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小さな小さな映画館? 映画上映会「ヱビスキネマ」に潜入

2016.12.12 10:00

「映画は映画館で観るもの」という考えは、もうすでに古いのかもしれない。最近、映画フリークたちは、カフェやバー、はたまたビストロなどで、お酒や食事をたのしみながら映画を楽しんでいるという。

お酒を飲みながらだったり食事をしながらだったり、少人数で観る映画上映会がちょっとしたブームになってきているのだ。今回は、恵比寿にある「ビストロ ダルブル」で開催された「café de cinéma」が主宰する映画上映会「ヱビスキネマ」に潜入してきた。


「ヱビスキネマ」は、隔週水曜日に開催されている小さな小さな映画館。会場は「ビストロ ダルブル」というだけあって、その名のとおり"ビストロ"。なので、もちろん食事もOK。軽いフランス料理系のおつまみとワインを味わいながら、映画も味わえるというイキな企画なのだ。

ちなみに、とても小さなスペースなので人数も5~10名限定。かなり貸し切り感あふれるカタチで、ゆっくり映画と食事を楽しめる。

ここ数年の映画業界は、大型のシネマコンプレックス(シネコン)によるスクリーン数増加の一方で、単館系の映画作品を上映するスクリーンが少なくなりつつある。だからこそ、こういったカフェやバーなどで上映される単館系映画が、新しい映画の楽しみ方として注目されはじめているのかもしれない。

「ヱビスキネマ」では、いままでに「バンクシー・ダズ・ニューヨーク」「ビル・カニンガム&ニューヨーク」「ムーンライズ・キングダム」などの単館系映画を中心に、「ショーン・オブ・ザ・デッド」など、日本未公開の作品も上映したりしている。


café de cinéma」主宰の祖山裕史(そやま ひろふみ)さんは、「自分自身が観たい映画、観てオモシロかったと感じた映画を、みんなと共有できたらいいなと思ったんです」と、上映会をはじめたキッカケを話す。

彼は、映画の権利などをあつかう会社運営のかたわら、自らこのような上映会の企画も行っている。

「最近は、ボク自身が観たいと思える映画の上映が、とにかく少ないんですよねー」。

"日本ではウケなさそう"という映画は、当たり前ながら配給会社のバイヤーの選択肢からはハズレてしまうので、日本では上映されない世界のオモシロい映画も少なくはない。

祖山さんは、現在、この「ヱビスキネマ」のほか、渋谷は「のんべい横丁」にある立ち飲みバー 「Amulet-D and Gallery」にて隔週月曜日に開催中の「CINEMA AMULET」、刺繍家とパン教室主宰者とともに年に2回開催している「カフェ ド 糸ネマ」、さらに映画の内容に合わせた特別メニューを一緒にビストロで楽しめる「BISTRO CINEMA」なども主宰している。


「何気なくお店に入ったときに、"何か"が上映されていて、その映画が気に入ったらお酒を持ってそのままふらっと観ることができる。そんな気軽な映画の空間があったらオモシロいじゃないですか!」

なるほど、たしかに!


月に何度も映画館に行くような映画好きでないと、こうした単館系の良作品に触れる機会は少ないもの。しかし、こういった突発的な状況であれば、普通の人がそんな映画に出会う機会も増えそう。

ちなみに、参加しているお客さんの層はさまざまで年齢層の幅も広いそうだ。もちろん上映する映画にもよりけりだが、たいていは女性の方が多いとか。

意外だったのは、普段は映画をまったく観ないひとが、その上映会のテーマに興味を持って参加するということもけっこうあるという。例えば、音楽やフードはもちろん、前述の「刺繍」なんてテーマで催されることもあるからだ。

未知の映画を知る機会になるのはもちろんのこと、過去に観たコトがある映画であっても、食事やお酒と一緒に楽しむことで、また違った新しい体験になって、普通の映画館では体験できなかった、その映画の別の魅力を感じたりもできたりもする。

ちなみに取材で訪れたこの日も、満席の満員御礼だった。

映画業界の現状については、こう語る。

「ネット配信など新しいスタイルの映画視聴によって、映画の"概念"が変わってきている。業界ももっと変わっていかないといけない。そういう転換期にきていると思いますね。今の20代以下では映画に対して、憧れも認知もなくなってきている状態。映画離れはますます加速してしまっている」


現在、インターネット配信系の映画レンタルなどがある程度の盛り上がりをみせ、新海 誠監督のアニメ作品「君の名は。」が空前のヒットを成しとげたとはいえ、やはり、業界全体としての現状はそれほど思わしくはないというわけだ。

だからこそ、今後については「いろいろな場所で、いろいろな人と、上映会をつくっていきたいですね。地方などには積極的に出ていきたいと考えてます」という。すでに奈良や神戸、福岡など、地方での上映会にも関わるなど、地方都市での展開もスタートしている。

最終的には、「バンを改造して移動できるスクリーンとフードトラック、その2台構成で日本中を巡れるような"旅する映画館"……そんなキャラバンをつくりたいです」と、夢を語ってくれた。

昭和の昔、街角や公園に紙芝居屋が訪れて子供たちがそれを駄菓子を食べながら楽しむという風景を映画やマンガで見たことがあるだろう。そんなローカルでネイバーフッドな文化発信をリバイバルさせる試みでもある、映画と食のキャラバン。これが実現すれば、確かに、ちょっとおもしろいカルチャーとなるだろう。ぜひ夢をかなえてほしいが、まずは「café de cinéma」の映画上映会に行ってみてほしい。女性ファンも多いとのことだし、「ゴハンと一緒に映画でも観に行く?」そんなデートの誘い文句もイイかもしれない。