悪いとか言っているのではなく、同じ効果なら、患者さんに、できるだけ負担をかけないよう最小限の刺激で最大の効果を得る努力をし続けるというのが自分の中で課したルールです。

そして鍼灸師としての品格だと思っています。 もちろん、物療で勝負しなければならない時も確かにあると思います。しかし、そんな例は、かなり少なくなっていると思います。 


日本の伝統工芸品は、機能的でありつつ、形に美を追求してきたと思います。きっとアメリカ人だったら、こういう美意識にはなりません。美意識は国や地域によっても違いがあるので正解はありません。世の中で、一番、生活に密着している道具は何といっても車でしょう。老若男女、どこの国に行ってもある道具です。そして、車は単純に人やものを運んだりする道具ではなくなりました。

そんな道具である車に対する思い入れも国によって全く違いますし、お国柄が良く出る道具です。


美意識に違いはあっても良いし、どれが正解だとも思いません。 つまり答えは複数あるので、数学的ではありません。しかし、それぞれの国の特性を出して究極の姿を追求しようとしているのではないかと思います。日本は絶対に世界の風潮に流されてはならないと思っています。日本には日本独自の方法があるし、それを追求することでしか海外との差別化はできません。 


治療も同じです。他国から輸入される最新の治療法というような触れ込みにつられるのではなく、それを飲み込んで消化しなければなりません。それ以上に古来からある方法を検証し、最新のものにしていく必要があると思います。その為にも日本人としての美意識は絶対に必要です。それがあるからこそ日本人としての特性をもったものに変化させることができるのです。

真似事なんて面白くないし、直ぐに飽きるし、飽きられます。 効果を出しつつ、極力刺激を減らし、それをできるだけ短時間で行うという方法を追求していくというのは、日本人としての美意識だと思っています。それをする為には微妙で繊細な能力が必要になってきます。


簡単なことではないので日々研鑽していく必要があります。それをやり続けたものにしか与えられないものなのではないかと思います。

言葉上の美意識なんて何の役にもたちません。それは秘めたものでなければならないし、スマートなものじゃなく、言葉とは裏腹に泥臭い努力が必要なものです。