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NPO法人YouToo

パートナーの呼び方問題

2021.03.18 13:05

 パートナーをどう呼ぶか。よい言葉はないのか。「パートナーの呼び方問題」は、ジェンダー意識のある人の間では何度も繰り返されてきた議論だけれど、未だ答えはない。夫を、ご主人、旦那さまなど、妻を奥さん、嫁、女房、家内、カミさんなどと言ったりする、その呼び方のことだ。「わたしの妻」という言い方はあっても「あなたの妻」とは言えないとすると、日本語にはフラットな呼称がない。だって、結婚した夫と妻の間には、ご主人と奥様なんていう主従関係はないはずなのだから。芥川賞作家の川上未映子さんは、この言葉を聞くだけで心の底から気が滅入る、と書いていた。その言葉が「主人」。パートナーの呼び方だ。

 友達が自分の夫を「主人」と呼んだり、相手の伴侶のことを「ご主人は」と、当然のように言ったりする場面に出くわすことがとても多い。どういう意味で「主人」なんていう言葉を使っているのだろう、と、言っている友達に問い質したくなる。確かに、本当に気が滅入る。

 一緒に学び、少し前まで出張して全国を飛び回って仕事をしていたような友達が、結婚したとたんに「主人が・・」と言い始めた時には本当にげんなりした。対等な立場であるはずの夫のことを「主人」と呼びたくなるのはなぜだろう。夫に庇護されることを幸せだと信じているのかもしれない。

 休みの日などに出かけると、「ご主人は大丈夫かしら」と気にしてくれる人がいる。または、「主人が家にいるから出かけられない」という人がいる。出かけるにも「主人」にお伺いを立てなければならない妻が多い。

 そして、妻に対しては「奥様」だ。男の人はみんな「ご主人様」であり、「奥様」や「奥様の手料理」とかが家に待っているらしい。「奥様」と呼ばれる女性は喜んでいると思うのだろうか。電話に出ると、いきなり「奥様ですか?」と聞くセールスマンがいる。「誰々の奥様ですか?」ならまだしも、「奥様ですか?」では返答のしようもなく、「違います」と答えるしかない。

 どうして気が滅入るかというと、なかなか突っ込めないからだ。「主人が」と言っている友達や、「奥様ですか?」と電話してくる相手に、それは違うだろう、というメッセージを正確に伝えるのは今のところ、とても難しい。

 そろそろ家父長制家族ごっこもいい加減にしてはどうだろう。ただ、やはりこれは、妻も夫も自立していないことの現れなのだろうと思う。それこそ本当に、気が滅入るのだ・・

 余談だけれど、先日、最近注目されている経済思想家で『人新世の「資本論」』の著者の斎藤幸平さんが、この本で新書大賞2021を受賞された。その授賞式の講演会の中で、彼がパートナーという言葉を自然に使うことに気づいた。やはり知性はこんなところにも表れると納得し、また、そのことにほっとしたのだった。