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座席指定列車の今後

2021.03.15 10:00

1.はじめに

 みなさんこんにちは。**です。

 いよいよ今回が最後の研究となってしまいました。今回の研究のテーマは、「座席指定列車の今後」です。最近になって、首都圏の私鉄を中心に座席指定制の有料列車が続々と登場しています。乗車券に別途座席指定券などを購入することにより、着席が保証され、目的地までゆったりと移動できるので、主にラッシュ時などには大きなニーズが存在します。今回はそれらについて研究していきたいと思います。最後までよろしくお願いします。

2.座席指定列車とは

 座席指定列車とは、主に都市圏・朝夕ラッシュ時を中心に、乗客の着席ニーズに応える形で設定されている、座席指定券、乗車整理券、ライナー券などを乗車券に別途購入することで着席が保証される列車です。1984年6月、当時の国鉄が上野駅~大宮駅で運転を開始した列車がホームライナーの前身で、以降全国的に運転が開始されました。


西武新宿駅で発車を待つ18時15分発「拝島ライナー」

3.座席指定列車の種別

①座席定員制

 座席指定列車には、着席保障システムとして2種類存在します。まず1つ目は、「座席定員制」です。JR東日本のホームライナーなどに導入されているシステムで、日時や列車は指定されるものの、座席は指定されません。つまり、乗車する列車の座席ならどこでも(グリーン車などは除く)利用することができます。

 このシステムのメリットは、乗客が座席を自由に選択することができることです。後述する座席指定制の列車と比べ、座席を指定する必要がないので券売機ですぐに購入でき、いわゆる「飛び乗り」がしやすいという点です。また鉄道会社にとっては、個々の列車に対して座席指定システムを導入しなくてもよいので、システムを簡素化しやすいという点が挙げられます。

東京駅のライナー専用券売機  

東京駅で発車を待つ「湘南ライナー」

②座席指定制

 2つ目は、「座席指定制」です。西武鉄道や京王電鉄など関東の私鉄を中心に導入されているシステムで、こちらは日時、列車のほかに座席も指定されます。

 このシステムは、乗客側にとっては座りたい座席を事前に券売機などで決めることができるため、乗車するときの慌ただしさは比較的緩和され、座席指定制の場合に起こりうる「空席を探す」という必要がなくなります。鉄道会社にとっては、座席が明確に決められているため、不正に乗車した人への取り締まりがしやすくなります。

東武池袋駅の「TJライナー」専用券売機

京王線新宿駅に停車中の「京王ライナー」

まとめると、座席定員制は券売機での発行の煩雑さは小さい一方、座席が決められていないため乗車時の混乱度は高くなります。対して座席指定制は、座席を指定する必要があるため券売機での発行の煩雑さは高くなりますが、乗車時の混乱度は低くなります。

4.座席指定列車の特徴

①主要駅通過による遠近分離

 座席指定列車はほとんどの路線で大都市に近い主要駅を通過する「遠近分離」という運行形態となっています。長距離通勤になるほど乗客の着席ニーズが高まるので、近距離の通勤客には一般の無料列車を、長距離の通勤客には座席指定列車を利用してもらうといった「棲み分け」を行っている鉄道会社が多いです。

※駅名の左の番号は運行する鉄道会社での乗降人員の順位(JRのみ乗車人員)

②ラッシュ時でもほぼクロスシートでゆったり帰宅

 座席指定列車はほぼ共通して常時クロスシート車両、または運用時のみクロスシートになる転換機能を備えた車両が使用されていて、ラッシュ時の混雑の中でもクロスシートでゆったりと移動することができます。また、「京王ライナー」や「拝島ライナー」は、座席下にコンセントが備わっていて、1人1つ利用することができます。

5.座席指定列車の具体例

①拝島ライナー(都心~西武拝島線沿線の利用客)

拝島ライナーは、2018年3月10日に西武新宿駅→拝島駅間で運転を開始したライナー列車です。新宿から拝島線沿線に住む利用客の着席ニーズに応えるため、都心を夕方~夜に出発する列車が平日・土休日の18時~22時台に毎時1本設定されています。西武新宿駅~拝島駅間の平日の平均所要時間は47分で、同時間帯のJRの青梅ライナーの新宿駅~拝島駅の所要時間の43分とほぼ同じ所要時間となっています。乗車券に別途一律300円(大人料金)の指定券を購入することで乗車することが出来ます。

②京王ライナー(都心~橋本・八王子方面の利用客)

京王ライナーは、2018年2月22日に新宿駅→橋本駅・京王八王子駅間で運転を開始したライナー列車です。京王線内の長距離利用の乗客の着席ニーズに応えるため、平日は新宿駅20時~24時台発、土休日は新宿駅17時~21時台発でそれぞれ1日10本ずつ設定されています。乗車券に別途一律400円(大人・小児同額)の座席指定券を購入することで乗車することが出来ます。

6.座席指定列車のもたらす効果

 座席指定列車を運転することは、鉄道会社側にとっては、人口減少社会で定期券収入の減少が見込まれる中で、「ラッシュ時の着席ニーズ」を活かして新たな収入源を得たいという意図があると考えられます。さらに、座って通勤できるということをアピールすれば、沿線の価値が上昇するというメリットも生じます。

 また乗客側にとっては、ラッシュ時の混雑から解放され快適に通勤することが出来る手段を得ることになり、座席指定列車は、鉄道会社側、乗客側に双方にメリットがあると考えられます。

7.座席指定列車の利用客を増やすためには

①座席「定員」制か、座席「指定」制か

 3.で説明した座席「定員」制と、座席「指定」制のうち、今後利用客の煩わしさが少なくなっていく乗車制度は、座席「指定」制であると私は考えます。

 理由としては、事前に座席を指定しているので、自分の希望しない席に座ることがないという点が挙げられます。乗車する前に座席が指定されているので、乗車してから座席を探すという必要がない上、心理的にも比較的落ち着いて乗車することが出来ると思われます。

 また、「券売機発行が煩雑である」という問題も、近年は解決されつつあります。なぜならば、「ネット予約・購入によるチケットレス乗車」が広まってきているからです。

 「ネット予約・購入によるチケットレス乗車」とは、各鉄道会社のライナー専用サイトなどを会員登録すると利用でき、インターネットを介して自分のパソコンやスマートフォンなどから乗車したいライナーの列車名や座席番号などを指定して予約・購入し、紙のきっぷなどを券売機で発行する必要もなくそのままライナーに乗車することが出来るというシステムです。スマートフォンなどの普及により導入が進み、現在では東武鉄道や京王電鉄など大手私鉄の多くで利用可能なシステムです。

 このシステムを利用することで、券売機で発行しなければいけない煩わしさがなくなり、いわゆる「飛び乗り」もしやすくなるメリットがあります。実際、多くのライナーはチケットレス乗車を利用しても発車時刻のおよそ15分前までは購入できます。

②平日朝時間帯に座席指定列車を設定する

 首都圏の大手私鉄で運転されているライナーは、以前は夕方・夜を中心に設定されていましたが、ここ3年の内に、東武鉄道と京急電鉄が平日朝時間帯に新たにライナーの運行を始めました。


 夕ラッシュ時間帯(平日17時~21時ごろ)よりも朝ラッシュ時間帯(平日7時~9時ごろ)のほうが短時間に乗客が集中しやすく、特に都心から離れている地域に住んでいる人の着席ニーズは夕ラッシュ時に匹敵するほど高まると考えられます。そのため、朝ラッシュ時にライナーなど座席指定列車を設定することは、現在運行していない路線においても、潜在的需要を掘り起こすことにつながり、一定の増収効果が見込めるのではないか、と私は考えます。

③土休日に座席指定列車を設定する

(1)土休日の夕方に都心の主要駅から郊外へ

 東武鉄道や京王電鉄では、「TJライナー」や「京王ライナー」を土休日の夕方~夜時間帯においても運行しています。都心周辺でショッピングや行楽などを楽しんだ乗客向けに、新宿や池袋を出発する夕方~夜時間帯の最速達種別として設定されています。

この土休日のライナー設定についてですが、私はこの時間帯には一定のニーズがあるのではないかと考えます。ある土曜日の夕方の東武池袋駅では、ライナー専用ホームである5番線に60人ほどが列をなして改札を受けていました。週末の夕方は比較的混み合う時間帯なので、始発駅からでも着席することは難しい場合があり、ゆったりと帰りたい乗客が一定数いると思われるため、現在運行していない鉄道会社においても、現時点である程度利用客がいるのであれば週末の夕方時間帯においての座席指定列車の運行を積極的に検討すべきであると思います。

新宿三丁目駅を発車する「S-TRAIN」


京王線新宿駅の京王ライナーの案内表示

(2)土休日の朝に都心の主要駅から都心郊外の観光地へ

 西武鉄道や東急電鉄は、土休日に横浜市の元町・中華街駅と観光スポットが数多くある埼玉県・秩父方面を結ぶ座席指定列車「S-TRAIN」を運転しています。このように、都心の主要駅と都心郊外の観光地を結ぶ列車として座席指定列車は大いに活用できると思います。ロング/クロスシート転換機能を備えた列車を使用すれば、座席指定列車にならないときは無料列車として使用できるため、鉄道会社側はフレキシブルな運用を組むことができ、また特急型車両を使用するよりも運用コストが抑えられるので、専用車両を使用するよりも運転しやすいです。主要都市からある程度離れた地域に観光スポットを持つ路線であれば、一定の需要は見込めると思います。

8.今後座席指定列車を運転すべき路線・時間帯とは

 7.の考察を踏まえて、現状実現可能でもっとも座席指定列車を運転すべき路線は、土休日の京王電鉄京王線・高尾線の新宿駅~高尾山口駅間であると考えます。高尾山は東京都心から近く、年間を通して多くの観光客が訪れる観光スポットで、2007年にはミシュラン・グリーンガイドで日本の山としては富士山に続いて三ツ星に認定されました。このことがきっかけとなって近年では外国人観光客も訪れるようになり、以前は減少していた高尾山口駅の利用客数が2007年度から増加傾向となっています。このため乗客の着席ニーズはこれまでよりも高まっていると考えられ、休日の京王線に新宿と高尾山口を結ぶ座席指定列車を運行するメリットは大きいのではないか、と考えます。

 京王電鉄は現在、座席指定列車である「京王ライナー」を運行しているため、車両も京王ライナーと同じ5000系を使用でき、また座席指定に関わるシステムもすでに導入しているため、比較的システム改修もスムーズにできるので、現状の段階でも容易に実現可能であると思います。

(参考)高尾山口駅の年間乗車人数+降車人数の推移

 高尾山がミシュラン・グリーンガイド三ツ星となった2007年度から、乗車人数・降車人数ともに増加傾向である。

9.結論


10.おわりに

 みなさん、今回の研究はいかがでしたか。私が執筆した研究の中では、まとまったほうなのではないかと感じています。今後も座席指定列車が増えるかどうか注視していきたいと思います。

 さて、私の5年間にわたる研究執筆も今回が最後となりました。同学年の研究班員や先輩方をはじめ色々な方に研究の書き方やアドバイスをいただきました。今後の人生に活かせることをたくさん学ぶことができました。ありがとうございました。後輩の皆さんも、頑張って今後の研究執筆に取り組んでください。応援しています。

11.参考資料

・JR東日本 https://www.jreast.co.jp/

・東武鉄道 http://www.tobu.co.jp/

・京王電鉄 https://www.keio.co.jp/

・西武鉄道 https://www.seiburailway.jp/

・京急電鉄 http://www.keikyu.co.jp/

・南海電鉄 http://www.nankai.co.jp/

・東京都の統計 http://www.toukei.metro.tokyo.jp/index.htm


おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました

      研究の情報は発表当時のものです。予めご了承ください。