サイレン・コール
デイビッド・バックランドがパフォーマンス・ポエトリーの力を激賞する。
翻訳:浅野 綾子
グローバル社会の共同体に日常の習得行動[経験や学習によって形づくられる行動]を変えるように頼むこと。それも、とてもささやかなこの星に、80 億の人々が暮らす持続可能な方法を、記録に残るような速さで考え出してくれるように頼むこと。これは、極めて難しい任務です。解決策はおそらく複合的で、反対の嵐と、感情的な軋轢に満ちたものになるでしょう。この任務は芸術家のテリトリーです。一つの詩、一つの演技、一曲の音楽なら、入り乱れた何兆億もの糸を、意味のある形に織り込むことができます。人間の生息地[である地球]が、人間活動というその独自のウイルスへの対応に追われストレスに耐えるのを目にする時。産業と消費のとどまるところを知らない要求に妥協した、不適切な政治的対応を記録に残す時。詩をもってすれば一行で、人の心の奥底に切りこめるのです。
2020 年 5 月、国際的非営利団体の「ケープフェアウェル(Cape Farewell)」は、「サイレン・ポエッツ(Siren Poets)」(シャグフタ・K・イクバル:Shagufta K Iqbal、ピーター・ビアーダー:Peter Bearder、リブ・トーク:Liv Torc、クリス・ホワイト:Chris White)に、グローバル社会の共同体へのメッセージを広めてくれるよう依頼しました。サイレン・ポエッツは書き言葉にとどまらず、朗読や音楽、電子ドラム、また人と力を合わせることで、彼らの考えを大きな声にふくらませました。行動をシフトさせる仕事という、非現実的ではないにしても難しい任務に引き上げられたサイレン・ポエッツは、その複雑さを抱きしめ、その探求をひとりの人間がかかえる問題という形に落としこみ、映画をつくり、9 月にはドーセットにあるケープフェアウェルの本部「ウォーターシェッド(Watershed)」 でライブを行いました。サイレン・ポエッツは、新型コロナウイルスによる様々な制約に対応して、この朗読のお披露目をバーチャルで行うことを課題とし、各メンバーの声はソーシャルメディアを通して彼ら自身のコミュニティへと届けられました。
シャグフタ・K・イクバルは叔母とオンラインでワークショップをしていました。食べものを伝統的な調理法で料理し、私たちがいかに食べるかということは、社会生活を表現する共有のものであることを強く発信するワークショップでしたが、悲しいことに新型コロナウイルスのロックダウンにより制約されました。その後イクバルはミュージシャンのピート・エルディングと組み、詩的洞察を詠みあげた、一度聴いたら頭から離れないひとつの詩を朗読しました。
それでも大地と海を食べる
これまでしてきたことの味がする
けれどもひとつの歌がある
かすかにぶーんとはじまる歌
つたわる小さな波のさざめき
まるで人から人へ伝わる波のおこり
聞いて
あなたの心が求めている これより良きことをなさねば
聞いて
あなたの心が求めている これよりやさしき心でまもらねば
– シャグフタ・K・イクバル、「ナールへ捧げるオード(An Ode to An Nahl’)」
ー 中略 ー
デイビッド・バックランド (David Buckland) は、ケープフェアウェルの創設者、国際部門ディレクター。www.capefarewell.com
サイレン・ポエッツの最終公演オンラインはこちらで capefarewell.com/sirenpoets.html。