やはり危ない「濃いめの味が好き」! 食塩「小さじ半分」で死亡リスクが12%アップ
「健康のためには、塩分は控えないと……」と思いつつも、おかしやジャンクフードはやめられない。そんな人はたくさんいます。そう、塩気の強い食べ物は後を引きます。でも、その食習慣も、いよいよ考え直すときが来たかもしれません。
今月初旬、米国の医学雑誌『Journal of the American College of Cardiology』(オンライン版)に掲載された最新研究で、わずかな量の塩分が増えただけでも早死にする危険性が跳ね上がる可能性が示されました。
塩分摂取量と死亡率の関係がわかった
そもそも、「なぜ塩分過多が好ましくないか?」と言えば、「高血圧の原因になる」ということは周知の通りです。でも、塩の摂りすぎと死亡リスクとの直接的な関係を調べた研究は、今まであまりありませんでした。
米ハーバード大学公衆衛生学部(ボストン)疫学教授のNancy Cook氏らによる研究は、1987~1990年と1990~1995年に実施された「高血圧予防研究」を対象としました。 これらの研究では、被験者を「塩分を制限する群」と「自由に摂取する群」に無作為に割りつけ、尿検査によって塩分の摂取量を調べて分析。追跡期間中に、塩分制限群3000人強のうち241人、非制限群3000人弱のうち272人が死亡した。
その結果、1日のナトリウム摂取量が2300mg(食塩で小さじ1杯=約6g)未満の人は、3600mg(食塩で小さじ1.5杯=約9g)の人に比べて、死亡リスクが25%も低いことが明らかにされました。
<濃いめの味が好き>で早期死亡リスクが12%アップ
さらに、たとえば普段は1日小さじ1.5杯(約9g)の食塩を摂取している場合、小さじ半分未満(約2.5g=ナトリウム換算で1000mg)増えるだけで、早期死亡リスクが12%上昇することが判明。それ以降も、ナトリウム摂取量が1000mg増えるごとに、リスクは12%ずつ上がり続けるという。
今回の研究は因果関係を裏づけるものではありませんが、「塩分摂取量と死亡率の直接的な関連を明らかにした」とCook氏は言う。さらに、この研究では高血圧や心疾患のない健康な男女を対象としたため、これらの因子による潜在的なバイアスが少ないと指摘しています。
日本人の1日のナトリウム摂取量(塩分量)
ちなみに米国心臓協会(AHA)は現在、1日のナトリウム摂取量を2400mg=食塩で小さじ1杯(約6g)以下に抑えることを推奨している。心臓のためにはさらに少なく、1日1500mg=食塩で小さじ3分の2(約3.8g)以下が理想だとしている。
その一方で、とかく塩分摂取量が多いと言われる日本の現状はどうか? 厚生労働省の2014年の発表では、18歳以上の男性は1日当たり食塩8.0g未満、18歳以上の女性は1日当たり7.0g未満という目標量が定められている。
ところが、2012年時点での日本の成人1日あたりの食塩平均摂取量は、男性で11.3g、女性で9.6g。国の目標量からはほど遠い。海外基準でみれば、相当の<高塩分食>国家です。
ちなみに「死亡リスクを12%上げる」と指摘された「食塩小さじ半分未満」は、濃いめの味が好きな日本人にとってはわずかな量です。みそや醤油なら大さじ1、たらこひと腹、中くらいの梅干し1個でオーバーします。
カリウムを摂って塩分の排泄を心がける
塩分を過剰に制限することの是非は、まだ議論の余地がありますが、少なくとも大多数の日本人には「長生きしたければ減塩せよ」が正解でしょう。
とはいえ、食べたものの塩分量を計算するのは難しい。現状で健康な人なら、まず1日の目標量を頭に入れて、少しずつ意識することから始めたい。
今はコンビニ弁当や加工食品に成分表示があります。ナトリウム量(mg)で表示されているときは1000で割り、だいたい2.5倍すれば食塩相当量(g)になると覚えておきましょう。
また、外食はほとんどが塩分多めと考えてください。一般的な目安だが、天丼やカツ丼などの丼物で4〜5g、定食類やラーメン(スープ含む)で5~6g。ヘルシーに思えるにぎり寿司も4〜5gほどで意外に多く、1日の摂取制限量の半分以上を占めてしまう。 このことを頭に入れ、可能ならば自炊を心がけてください。そして「出汁を濃くとる」「柑橘類やスパイスを使う」などの工夫で、塩分を減らすことも可能です。
そして、余計な塩分の排泄を助ける「カリウム」を十分に摂取することも効果的です。カリウムが多く含まれるのはホウレンソウなどの青菜や豆製品、海藻など。「濃い味が好き」という人は、これらを意識して食べるといいでしょう。