いっしょにいる時間 vol.52 ~ハルちゃんとモモちゃんがごっちんこ~
作/チームCOL
猛暑が過ぎて、
秋の風が吹き始めた頃。
今夜もグラウンドに行くと、
ハルちゃんとモモちゃんが、
いつものようにボクを
待っていてくれた。
ボクがハルちゃんの目の前に
行くと、ハルちゃんは、パッと
うれしそうにシッポをふって、
ボクのにおいをクンクン嗅いだ。
ハルちゃんとのあいさつのあとは、
地面に落としたおやつを
必死に探してるモモちゃんだ。
背中を鼻でつつくと、
モモちゃんは、ようやくボクに
気がついて、鼻をシュンッと
鳴らした。
ボクたちは、出会ってから
もう13年が経つ。
みんな歳をとって、おばあちゃん、
おじいちゃんになっちゃった。
最近は、前のように走りまわる
こともなくなって、地面のにおいを
嗅いだり、グラウンドの端にある
木の下でおしっこをしたり、
お菓子をもらったり、寝そべったり
して、のんびりと過ごしてる。
ふいに、ドンと音がした。
あっ!
ウロウロしていたモモちゃんと
ハルちゃんが、ぶつかっちゃった。
モモちゃんもハルちゃんも、
目があんまり見えないんだ。
おたがいびっくりしてふり返ると、
鼻先を近づけて、クンクン
確かめあっている。
ウィル君とボクが、グラウンドを
駆けまわっていたあの頃、
モモちゃんは、ハルちゃんに
近づくたびに、よく怒られていた。
一匹オオカミみたいに、だれも
寄せつけなかったハルちゃんが、
今ではすっかり温和になっている。
だから、こんなふたりの姿を
見てると、なんだかちょっと、
ほほえましい。
13年間、ほとんど毎日のように
顔を合わせてきたんだもんね。
ボクたちは、こうやって
会えるだけでいいんだ。
いっしょに、ぐだぐだしてるだけの、
この何気ない時間が、
ボクは大好き。
遊ばなくても、
いっしょにいるだけの、
この時間がうれしい。
でも、ウィル君がいない
グラウンドは、やっぱりさみしいな。
ずいぶん経ったのに、いまだに
ウィル君の姿を探しちゃうんだ。