鬼子母神物語から(令和3年3月法話)
お釈迦様と鬼子母神とのやり取りを見ていた仏弟子達は、
「何故、鬼子母神が悪行を行ったのか」とお尋ねした。
お釈迦様は次のように説明をされました。
「鬼子母神と、侵害を受けた王舎城の人々の間には、前世に作った悪業の因縁があった。
決して偶然の悪行ではない。
その過去世の因縁とは、次のようなものだ。
昔々、王舎城に牛飼いの妻がいた。妻は結婚後まもなく懐妊した。
その頃、世間の模範となるような学者が王舎城で大設会を催した。
その大設会に参加しようと500人の人々が楽器を奏しながら出かけた。
するとその途上、懐妊している牛飼いの妻が牛乳の瓶を持って来るのに出会った。
『ご家内、私らとここで踊って楽しもうではありませんか』と言われ、
懐妊している事も忘れ、無我夢中で踊った。
すると、臨月に近い体を急激に運動させたため、ついに堕胎してしまった。
驚いた500人の人達は、残酷にも苦しんでいる妻をその場に置いて去ってしまった。
しばらくして、果物売りが通ったので、牛乳とマンゴー500個と交換した。
そこへ覚者が威風堂々とやって来た。
妻は、心に敬いの心を生じて、覚者の足を礼拝し、500個のマンゴーを供養した。
そして妻は『マンゴー500個を供養した功徳で、来世にはこの王舎城に生まれて城下に生まれた子女を取り、殺して、食う』
という恐ろしい、悪い願を掛けたのである。
この路上に於いて恐るべき悪行の願望を起こした牛飼いの妻が、鬼子母神の前身である。
お前達は、私が常に説いている
『黒業には悪い報いがあり、雑業には雑な報いがあり、白業には善い報いがある』と説いているのは、この事である。
と、お釈迦様はねんごろに諭された。
☆ ☆
「因果応報」と言われています。「善因善果、悪因悪果」と言われます。
今すぐ結果が出る場合もあれば、遠い将来に結果が出る場合もあります。
また、自分が意識している場合もあれば、自分が意識していない場合もあります。
いずれにしても、因に関係する「縁」に出会えば結果が出てきます。
それは、凡人の私達にはコントロールすることが難しいものです。
人間でない夜叉といわれる鬼子母神でも、どうすることも出来ません。
ただ、仏様と出会い、仏様の教えを聞き、信じ、仏様の教えを正しく実行することで、救われることが出来るのです。
その仏様とのご縁を授かっている私達は幸せ者でございます。
後は正しく実行あるのみです。