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Mika Nakano Official Blog

Clair de Lune (月の光)

2016.11.13 11:00

夜中に目が覚めた。 

なんとなく、 

このままベッドに横たわっているのは、 

ふさわしくない気がした。 


南向きで三階まで全面窓のリビングへ向かい、

ガラス越しに夜空を見上げる。 


満月にほど近い月が、 

初冬の空高く浮かんでいた。 


白く、 

明るく、 

美しい光を放つ月が、 

闇の中に浮かぶ様は 

どうしてこうもロマンチックなのだろう。 


目を落とすと、 

あらゆるものがうすぼんやりと見えている。 


樹齢300年はあろうと思われる庭の山桜。 

大人ふたりが手をつないでも届かないほど 

太い幹を持つその大木の影が、 

薄明るく照らされている地面に落ちている。 


まるで、 

計算し尽くされた舞台照明か、 

映画のセットのようだ。

完璧すぎる。 


ドビュッシーの“月の光”が聴きたくなった。

iPhoneのマイミュージックのアプリを開き、

Clair de luneと検索する。 


本当は何枚もあるレコードアルバムから 

気分に合ったものを選んで、 

優雅にプレイヤーに置き、 

静かにそっと針を落として、 

“空白の音”も含めて耳を傾ける、 

−−−それがいいに決まっている。 


けれど、今や時代はデジタル。 

人間も瞬時に対応可能になってきたようだ。 

私たちの優秀な神経システムそのものが、 

そのように訓練されてきているに違いない。 

iPhoneの音楽とわたしは、 すぐに同化した。 


人生の中で、 

本当に美しいものを見て感動する瞬間は 

いったい何回あるのだろう? 


クリスピーなグランドキャニオンの朝日、 

緩やかでスローなマウイの夕陽、 

朝もやの中の猛々しいピレネーの山々、 

アマルフィの甘美で吸込まれそうな紺碧の海、 

ヨーロッパの巡礼路、カミーノ・デ・サンティ

アーゴのオ・セブレイロの満天の星空・・・。


けれども今、 

私が感動しているのは、 

自宅の窓越しに眺める月と月光、 

それに照らされた自然のままの庭だ。 


だとすると、と、ふと思う。 


もしかしたら、 

私の人生はそう間違っていないかもしれない。 


今日も人生の扉を開いて出会ってくださり、ありがとうございます。 

美しい風景、美しい音。外にも内にも、それがあればサイコーだね。