スループット会計とは
スループット会計とは、製造業の伝統的な原価計算の考え方に、経営レベルの視点、全体最適の視点を加味した付加価値生産性(スループット)を指標とする管理手法を言います。
工場のお金の流れで見ると、スループットとは、製品を販売して得られるキャッシュ(売上高)から、製品を販売するために投資したキャッシュ(材料費など)を引いた額のこと。
★スループット = 売上高 − 社外へ支払った金額(材料費、外注費など)
スループットとは、言い方を変えると、材料を購入して社内で加工したり組み立てたりして加わえられた付加価値額のこと。スループット向上とは、売上高を上げること(高く売ること)と外部に支払うお金を少なくすること、そして材料購入時点から、売上げ金額を回収するまでの期間を短縮することをいいます。
そして工場の利益は、付加価値額から業務費用を差し引いた額になります。
★利益 = スループット(付加価値額) - 社内業務費用の合計
(業務費用の合計=直接人件費+間接人件費+減価償却費+輸送費など)
スループット会計においては、間接業務の費用を配賦するという考え方がありません。なぜなら、製品を作るために直接かかったお金は原材料費として認識できますが、間接業務はそうではないからです。「何をするために使った費用か」が業務費用の意味なのに、それを無理やり「何を作るために使った費用か」に置き換える(配賦)ことが自体が意味のないことだと考えられます。
スループット会計は、具体的に3つの指標を用います。
①スループット:販売を通じて入ってくるお金(入ってくるお金) =売上-材料費、外注費 「生産」ではなく、「販売」である点に注意。マーケット志向の会計です。
②在庫:販売しようとする物を購入するために使ったお金(寝ているお金) =材料、仕掛品(材料費、外注費)、完成品
③業務費用:在庫を販売するために費やすお金(でていくお金) =材料費、外注費以外の全てのコスト、製造原価の人件費、減価償却費等の製造間接費、一般管理費も含みます。
以上の3つの指標いずれかを改善するのではなく、スループットを増加させ、同時に在庫、業務費用の減少を目標としています。つまり、入ってくるお金を大きくし、寝ているお金、出て行くお金を小さくし、会社に残るお金を大きくしようというものです。部分最適でなく、全体最適を目指すための会計です。