「有給休暇」について
「有給休暇」とは,一定期間勤務を継続した従業員に付与される休暇のことで、休暇を取得しても賃金が減額されない休暇のことです。2019年に労働基準法が改正され、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務となりました。
Q. 退職時に残った有休をまとめて消化したいのですが,できますか?
A. 有給休暇は従業員の権利ですから,まとめて消化することができます。
従業員が有給休暇の申請をした場合,とく別な場合を除いて,会社はこれを拒否できません。ただし,実際に有給休暇の扱いを受けたかどうかは,給与明細を確認しなければわかりません。退職後に申請されていないと言われないように、相手が受け取った記録が残るメールでの申請や,申請用紙のコピーをとっておくことをお勧めします。
Q. 会社に有給休暇を申請したら,有給休暇規定はないと拒否されました。どうしたらいいですか?
A. 有給休暇は,法律に定められた条件を満たした人に必ず与えられる権利です。
したがって,会社が有給休暇規定を定めているかいないかによって,有給休暇のあるなしがきまるものではありません。
ご自身で交渉しても,会社側が有給休暇はないと譲らない場合,弁護士等に相談してみましょう。
Q. 入社してまだ1年経っていないのですが,有給休暇を申請することはできるのでしょうか。
A. 有給休暇は,①雇い入れの日から6か月経過していること,②その期間の全労働日の8割以上出勤したこと,の2つの要件を満たした従業員に付与されますので,有給休暇を申請できます。
入社した初年度には,10労働日の有給が付与されます。会社は就業規則によってこれより多い有休を設定することも可能です。
なお,最初に有給休暇が付与された日から1年を経過した以後は、勤続期間が長くなるほどに付与される有給の日数が増えていきます。
Q. 私はパートで働いていますが,正社員の従業員のように有給休暇を申請できますか?
A. 先程も述べた通り、有給休暇が付与される2つの要件を満たしていれば,パートなどの労働契約の形式を問わず、法律の要件を満たせば付与されますので,有給休暇を申請できます。
週の所定労働日数が4日以下で、かつ週の所定労働時間が30時間未満の従業員の場合は,働く日数に応じて、与えられる有給休暇の日数が異なります。
例えば,1日4時間の勤務時間で週3日働いている場合は、半年後に7日間の有給休暇が付与されます。付与される有給休暇は,勤続年数が長くなれば増えます。
Q. 有休を1日も申請しないでいたら,会社から「来月までに5日,有給休暇を取得してください」と言われました。自分が申請したいタイミングではないのですが,従わないといけないのでしょうか。
A. 従業員が有休を取得していない場合には、会社は有給の時季を指定ができます。
ただし,会社が有休の時季指定を行う場合には、適宜、個別面談を行うなどして、従業員の意向を確認しなければいけません。
したがって,一方的に会社から有給休暇の時季を指定された場合には,時季変更の交渉をすることができます。
なお,既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している従業員に対しては、使用者による時季指定をすることはできません。
Q. 転職先が決まったので会社を退職したいのですが,有給休暇を全て取得すると,転職先の入社日までに退職できません。有給休暇の買取を会社にお願いすることはできますか?
A. 有休休暇の買取は,原則として禁止されています。
ただし,例外として,①労働基準法で定められた有給休暇の日数を超えて付与された有給休暇を買取ること,②有給休暇の付与から2年が経過し時効で消滅した有給休暇を買取ること,③退職日に未消化のまま残っている有給休暇を買取ること,はできると考えられています。
注意すべきは,いずれの場合も、会社が有給休暇を買い上げなければならないわけではないということです。従業員の要求に対して,会社は応じる必要がありません。自分で交渉することが難しい場合は,弁護士等に相談してみましょう。