無電化地域の人々へ電力を。スタートアップ4社の多様なビジネスモデル。
<目次>
- 東大発、アフリカスタートアップがJICAから3億円の資金調達
- アフリカの無電化地域への電力供給問題に取り組むスタートアップ4社の多様なビジネスモデル
- 途上国ビジネス=アナログ ではない。
以上の内容についてご紹介させていただければと思います。
さて、、、
昨日、途上国開発の周辺では少し目新しいニュースが飛び込んできました。
1.東大発、アフリカスタートアップがJICAから3億円の資金調達
アフリカの無電化地域を主戦場としているサービスWASSHA、これを展開しているDigital Grid社が、国際協力機構JICAから3億円の資金調達を実施したといいます。
アフリカの発展途上国でキオスク店舗をネットワークすることにより、無電化地域に電力を届けるサービス「WASSHA」を展開する Digital Grid は20日、JICA(国際協力機構)からシリーズBラウンドで3億円を調達したことを発表した。Digital Grid はこれまでにシリーズAラウンドで、東京大学エッジキャピタル(UTEC)、日本政策投資銀行、イノベーティブベンチャーファンド(NECグループとSMBCグループによる共同運用)、電源開発から総額8億円を調達している。既存株主の追加出資と今回の JICA からの3億円をあわせ、シリーズBラウンドでの調達総額は4億円となり、創業当初からの累積調達総額は12億円となる。
東大初のスタートアップとして、またアフリカにおいて無電化地域への電力供給という課題に取り組む企業としても注目を浴びてきた?(少なくとも途上国に関わる人にとって。)同社が、このような形で資金調達を実施したことが嬉しいです。
これまでもJICAのBOPビジネスのための協力準備調査スキームで資金調達している企業は多くありましたが、そのほとんどが所謂大企業であり、中小企業には若干難しいのかという感覚に陥っていました。そんな中で、今回のように技術的な特異性を持つとはいえスタートアップが採択されたこと、しかも3億円の比較的界隈では大型な調達、は多くのBOPビジネス事業者にとって学ぶことが多い事例なりうるかも知れないと思いました。。
*調べてみたら直近でユーグレナもこのスキームで資金提供されていたみたいですが、規定では最大5000万ということで、もしかしたらDG社の資金調達は別スキームなのかもしれません。
2. アフリカの無電化地域への電力供給問題に取り組むスタートアップ4社の多様なビジネスモデル
The Bridgeの記事にもあるように、DG社のビジネスモデルはキオスクの展開が鍵を握っています。とはいっても、なかなかイメージし難い部分があるかと思うので、簡単に解説したいと思います。
また、未電化地域の人々の電力供給という課題に取り組んでいるスタートアップをいくつか同様にピックアップしてみました。それぞれが独自のビジネスモデルをもち、課題解決を通して実現していくものも多様で非常に面白いです。
Digital Grid
今回の投稿の主役であるDigital Gridです。東京大学の阿部力也教授が研究している電力制御技術であるデジタルグリッドの実用化を目指して立ち上げられたスタートアップ。活動地域は主にタンザニアを中心としています。こちらのビジネスモデルは一言でいえば、電力の小売販売です。
Digital Grid は、村々のキオスクにソーラーパネルや充電バッテリを設置し、LED ランタン30基、ラジオ、タブレットなどを無償でレンタル供与。店舗はこれら生活家電を村の住人に貸し出し、日々充電に来てもらうことで課金する。店舗のオーナーがスマートフォンを操作してモバイル決済することで充電ボックスからランタン、ラジオ、タブレットなどに通電されるようになっており、Digital Grid の店舗からの売上回収もモバイルで完結してしまう。電力売上の16%が店に入る収入で、1店舗あたりの月平均利益は、日本円換算で2万円程度だという。
Cited from "The Bridge"
購買、貸出、決済など一連のプロセスを全てモバイルで行うことで、大規模な消費者情報とその動向に関するデータを取得することができる。単に、電力機器のレンタルだけではなく、それによって得うるデータを活用して消費者マーケティングなどを行える。
M-KOPA Solar
おそらく、この電力供給領域で最も有名なスタートアップがこのM-KOPA Solarであると思う。デジタルグリッドと同様に、未電化地域の人々への電力供給に取り組む同社のビジネスモデルは、割賦販売です。
割賦払いはモバイル技術の進歩と相まって、アフリカ農村部に住み、非常に不安定な収入層に対して効果的であったといえます。
下の写真のようなソーラーパネル、ラジオ、ライト、充電器などがついた自社製品を頭金30ドル程度で販売し、消費者は半年から2年程度をかけて分割払いしていく。また、この返済経過のデータを活用し、次の自社製品(冷蔵庫やテレビなど)を同様に割賦販売することで、これらの資産を得た貧困層の人々は信用取引のための担保を所有できるようになる。
この点において、M-KOPA Solarは電力供給と同時に、消費者のフィナンシャルインクルージョンに貢献しており、実は金融的なサービスの提供が本命であったりする。
M-KOPAについては、非常に先進的な例なので別の投稿で詳細にお伝えします。
Nuru Energy
途上国における未電化地域への電力供給問題、この裏側にあるのはKerosene、いわゆる灯油の使用です。瓶などに入れた灯油、そこに火をともしてライト替わりに使います。
これが環境的にも健康的にも、決して無害なものとは言えず大きな問題となっている現実があります。
Nuru EnergyはM-KOPAのような自力発電可能なクリーンテクノロジーを活用した製品を使い、フランチャイズモデルのビジネスを行っています。
同社のフィールドスタッフが村落の選定を行い、そこでMicro-Entreprenuerを募ります。彼彼女らに対して、製品を提供し、その地域で独立した社会企業家として同社の製品による問題解決に取り組んでもらいます。
Nuru Energyの創業者であるSameer Hajeeと以前スカイプでお話しさせていただいた時、彼が言っていてなるほどと思ったのは、
同社のようなプロダクトは単に電力を届けるのでなく、個人の社会経済的な意味でのエンパワーメントにつながり,彼らのその後の長い人生に対して大きなインパクトを持つ。
プロダクトがそのような変化を起こすのは言わば当たり前として、更に重要なのは我々のビジネスのプロセス自体がどのように社会的変化を起こせるかである。
毎度思いますが、途上国から学ぶことというのは本当に多い。
Angaza
最後にAngazaを紹介します。シリコンバレー初、アフリカ行きスタートアップということで、今回紹介した上記の3社と比較しても更にテクノロジーを前面に置いたビジネスをしています。
同社は実はこれまで見てきたようなBtoCのサービスではなく、製造会社とDistributorと言われる事業者を結び、それぞれに対して技術提供するtoBビジネスを行っている。
具体的にはアフリカで一般的な支払い方法であるPay-As-You-Go(PAYG)を実装するのに必要な技術を製造会社に対してライセンスする。更に、未電化地域での電力ビジネスを行いたい事業者に対しては、ソーラーパネル搭載のライトなどの製品と共にEnergy Hubというクラウド上で管理できる販管ツールを主に提供し、事業者の電力販売をサポートする。
最初に解説したデジタルグリッドと同様で、Angazaはクラウドから事業者および消費者のデータを取得することができ、これを活用した販売のサポートを行えることが強みであるといえる。
3. 途上国ビジネス=アナログ ではない
実は今回の投稿で伝えたいことの一つに、
途上国ビジネス=アナログビジネスではない
という思いがある。
もちろんあらゆる分野に当てはまることではないが、現在注目され、また今後発展を遂げていく途上国ビジネスというのは、未開の地、最後のフロンティア、といった文脈で語られる不動産やインフラ、消費財マーケットの話では収まってない。
今、本当の意味でのアフリカや途上国の最先端は、テクノロジーにある。これは日本やほかの先進諸国と比較しても、決して劣るものではないのではないか、と私個人は強く思っている。
テクノロジーを交えた各分野(特に金融と医療領域)について、固定的な価値観を見直し、新たな視座をもって動向を見つめていくべきではないかと思う。