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木守

2021.03.14 20:55

「木守」とは翌年の豊作を願って柿の実を一つ残すこと、出された茶碗との因果を尋ねし後の天下人、家康への返答や「名匠の作の残り」と。法外な価値を生む当代一の茶頭の銘を「稀代の騙り」と言わしめた。切腹から時間を遡る構成こそ特徴であって。「利休にたずねよ」(山本兼三著)。

知らぬ間に、というか単にそちらに意識が向いていなかっただけの話なのだけれども「バックキャスティング」なる語を耳にする機会が増えた。平たく申せば、完成の目標年次から逆算して計画を立てる、ということらしいのだけど、語の響きだけで画期的な成果を連想させる副作用のほうが大きくはあるまいか、と。いつも懐疑的でスマン。

丈並ぶ母と娘や桜餅、と詠んだ。十年一昔。節目か区切りか交錯するそれぞれの想い。大人数の会食ではあるまいにじっと静かに鎮魂の祈りを捧げる機会を阻むは一部の批判を避けんが為の浅知恵にしか見えんのだけど、そこを追及しても埒が明かぬ。届きし自粛の要請に向かった先。降りた駅にて一句、みちのくにたんぽぽ迎へ無人駅。公園の時計台は遺構として津波が押し寄せた時が刻まれており、堤防上にて海に手を合わせた。

地図上に駅として表示されどもそれらしき建物なく、そこにあるはバス停とまっすぐな道路。三陸鉄道の終着駅、盛駅と気仙沼駅を結ぶJR大船渡線はBRTの運行、つまりは専用道路に路線バスの車両を活用。それを鉄道と呼ぶに違和感あれど、これがどうして。時刻に寸分の狂いなく正確な上に便数とて以前より多いとか。

そもそもに一両編成の乗車定員は大型バスに大差なく。その経路や震災前の線路上とあらば土地の権利の心配ない上に踏切、鉄軌、駅舎などあらゆる面で投資少ないばかりか、復旧までの年月とて随分と節約できたのではないか。従来の廃線利用は分かった、が、元々は沿岸部を走る路線。そこに生活圏が形成されていたはずもいまや高台移転が進んだ状況を何とする。

陸前高田では専用道を外れて一般道を縦横無尽に走り抜けるはまさに水陸両用というかバスの妙味。鉄軌ではこうはいかぬ。復旧や急がねばならぬ、利用者を救わんと鉄道員が絞りし知恵の結果。過疎に悩む田舎の赤字路線などはこちらに活路を見出したほうがいいのではないか、と思わんでもなく。都市部とて新たな路線は用地買収の手間が少なき地下鉄が主流なれど多額の投資と期間を伴う訳で。

鉄道ファン垂涎の最新車両には及ばぬかもしれぬ。が、利用者本位の視点に立たばBRTなる選択肢も十分にアリではないか、と。今や税収源となりし「みなとみらい」とて元は造船所。変貌を遂げし要因は鉄道に負う面が大にして、そこが進めば。ということで、本市で進むBRTの検討。その手法やまさにバックキャスティング方式だそうで。

当時、三陸鉄道の社長が一日も早い全面復旧を果たすべく国への要望にて上京した際は作業服に深夜バスでの往復。他に負けじと改善進む長距離バス。夜の時間を生かすべく深夜バスの往復に三陸鉄道の全線制覇、大船渡線BRTと乗鉄三昧の行程に腰が悲鳴を上げており。

三鉄マンの胃袋を満たした坂本食堂のカツカレーが旨かった。

(令和3年3月15日/2629回)