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ブラインド・テイスティングを科学的アプローチで考える その⑩「閃き:神様からのギフト」

2021.03.20 11:40

皆さんはブラインドで閃きを感じたことがありますか?私はブラインドの大切な場面で閃きを感じたことが何度かあります。そして閃きを感じたとき、驚くほど高い確率で正答することができることを知っています。2018年1月に行われた田崎真也ワインサロンのブラインド大会の決勝で、イタリア シチリアのテッレ・ネレの造るネレッロ・マスカレーゼを生産者まで当てました。また2019年9月の同大会では出題されたモンテファルコ・サグランティーノを産地、品種(サグランティーノ)、ヴィンテージまで当てたことがあります。まぐれと思われるかもしれませんが、星の数ほどあるワインの中で、これらのワインが脳内に浮かび上がって来るスピリチュアルな体験でした。これは私がすごいと言っているのではなく、人間の持つ直観力をわかって頂けたらと思います。皆さんも突然アイデアが湧いたこと、考え続けても分からなかった答えを突然導けたことなど様々なご経験があると思います。日常の中で様々な場面で閃きを感じるのと同様にブラインドでも同じことが起きるのです。

閃きとは何か?

閃きは過去に蓄積してきた経験や学習のデータベースから無意識かつ高速で引き出された答えであると言われています。つまり練習を繰り返していくことによって、ワインの記憶、知識、判断の経験を積み重ねていけば直観力は向上していきます。但し、より多く閃くためにはコツがあるのです。

まずお伝えしたいことは、前回も強調しましたが決めつけや無意識の先入観といった「思い込み/バイアス」を排除することが何より必要です。思い込んでいる状態ですと閃きません。また「昨日飲んだワインと似ている気がする」など、閃いた気持ちになっているけど実は思い込んでいることもあります。思い込みを排除して自分自身と向き合うことが何より大切です。

「何となく」に気付く

閃きを感じるためには、「何となく」浮かび上がる自分の感覚に気付くことが必要です。イスラエル・テルアビブ大学の研究(※1)では、直感は高い確率で正しい可能性があることを示しました。この実験では、コンピュータ画面に数え切れないくらいの速いスピードで2つの数字が表示されます(例えば、1と2など)。そして、被験者に最終的にどちらの数字が多く表示されたかを当ててもらいました。被験者は目で数字を数えることができないため、答えるときはそのほとんどが直観(勘)なのですが、それでも6回の試験で的中率は65%となり、24回試験を行うと90%の的中率となったのです。つまり、6回経験するよりも、24回経験したほうがより正しい選択が行えており、これが意味することは直観力は「何となく」を繰り返すことによって精度が高まる可能性があるということです。

脳の余裕と心の安定

更に自分自身の閃きを感じやすくするためには「脳の余裕と心の安定」が必要です。これは例えばクンクン・メソッドのようにやり方を事前に決めておき、感じることに集中する、感じたことを基に考えるといった手順を事前に決めておくだけで、「今やるべきこと」が明確になり余計なことを考える必要がなくなります。すると脳に余裕が生まれるため、直観がより働きやすくなるのです。皆さんは閃きを感じたのに無視してしまったことはないでしょうか?何となく自分の直観が信じられなかったり、また大会など緊張する場面で心にゆとりがなく、直観が生かせないこともあると思います。「脳の余裕と心の安定」を保ち、自分自身を知り自分を信じることが何より大切です。

ブラインドは自分自身との対話

さて10回連載してきましたがまとめたいと思います。

これまでお伝えしてきた通り、感覚を最大限に生かし、右脳でワインを感じ取り、左脳で分析し結論に導くテイスティングを日々繰り返すことが何よりも大切です。大事なことは、ブラインドはワインを通して自分自身と対話していることだと気付くことです。直観で決めればいいとは考えないで下さい。ひたむきに鍛錬を続けていくことで、神様からのギフト、「閃き」を感じることが出来るのです。ご興味持たれた方は私と一緒にスクールなどで切磋琢磨していきましょう!

ブラインド・テイスティングについての記事は一旦終了にしますが、感想やご意見など頂けましたら嬉しいです。今回は考え方や方法論に特化しましたが、どうやって当てるのか?例えば特徴的な品種、特徴的な産地個性、醸造方法との関連性というHOW?についてはまだ書いていません。また今後タイミングを見ながら書いていこうと思います。

【Reference】
※1  “The impact of the mode of thought in complex decisions: intuitive decisions are better” Marius Usher, et.al., Front. Psychol., Vol.15, 2011
経済界ウェブ「優れた経営者に学ぶ意思決定の秘密:「直感」と「分析的思考」はどちらが正しい?」https://net.keizaikai.co.jp/47009

2019年9月に行われた第16回田崎真也ワインサロンのブラインドテイスティング大会の写真です。サグランティーノは良かったのですが、結果は競い負け2位でした。1位は現在も絶好調の近藤さんでした!

前回:その⑨「最大の敵は思い込み(バイアス)」

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