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書くこと。生きること。:Hiromi's Blog

読書メモ⑤

2021.03.15 18:21

吉村昭『星への旅』(新潮文庫・1974)は表題作を含む昭和30年代から40年代初頭にかけて発表された短編6作品が収められている。

吉村は生家のあった東京・日暮里で空襲に遭い、18歳で終戦を迎えた直後、肺を患い左胸の肋骨5本を切除する大手術を受けた。戦禍の日常に“死”が身近であった吉村少年は大病の果て生死の淵にあった。

怠惰で安易な感傷を許さない、冷静で大胆で抑制的で精緻な目で筆で紡がれる物語の底知れない奥深さに、私は惹かれる。生も死も人間の行為も一切は徒労なのだろうか。もしかしたら、と思う時間を過ごすようになって暫く経つ気がする。

私もそろそろ、星への旅支度に取り掛かるべきなのか。




【期間:2021/03/01~2021/03/15】

①『侍』遠藤周作(新潮文庫・1986)

②『新装版 海と毒薬』遠藤周作(講談社文庫・2011)

③『幕末軍艦「回天」始末』吉村昭(文春文庫・1993)

④『桜田門外ノ変(上)』吉村昭(新潮文庫・1995)

⑤『桜田門外ノ変(下)』吉村昭(新潮文庫・1995)

⑥『星への旅』吉村昭(新潮文庫・1974)

⑦『日の名残り』カズオ・イシグロ 訳・土屋政雄(ハヤカワ epi 文庫・2001)

⑧『わたしたちが孤児だったころ』カズオ・イシグロ 訳・入江真佐子(ハヤカワ epi 文庫・

2006)

⑨『巣鴨プリズン-教誨師花山信勝と死刑戦犯の記録』小林弘忠(中公文庫・2007)

⑩『新装版 苦海浄土 わが水俣病』石牟礼道子(講談社文庫・2004)



①―読み応え。

②―己の良心への疑念。

⑦―私の五年前であったら、この小説の何も読めなかった気がする。

⑩ー“当事者性”の向こう側にあるもの。