あの季節がやってきた! Vol.55 ~薄ピンク色の花びら~
作/チームCOL
今年も、ピンクのきれいな
花びらが舞っている。
ママとみーちゃんといっしょに
今年もまた桜が見れた。
春の陽だまりのなか、
公園のベンチで一休み。
「はっちゃん、きれいだね~」
ママが、満開の桜を見上げながら
うれしそうに笑ってる。
みーちゃんは、探してきた花びらを
いつものように、ボクの耳の上に
のせた。
「相変わらず、かわいいよ~。
はっちゃん、こっち見て~」
写真をパシャパシャ撮られる。
ボクも、毎年のことだから
ちゃんと分かってるんだ。
ボクは、花びらが落ちないように、
そーっとみーちゃんとママを見た。
「おー! はちじゃないか~
元気にしてたかー」
ふいに、なつかしい声がした。
ハルじいの声だ。
昼間に会うなんてめずらしい。
うしろから、ハルちゃんがフンフン、
フンフンって顔を近づけてきたから、
ボクはうれしくなって、
シッポをかすかにふった。
ほんとうは、もっとハルちゃんの
まわりをクンクンして、
飛びはねたいくらいなのに、
体が思うようにいかないんだ。
「はち、最近具合が悪くて。
ごはんがあんまり食べられなく
なっちゃったんですよ」
ママがハルじいに、
近況報告をしてる。
「そーかそーか。はちも、もう
歳だもんなぁ。ガタもくるわな。
俺といっしょか!」
ハルじいは、ガハガハ笑うと、
しきりにボクの頭をなでた。
ハルじいとハルちゃんを
見送りついでに、みんなで
いっしょに桜の小道を歩いた。
この道を歩いてると、思い出す。
夜のお散歩の帰り、
ウィル君やモモちゃんとも、
ときどき背中をぶつけ合いながら、
くっついて並んで帰ったなぁ。
そんなことを思い出しながら、
ヨタヨタ歩きのハルちゃんと
ボクは、あのころみたいに、
ときどきぶつかり合いながら、
ゆっくりゆっくり並んで歩いた。
薄ピンク色の花びらが、
花吹雪のように舞って、
ハルちゃんの頭のうえにのった。
花びらが耳飾りみたいで、
やけにかわいく見える。
そっか。みーちゃんが何度も
ボクの耳の上に花びらをのせて
たけど、こういうことだったんだ。
ママとみーちゃんには、
いつもこんなふうに
見えてたんだね。