【戦国時代展】特集⑦戦国ハイセンス!兜を毛虫デザインにしたホントの理由
戦国時代や江戸時代につくられた甲冑には、今見ると、とんでもなく奇抜なデザインがありますが・・・
この甲冑もなかなか!
秋田市指定有形文化財 黒塗紺糸縅具足 天文5年(1536)10月
秋田市立佐竹史料館蔵
※後期(1月2日~1月29日)展示
佐竹義重所用と伝わるこの甲冑。
黒漆塗紺糸素懸威五枚胴具足とも呼ばれることもあります。
古物の名前って長いですよね。
それは、名前がそのまま説明になっているからです。分解してみましょう。
【黒漆(くろうるし)】・・・そのまま。素材を黒漆で塗っていることを表しています。
【紺糸(こんいと)】・・・紺の糸で
【素懸威(すがけおどし)】・・・威(おどし)とは、甲冑を構成している革や鉄の板を、糸や革などの緒を穴に通して連結させ(「おどし」は「緒通し」からきているとも言われるそうです)、上下に結びあわせること。素懸威は、その間隔が密集せず広いタイプを指します。
秋田市指定有形文化財 黒塗紺糸縅具足(部分) 天文5年(1536)10月
秋田市立佐竹史料館蔵
※後期(1月2日~1月29日)展示
【五枚胴(ごまいどう)】・・・胴の部分が五つのパーツになっています。
前1パーツ、後ろ1パーツ、左脇1パーツ + 右脇は2パーツになっていて、着るときは、この右脇を結んで留めます。
「週刊ビジュアル戦国王」第1号に掲載されている伊達政宗所用の甲冑もこのタイプです。
【具足(ぐそく)】・・・甲冑。
黒い漆で塗って、紺の糸で素懸タイプに威した、胴が五枚パーツに分かれているパターンの甲冑ということですね(?)
何故結び目は右脇なのでしょう?
詳しくは、配信番組「週刊ほろよい戦国王」第5回 ~え、生甲冑トーク!?~(略して生中)
で、日本甲冑武具研究保存会の鈴木さんが詳しく教えてくれています。
しかし!この名前は、ほとんど胴部分のことしか説明していません!
やっぱり、一番気になるのは、頭の部分のわっさーしているところではないでしょうか。
秋田市指定有形文化財 黒塗紺糸縅具足(部分) 天文5年(1536)10月
秋田市立佐竹史料館蔵
※後期(1月2日~1月29日)展示
まず、もふもふしてそうな棒がついてますね。横からみると少しカーブしています。
これが前立(まえだて)です。
伊達政宗でいうと、三日月の部分ですね!
このもふもふ、何を表してるかって、
そう、毛虫です。
何を思って毛虫にするのか。
毛虫のリスペクトポイント・・・
それは、前にしか進まないこと!!
戦国時代の甲冑には、けっこう虫をモチーフにしたデザインが多いのですが、虫は後退しない(というイメージ)だったため、好まれたそうです。
それと、進みながら食べ、食べながら進むあたりも。
「葉を食う」→「刃を喰う」で魔除けの意味もあったとか。
敵を屠りながら前進し、退かない!という決意を表明したのですね。
毛虫で。
さらに、佐竹氏は
新羅三郎義光を祖とする常陸源氏嫡流の一族!
ということで、かなり由緒のあるお家です。
武田信玄から同盟の打診があったときは、どちらが義光の流れを汲む源氏の嫡流かで争ったとか。
そして、源氏の末裔であることが、この毛虫にも込められているそうです。
源氏・・・げんじ・・・げじげじ!
かと思いきや、
古い発音で、「源氏」を「けむし」と発音することがあったようで、そこからの洒落だとされます。
この毛虫、いろいろな意味や思いが込められていそうですね。
この兜をさらに盛り上げているのが、横にふぁさっとしている鳥毛ではないでしょうか。
まさに、ハタキ。
このハタキ(筆者仮称)は、兜の横についている飾りなので、脇立(わきだて)と呼ばれるパーツになります。
有名なところでは、真田幸村や本田忠勝の鹿の角も脇立です。
佐竹義重が脇立にチョイスしたのは、ハタキでした。
敵を一掃してやるという意気込みでしょうか。(おそらく違います)
兜鉢の裏には「吉久作 天文五年(1536)十月吉日」という銘がきられています。
この甲冑を所用したとされる佐竹義重は、常陸(今の茨城県を中心とした地域)を統一し、北の伊達や、南の北条と死闘を繰り広げた人物。
「鬼義重」や「坂東太郎」などの異名を持つ闘将です。
歴史の深い佐竹氏に生まれ、知恵と勇猛さを併せ持った佐竹義重については、
「週刊ビジュアル戦国王 第16号」に掲載されています。
そして、重厚でハイセンスな《黒塗紺糸縅具足》の実物は、「戦国時代展」で見ることができます!
戦国時代展
【東京会場】
2016年11月23日(水・祝)~2017年1月29日(日)
東京都江戸東京博物館 1階特別展示室
〒130-0015 東京都墨田区横網1-4-1
URL:http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/
開館時間:午前9時30分~午後5時30分
(土曜日は午後7時30分まで ※入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日。ただし1月2日、9日、16日は開館。
年末年始(12月26日(月)~1月1日(日)
問合せ:江戸東京博物館 TEL:03-3626-9974(代表)
【京都会場】
2017年2月5日(土)~4月16日(日)
京都府京都文化博物館 4階・3階特別展示室
〒604-8183 京都市中京区三条高倉
開館時間:午前10~午後6時
金曜日は午後7時30分まで(入館はそれぞれ30分前まで)
休館日:毎週月曜日(3月20日は開館)、3月21日
問合せ:京都文化博物館 TEL:075-222-0888(代表)
【山形会場】
2017年4月29日(土・祝)~6月18日(日)
米沢市上杉博物館
〒992-0052 山形県米沢市丸の内1-2-1
URL:http://www.bunpaku.or.jp/http://www.denkoku-no-mori.yonezawa.yamagata.jp/
開館時間:午前9時~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:5月24日(水)
問合せ:米沢市上杉博物館 TEL:0238-26-8001 (代表)