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【紹介】動物好きでも、そうでなくてもおすすめの舞台

2021.03.18 03:05

商業舞台で、いま最も見てほしい作品『戦火の馬』を観たのでその感想を。

この作品を観るきっかけとなったのは、私が好きなアクション女優さんがロンドン留学中に観てとても感動し、それが映画館で観られるので是非見てほしいとSNSで紹介していたからです。

 

映画館で舞台を観るスタイルは、ここ数年の間に認知していましたし、有名なところではゲキ×シネで上映されてる劇団☆新感線の「五右衛門ロック」とか「髑髏城の七人」になりますでしょうか。去年「滝沢歌舞伎ZERO2020 The Movie」などの作品も観られたので、ライブビューイングと並んでかなり定着したスタイルだと個人的に思います。

今回観た「戦火の馬」はナショナルシアターライブという英国ナショナル・シアターが世界で観られるべき傑作舞台を各映画館で上映する画期的なプロジェクトで、2009年に第一弾が上映され、日本では2014年に初上陸したものだとか。恥ずかしながら、その存在(NTL)を露ほども知りませんでした。田舎にいたからと言う言い訳もありますが、それだけ情報に対するアンテナが低かったのだと思います。ここ最近のスタイルかと思っていた映画館での配信スタイルが、十年以上前には既に始まっていた。。。素直にすごいなと思いました。

 

そんなわけで、初ナチョナルシアターライブを楽しんだ作品が「戦火の馬」となりました。

 

私がこの作品のチケットを予約したのは、上映日にあたる3日前。座席を指定するときは、私を含め両手で数えられるくらいの座席しか埋まっていませんでした。内心、有名な作品、人気な作品なのかもしれないけれど、このご時世と、海外の舞台ということもあって、あまり観劇される人はいないのかな・・・なんてこっそり思ったほどのガラガラっぷり。しかし、その3日後の上映日に会場に足を運んで、驚きました。


キャパ的には100人くらいの席数、それが最前列まで満席。一瞬、エヴァの会場かと勘違いしたと焦ったほどです。上映日までは3日間くらいしか間がなかったのに、その間に満席になったという事です。口コミで広がったのかどうかはわかりませんが、ここでかなり作品に対する期待値が上がりました。

 

そして上映開始。

 

ライブビューイングのように開演直前の客席がザワザワしたところから始まり、自分も劇場に居るかのように感じさせてくれます。ステージは円形劇場のような、扇状に客席が並び、舞台のセットは、ノートの端を破り取ったような細長いバックスクリーンがあるだけ。一人の軍人がスケッチをしているところから始まりました。

軍人の描くイラストがバックスクリーンにアニメーションでリンクする形でどんどん描かれ、そこへ鳥が飛んできたり、主人公である馬が登場します。


ちなみに、この舞台の大きな目玉でもある、動物たちは全てパペット。


当然、操作する人の姿も丸見えです。でも、そんなものが気にならないくらい、感情豊かに、リアルに表現されるパペットは本物の生き物だと感じさせてくれます。私は舞台に生きている馬がいたと感じましたし、個人的にはたまに登場するガチョウが最高に可愛くて大好きです。

この先、もし映画館でこの作品を鑑賞する人がいましたら、本当にぜひぜひ、観てほしいです。ちょっと遠いですが名古屋で4月上旬まで上映されているそうです。(東京はもう上映が終わってしまいました)あとネタバレ大丈夫な人はウィキペディアのあらすじ見てもいいと思いますが、個人的にはまっさらな何も情報がない状態で観てほしいです。充分楽しめます。

 

主人公である馬は、まだ仔馬の姿。自由に野山を駆け回る姿にほっこりしたと思ったら、競売にかけられるため人間に捉えられます。ここからしばらくの間、棒をうまく活用した演出が続きます。捉えるための追い込みした時の囲い(網とか箱のような感じ)だったり、ただの棒として使ったり、競売のシーンでは、競売場の会場と客席を区切った囲いになったり、厩のシーンでも柵のようになったりと、本当にうまく活用されていました。とても好きな演出です。

 

競売に来て農耕馬を買う予定だった男テッドは、酔った勢いと不仲の兄アーサーへ見栄を張るためだけに大金を出して仔馬をゲットします。しかし、仔馬は農耕馬ではない品種で、借金を返すためのお金を使ったと奥さんにブチギレられます。そして、テッドの息子アルバートに仔馬の世話を押し付け、(おそらく動物が大好きな)アルバートも売れるように大きくなるまでの間、きちんと世話することを母親に約束して場を収めました。

 

ちなみにこの奥さんもいい味を出しているキャラクターで、とても好きです。

 

人間を警戒する仔馬はここでジョーイと名付けられ、アルバートの献身的な世話のおかげで徐々に心を交わしていく様子が見られます。そして、仔馬から一気に成長した馬に切り替わる演出が格好良くて、鳥肌が立ちました!音楽とマッチして最高です。

 

あと、舞台上でアコーディオンなどの楽器で生演奏があったり、オープニングから物語の展開を歌い上げる歌い手がいたり(当然めちゃくちゃ歌がうまい)と、個人的に今後やりたいと思っていた演出のオンパレードだったのもテンションが上がりました。生演奏いい!

そして、アルバートの父親テッドがまた兄に見栄を張って、ある賭けをします。

元々、狩猟馬(厳密には農耕馬とサラブレッドのハーフ)であるジョーイに、農耕馬のように鋤(すき)を引かせ、畑を耕せられるかの賭けをしたのです。しかもジョーイの面倒をみているアルバートに黙って勝手に。まじとんでもない父親だなと思いました。アルバートはジョーイを手放さないために、鋤を引くために必要なハーネスを嫌がるジョーイに、根気よく方法を教えます。賭けの結果は舞台、ないしあらすじを読んでのお楽しみということでここでは書きませんが、この後、ジョーイとアルバートは離れ離れになります。

 

ジョーイは狩猟馬にも関わらず、騎馬として戦場へ。そこで馬のライバル?になるトップソーンとも出会います。トップソーンは騎馬として育てられたこともあってか、見た目も存在感もジョーイと全く異なり、脚の作りもしなやかで細く作られて、ジョーイは木曽馬のようなどっしりとした脚の作りになっているので、細かいところもちゃんとこだわって作られていることに感動します。

 

馬同士の友情、様々な人との出会いと別れ、離れているけれどジョーイとアルバートの友情が感じられる出来事など、後半はボロボロ泣きました。

 

戦場のシーンもとっても緊張感があり、ハラハラしましたし、馬のパペットに騎乗できることも驚きでした。本当に臨場感もすごいです。戦車もたぶん明るいところで観たらシンプルすぎる、下手したらチープな作りなのに、音響と照明をうまく活用して本物のような圧迫感を出していました。そして戦場に登場し、疲弊して命を落とす他の馬たちに胸を痛めます。馬が疲れているってのがちゃんと伝わるのもすごいですし、最初からなんですが、馬を操る技師の方々は、ちゃんとパペットに呼吸もさせているのがすごいです。「生きてる」って感じますし、走りまくって息を切らせて疲れた様子も、めちゃくちゃ伝わります。パペットの鳴き声は操作する技師さんが実際に声真似して出しているのにも驚きでした。ちゃんとその動物の鳴き声や息遣いに聞こえるのです!すごい技術!

幕間にはちゃんと休憩が設けられているのですが、二幕が始まる前に、原作者やプロデューサーへの方のインタビューと舞台裏が見られるメイキングシーンもあり、作品がどのようにして作られたのかより感じられて楽しいです。個人的にはメイキングの照明演出についてのコメントがすごく勉強になりました。最初の牧場のシーンは暖かな自然光を再現するため、高い位置からの照明にして、戦場のシーンは緊迫感を出すために、低い位置から照らしたり、という工夫があることなど。メイキング観るのは元々好きなので、そういうのも観られたのは嬉しかったです。

 

スピルバーグ監督が感動して映画化したそうなので、作業用にレンタルして先日鑑賞したのですが、少しだけストーリーが舞台とはことなるものの、また違った面白さがありました。でも、やはりすごい技術が詰まっていますので、舞台を観てほしいです。様々な賞を受賞した理由が分かります。

 

パペットを制作、操作しているハンドスプリング・パペット・カンパニーさんの存在も知れて良かったです。日本にもお見えになってトークイベントみたいなこともされていたようです。TEDにも出演されていたので、そこでジョーイも観られます。

 

あ、最後にとても大事なこと!NTLはちゃんと日本語字幕が出ます!!!

私、字幕はないと思って、全然英語できないのに「何とかリスニング頑張ってあとは雰囲気で物語を読み取っていかなきゃ!」って思ってたので、字幕出た瞬間、おおお!!ありがてーー!!ってなりました笑。

 

3時間弱の舞台なのですが、時間があっという間に過ぎ、体感1時間半ぐらいでした。ぜひぜひたくさんの方に観て、楽しんでもらいたいなと思える作品でした。DVDとかあれば買いたい。

 

今後も機会があれば積極的にNTLの上映には足を運びたいなと思います。緊急事態宣言が明けたら、友達と行きたいですね。もう何か月も誰とも会ってお出かけしてなくて、人見知り発揮してそう笑