小倉
「世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」。あるから迷うのであって、いっそ桜などなければ、の意と教わりしはずも、桜にかけしは異性、いわゆる「隠喩」を含むとの解釈を見かけた。目下、平安の好色男、業平にモテる秘訣、否、歌の真髄を学ばんと。皇室に見るまでもなく和歌とあらば上流階級の嗜みにて下々は俳句。性に合いしは伊勢物語よりも麻雀放浪記か。
干天の慈雨、農作物には恵みの雨。雨男などと卑下することもあるまいに。片やおらがセンセイ、ゴルフへの出陣の際はいつも快晴、そりゃ既に御隠居の身にて日を選ばぬ。というのがカラクリ。在任と好調の因果やいかに。本市のスポーツが絶好調、言わずもがなのフロンターレはリーグ優勝のみならず、栄冠を独占。男子バスケのブレイブサンダースは前年の雪辱を果たして天皇杯を制覇。女子バレーのレッドロケッツこそあと一息、そして、今日の主役はこちら。
「屋根」とは言い得て妙、いかに技量有した鞍上も馬の細やかな気性までは。また、そのへんが妙味なのだけれどもこちらは情なき自転車に身一つ。競馬、競艇以上に人としての泥臭さが左右するが魅力。逃げかまくりか、役目果たしたかの如く馬群に沈む先頭に代わって番手の好位から抜け出してその期待に応えんとゴールを駆け抜けた。いや、そこに友情というか人間ドラマがあってすごくいいレースだった。
本市におけるGI開催は五十五年ぶり、折角の誘致に来年度以降も、と期待高まるもバンクの改修に数年を要する。とすれば尚更に死守したい栄冠。「地元」の選手が制するなんぞはまさに在任の議長の「運」と申しても。いや、当人の実力です。おめでとう、郡司浩平選手。
全国の競輪開催市の議長で構成される全国競輪議長会の資格を有すれど独占は嫉妬を生みかねず、いや、それ以上にレースに夢中で仕事にならん。譲った、というよりも「譲らされた」との表現が適切か。役職は副議長殿に任せており。その仕組みや売上の定率を払戻に充当して残ったテラ銭での運営。
本市においても大雑把に申せば二百億円の車券売上に対して払戻金が一百五十億円、つまりは五十億円が元手にてそこから必要分を除いた余剰を一般会計に還元いただいており、直近の額や八億三千万円。戦後の開設から今日までの一般会計への繰出金は一千億円をゆうに超える。穀潰しが大半を占める中にあって、数少ない優等生の一人なのだけれどもその割には社会の害悪が如く視線が注がれるは何とも不憫。
ミッドナイト競輪などと画面向こうで車券の購入するが好業績の一翼を担うと聞くもあの臨場感こそが醍醐味であって、麦酒箱の上に立つ予想屋の口上など誰かの演説よりは。売店など既得権益、新規参入を促さぬからかけそば一杯の味が変わらぬ。新陳代謝を促すことで好循環を生めるはずなどと過去に迫ってもいたが、あれはあれで一つの文化としてアリではないかとも。
そこには確かに品位を損ねる面もあるやもしれぬ、されど、そこに生ずる喜怒哀楽こそ人の証であって、テレビゲームなどに興じるよりも。未成年は御法度にて。
(令和3年3月25日/2631回)