餞別
刎頸の交わりの域に達せずも互いに知る仲。自慢にならぬ自慢の一つに大事な話といわれてそれが市の施策絡みだった試しなく。まいど副議長殿が訪ねて参られた。人の機微に鈍感であってはその役職は務まらぬ。この三月末に退職を迎える局長の皆様に何かしらの記念を、と。
苦節四十年、退職とあらば酒宴に謝辞の一つでも申し上げるべきも格好の標的になりかねず。部屋に飾られし品々を餞別代りに持ち帰り結構、但し、退職もしくは異動の職員に限る、と留守役に残してあるも正式な辞令なくば動かぬが役人。「いづれ」と聞き及んでいたはずが、既に半分以上が流出するは此れ如何に。陳列棚に狙われし壺など私の在任中ならぬ歴代の議長殿が譲り受けたものにて。油断も隙もあったものになく。
閑話休題。それを下回れば安全かと問わば、それを保証するものではない。とすれば、その対価としてはあまりにも大き過ぎる代償。過ぎたるは猶及ばざるが如し。一向に減らぬ人手に批判向くも笛吹けど踊らぬは意識の乖離。見えぬ恐怖に報道を信じて耐え忍ぶ日々もそこまでには陥らぬ状況が繰り返されては誇張が過ぎたのではないかと疑念抱くは当然。あの有名な寓話に学ぶ教訓。とするとやはり最後はホンモノが。来ぬことを願うばかり。
民度か遺伝子か救われし幸運もあれば不運にも救えぬ命もあったやもしれぬ。が、少なくとも惨劇と呼ぶに及ばぬ日々を過ごしておるのだから及第点位は、と思うは甘いと。受入を阻まれし事例は許されざるもの。入院の制限に命を優先したなどとは詭弁に過ぎぬ、命の優先ならぬ命の選別だ、と憤慨見せるはあの政党。
市とて何もそれでいいとは思っておらず、救える命は救わねばならぬ。されど、一つしかなきパンに万人の飢えが凌げるか。介護施設とて希望叶えんと実現するに倍の保険料が必要とあらば果たして。そこを伏せたままに片方だけ騒ぎ立てるは詐欺師に劣らぬ卑怯な手口ではあるまいか。理想はあくまでも理想であって現実は妥協の産物。そこに目を瞑っては心に響かぬ。
気にくわぬ際は修正案を提出する権利を有しており。賛同いただけぬか、と会派に打診があったと聞いた。修正を求めるは例の五億円。縮減を図った上で残額を他の用途に、とのことらしく。庁内にて検討を重ねた結論と出された案を否決するは酷なれど、過ちて改めざるはこれ過ちなりの格言もあり。確かに慎重さを欠いた面は否めぬにせよ、改むるに解は一つならず、「動議」なる物々しい手段に訴えて「我が要求を呑まぬは不誠実」などと迫るはさすがに。
私ならば彼よりも上手く出来るというのは得てして妄想というか過信であること少なくなく。どれほど誇らしげに胸を張ってみてもそこに賛同を得れぬは代替に値せずの評価ということではあるまいか。無為無策などと糾弾してみても無策か否かは価値観の違いにて遺恨と確執だけが残りかねず。
政敵である以上、追い落とす為に目を惹かんとする演出は否定せぬも他人の行為をあげつらうは容易。むしろ共に一歩高みに上がる議論を目指してみてはいかがか、と思うのだけれども質問権すら付与されぬ番台の上の戯言にて御容赦あれ。
(令和3年3月20日/2630回)