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おやすみ、リリィ。【0:2】

2021.03.28 12:09
女性2、会話劇

りお=理央

わかな=若菜




りお:この前死のうと思ってさ、大量に睡眠薬飲んだの

わかな:へえー?

りお:でも死ねなくてさあ

わかな:ああね、なかなか死ねないもんよね

りお:胃洗浄とかされてめちゃくちゃ気持ち悪かったし、お医者さんにもめちゃくちゃ怒られた……

わかな:そりゃそうだろうねえ

りお:親にも泣かれるし大変だった

わかな:親からしたらまあ、基本的には子どもは大事だもんなあ

りお:生きるのしんどい

わかな:しんどいねえ

りお:……この手の話、出会ったときからずっとしてない?

わかな:あー、してるかもね?

りお:わたしら知り合ってから何年よ

わかな:えーっと……ざっくり10年?

りお:え、もう10年になんの?早くない?

わかな:早い。時間の流れ早い。こわっ

りお:そりゃあバイト先の新人が、"そのとき自分、まだ産まれてませんでした〜"とか言うわけだわ……

わかな:ああ……それさ、言う側だったときは何も思わなかったけど、言われる側になるとなんか、きっついよね

りお:きっついよ、中身なんにも変わってないのに身体だけ歳取ってんの

わかな:うわ、おそろし

りお:10年も継続してこんな陰鬱な話してるのも、まあどうかとは思う

わかな:えー、でもこういう話出来る相手、めちゃくちゃ貴重だと思う

りお:それは、まあ、ある

わかな:みんなちゃんと生きてて偉過ぎるなって思うし、自分の駄目さに悲しくなるよね

りお:なるなる

わかな:でもその、自分は駄目だーって話をするとさあ、周りはなんかこう、優しくしてくれるじゃん?

りお:うん?

わかな:そんなことないよー!みたいな

りお:ああ、よく言われるやつだ

わかな:でも別にそういうのは求めてないっていうか

りお:はいはい

わかな:いや、なんていうかさ、自分が駄目なことも解ってるけど、自分が駄目じゃないこともある程度解ってるつもりなんよ

りお:あー、まあこう言っちゃなんだけどさ、もっと救いようもなく駄目でしかなかったら、たぶんもっと潔く死んでるよね

わかな:ほんとそれー

りお:ある程度他人から肯定されて、社会的な生活も出来て、表向きはたぶん一般的な人間に見えるだろうに、ひとりで勝手に打ちのめされてる感

わかな:そーれー!だからなんかこう、慰めて欲しいわけじゃないんよ、自分って駄目だなーあははーっていう独り言くらいの感覚なの

りお:わかるわかる

わかな:この前薬がぶ飲みしたのもだし、刃物で自分を切るのとかもだけど、そういうの、自傷行為って呼ぶじゃん?

りお:あー、自分を大事にしろーって怒られるやつだ

わかな:そうなの怒られるの!でも違うんよ、自分を大事にしてるからこそするのであって、決して自分を大事にしてないわけじゃないんよ

りお:圧がすごいね

わかな:だって自分のこと心底どうでも良くなったら、セルフネグレクト極めて餓死すると思うんよね

りお:あー、わかる、余力ないと自分の世話すら出来んなるよね

わかな:そうそう、でも生きる為に心の負担を減らす為に、自傷行為で発散してるわけじゃん

りお:わかるわかる

わかな:別に周りに気に掛けて欲しくてやるってわけでもないしね

りお:まあ、そういう人も一定数居るだろうけどね。ファッションリスカっていうやつ?

わかな:そうそう、ああいうのって感染するし、良くない。咎められる立場でもないけどさ

りお:ミュンヒハウゼン症候群とかでもそうだけど、人間って結局、人間に相手してもらえないと生きていられないんだろうなあ

わかな:代理の方がタチ悪くない?

りお:まあそれは、そう。他人巻き込んじゃうのはねー

わかな:そう考えると、自分で自分の世話してるわたしら、偉くない?

りお:偉いかもだけど、方法は良くないね

わかな:あはははは、それな

りお:あ、そういえばさ、最近どうなの?

わかな:ん?なにが?

りお:恋人

わかな:あー!あー、えっとねー、相変わらず?

りお:ダメじゃん

わかな:えー……

りお:相変わらず、DVまがいのことされてるってことでしょ?

わかな:まあ、うん、はい……

りお:もうほんと、早く別れなよ〜

わかな:返す言葉もございません……

りお:今までも何回も言ってるし、今さら聞かないんだろうけどさ〜

わかな:うう……

りお:絶対もっといい人居るよ?ていうか、そんな脅しみたいなことしてくるやつの方が少数派だよ。たぶん

わかな:でもなあ、なんかこうさあ、まだめちゃくちゃ好きなんだよ……

りお:それ言われると、もうなにも言い返せないんだけど

わかな:顔が良いと全部許せるって本当なんだなって、思う

りお:思うな思うな、別れてしまえ

わかな:他人事だと思って……

りお:他人事だし

わかな:ごもっとも〜

りお:そもそもわたしはわかなの恋人のこと、最初っから気に入ってないからね

わかな:え、そうなん?

りお:そらそうよ。ぽっと出でわたしの親友盗りやがってって思ってるもん

わかな:なにそれ、可愛いウケる

りお:ウケんな!で、その上タチの悪い相手とか、わたしの気持ちの行き場がなくない?

わかな:ほへー、可愛いな!

りお:うるっさいわ!あ、この話他の人にしたらさあ

わかな:うん?

りお:じゃあ自分がそのわかなって子と付き合えば?って言われたわ

わかな:……付き合うの?

りお:いや付き合わん、そういうのじゃない

わかな:ほお?

りお:感覚的にはこう、保護者

わかな:保護対象だった

りお:だから余計に心配してんのよ、はよ別れなさい

わかな:他人事だと思って〜

りお:だから他人事だもーん

わかな:ていうか、りおはどうなんよ

りお:ん?

わかな:恋愛とか、そういう

りお:あー、わたしはしばらくいいや。もっぱら趣味でやってるつまみ細工で忙しい

わかな:そんなおしゃれな趣味持ってたっけ?

りお:最近始めた。楽しいよ?

わかな:へえ〜

りお:あ、ジュースなくなった。取ってくる

わかな:はいはーい

0:間

りお:今日もいちごミルクが美味しい

わかな:え、わたしいちごミルク苦手

りお:えー?なんで?

わかな:あれはいちごっていうか、香料。香料の味がする

りお:なるほどそこは相容れないわ、わたしはその香料を飲んでるから

わかな:香料ミルクなんよそれ

りお:美味しいもん

わかな:美味しいのはたぶん、香料じゃなくて砂糖

りお:砂糖の甘味は正義だよねえ

わかな:そういやわたしら、もうとっくに成人したってのに、お酒飲みに行ったりしたことないね?

りお:あー、ないね。会って話そー!とはなるけど、飲もー!とはならんね

わかな:そもそもりお、飲めるの?

りお:人並みには飲める、と思うけど

わかな:今日も別に飲んでもいいんだよ?

りお:いや、いちごミルクの方が美味しいし

わかな:お酒の立場のなさよ

りお:飲みってのはさ、お酒がっていうより、人と喋りながら、がいいわけじゃん

わかな:まあ、そうね

りお:わかなとはさ、最早喋ってなくても、一緒にぼんやりするだけでいいやーって感じだし、お酒要らんかなーって思う

わかな:あー、たしかに。この前会ったときは、りおの部屋で延々と、最近読んだ小説の話したよね

りお:そーそー、飲み物とかはもう、水でもいいよ

わかな:今日だってご飯食べに行こーってなって、来たのがファミレスだもんね

りお:会って話すってのが重要なんよ、きっとたぶん。おそらく

わかな:おそらく

りお:他の同級生とかはどうしてるんやろねー?

わかな:えー、どうだろ、そんなに連絡取らんからなあ

りお:取らんよねえ

わかな:りおとは割とずっとしょーもない話ばっかりしてるけど

りお:学生の時よりマシじゃない?ほんっとに無意味に顔文字だけのやりとりとかしてたじゃん

わかな:してたしてた、顔文字だけのメール来るから、顔文字だけで返してた

りお:でもそうやって、だらだらしょーもない話出来る存在、貴重だよねえ

わかな:そーゆーとこ、やっぱりりおは親友だなーって思う

りお:いえーい

わかな:……敢えて中身のある話とか、してみる?

りお:例えば?

わかな:……死生観?

りお:わたしら、ほんとそんな話ばっかりだよねえ……

わかば:好きだし気になるから、仕方ないんだけどねえ……

りお:輪廻転生とか、天国地獄とか?

わかな:そうそう、うつつはまあ、いま生きてるからそれなりにわかるしさ、死んだ後のことって気になるよねえ

りお:でも別に、わたしら何か宗教に入ってるわけじゃないんだよねえ……

わかな:本場の人に怒られそうだね

りお:本場て

わかな:えーっと、本職?

りお:そっちのほうが表現合ってる気がする

わかな:わたしらはさ、知識のいいとこどりみたいなことしてるじゃん

りお:まあーねー

わかな:輪廻転生はさ、相変わらず面白いなーと思うけどさあ

りお:うんうん

わかな:今世でこんなに喘ぎ喘ぎ生きてるわたし、前世で何したんだ……って考えなくはないよね

りお:わっかるう、何、なんか悪人だったの?みたいな

わかな:人殺しでもしたんかな?

りお:えー、どうだろ

わかな:人間自体は、絶対初見プレイじゃないと思うんよ

りお:なんで?

わかな:初見だったら、こんな思考の深いところであっぷあっぷしてないと思う

りお:あー、なんかどっかで、普通の人は、生きてるだけで死にたくはならないっての見たことあってさ

わかな:うん

りお:嘘やん?って思ったわ

わかな:嘘やんな

りお:ね。いや、普通が何かとか知らんけど、そんな爛々と生きていられるもんなの?

わかな:無理じゃない?

りお:無理でしょ

わかな:だよねえ

りお:そんなことできたら、衝動的に薬ざざーってしてないんよ

わかな:ほかの人って、普段何考えてるんだろ

りお:え、仕事のこと?とか?

わかな:え、仕事にそんなに脳のキャパ割く?

りお:いやー、下っ端だからわかんないっすわ

わかな:悩まなくはないけど、仕事の悩みより、生存の悩み

りお:生存の悩み、でかすぎわろた

わかな:未遂まで起こしてる人の言えたセリフか?

りお:あーあー、眠ってる間に全部終わってないかなー

わかな:いちばん理想的じゃん

りな:生きるのしんどいし、自己肯定感ないし

わかな:うん

りお:でも痛いのも、苦しいのも嫌ーって、だいぶわがままだよね

わかな:自己肯定感高かったら、もっと生きやすかったと思う?

りお:高かったことないからわっかんないわ

わかな:それなー

りお:もっと気負わずに生きてくほうが賢いんだろうけどなー

わかな:賢くないでーす、無理でーす

りお:当たり前に当たり前のこと言うけどさー

わかな:んー?

りお:わたしはさー、わかなが死んだら悲しいよ

わかな:そりゃあね

りお:自分の両親や、他の友達や、なんなら会ったこともないネットだけの繋がりの人だって、死んだら悲しい

わかな:そうだね

りお:でも自分の存在は、すごーく嫌なんだよなあ

わかな:そうなあ、わたしだって、りおが死んだら悲しいよ

りお:だよねえ、解ってるんだけどなあ

わかな:なーんかさあ

りお:ん?

わかな:世界はきれいで、光はやさしくて、自分が好きでいる人たちはちゃんと生きてて、幸せで、恵まれてるはずなのにさ

りお:うん

わかな:そんなことがぜんぶ、なんか悲しくて仕方がない時がある

りお:取り残されるよねえ

わかな:そうそう、取り残されるの

りお:楽しいことや幸せなことが全く無い、なんてことないのにね

わかな:それなりに小さい幸せはあるよね

りお:そうそう。たとえばいまはさ、いちごミルクが美味しい

わかな:美味しいって幸せよね

りお:あ、さいきんオクラにはまっててさ、茹でたのを延々食べてる

わかな:ああ、いいなあ

りお:この前買った服めちゃくちゃ可愛くてさ、これ着て出掛けるの楽しみだなーって思うし

わかな:うんうん

りお:なのに、なんかなあ

わかな:虚無を常に飼ってるよね

りお:そうそう

わかな:飼いならせないよねえ

りお:わりと暴走しっぱなしよ、なんかもう、どっちが主かわからん

わかな:そーれー

りお:なんかさあ、心にバケツがあったとしてさ

わかな:うん

りお:よくそのバケツがあふれたときに、心身症が起こるとか、自傷をするとか、言われるけどさ

わかな:そうだね、そう言われるよね

りお:そもそもバケツの底抜けてて、何入れても素通りなんじゃない?って思う

わかな:それだともう溜まりようがないよね

りお:そうそう

わかな:ちゃんと底があって、何か褒めてもらえたり、認めてもらえたりしたときに、筒抜けにならずに溜まってくれたら、もう少し生きやすいのかなあ

りお:素通りして全く溜まらないの、せっかくいろいろもらってるのに、申し訳なくなるよねえ

わかな:かなし。虚無だわ、虚無

りお:何か出来ることないといけないーって思っちゃうよね

わかな:何も出来ることなんてないのにねえ

りお:もう息吸って吐いてるだけで偉いんよね

わかな:それなすぎる

りお:毎日それなりにこなして、毎日穏やかに居たい

わかな:ていうか、わたしら、打ちのめされるハードル低すぎるんよね

りお:ていうか周りが強すぎる説ある

わかな:基準とか標準ってドコー?

りお:あったとしても、もうそこに沿える気がしなーい

わかな:弱者にやさしくしてくれ

りお:いや、なんだかんだ言いながらちゃんと生きてるわたしらは、別にそんな弱者でもないのよ

わかな:まあまあまあ、ただのわがまま人間と言われれば、そう

りお:ほんとそう

わかな:絶対ぐだぐだ言いながらも、寿命まで生きるんよ、わたしらみたいなのは

りお:わかりみが深すぎて

わかな:そんで死ぬ間際になったら絶対、死にたくなーいとかほざくんよ

りお:なんかあれよなー、卑怯というか、偏屈というか、ただ卑屈なだけというかー

わかな:理解してて治せてないの、ほんとタチ悪い

りお:そーれーなー

わかな:まあでも、わたしにはりおが居るし

りお:お?

わかな:めちゃくちゃ助けられるわけじゃないけど、何でも話せるってのは本当に、有難い存在だわ

りお:それなー。しんどいって言ったときに、大丈夫?じゃなくて、しんどいよなーって受け流してくれるの、めっちゃ楽

わかな:大丈夫?って訊かれたら、大丈夫としか言えんしな

りお:ていうか大丈夫な範囲なら誰にも頼ってないんよ

わかな:それな。そのへん強かよな、わたしら

りお:ずるがしこ

わかな:ずるがしこいから生きてるんやろなあ

りお:なんかもう、石とか、空気とか、そういうのになりたい

わかな:諸々を放棄し始めた

りお:脳みそいらーん

わかな:プラナリアになろ

りお:不死身じゃん

わかな:不死身ではないやろ

りお:プラナリアってあれやろ?切っても分裂するやつ

わかな:そうそう

りお:不死身やん

わかな:いや、乾いたりしたら一応死ぬみたいよ

りお:へえー

わかな:プラナリア見てるとさ、なんか、そこまでして生きる?みたいな気持ちにならない?

りお:あー、まあ、生物は一応、種の保存が目的だからねえ

わかな:保存する気のないわたしらの存在意義

りお:それ考えちゃダメなやつ

わかな:でも人間じゃなかったら、ここまであっぷあっぷしてなさそう

りお:それはー、わかる

わかな:まあそもそも、自分程度であっぷあっぷすんなよってね

りお:ほんと、自己肯定感ないね?

わかな:ない!

りお:どこで落としてきちゃったんだろー

わかな:幼児期健忘の間に、宇宙人にさらわれて、吸い取られちゃったんじゃない?

りお:宇宙人はその吸い取った自己肯定感、どうすんの?

わかな:え、食べて自分のものにするんでしょ

りお:食うのか

わかな:もぐもぐ

りお:他人の自己肯定感て、お腹壊しそう

わかな:なんで?

りお:なんか身体に合わない気がする

わかな:えー、じゃあ食べないのかな、どこかに捨てられた?

りお:盗られ損すぎる

わかな:たしかに

りお:んーっ!(伸び)なんかめっちゃ喋った。わかな、明日仕事は?

わかな:休み

りお:え、いいなー、わたしは朝から出勤だわ

わかな:え、じゃあこんな夜遅くまで駄弁ってる場合じゃないじゃん

りお:まあまあまあ、なんとかなるて

わかな:睡眠は大事だぞー

りお:仕事に差し支え無い程度にはちゃんと寝とるわ

わかな:ふーん?

りお:まあでも、そろそろ帰ろっかー

わかな:そだねー

りお:さー、わたしは帰ったらさっさと寝よー

わかな:わたしはどうしよ、つまみ細工の続きでもしよっかな、眠くないし

りお:ほー。ちなみに、どんなの作ってんの?

わかな:いまは、ユリの髪飾り

りお:めちゃくちゃ可愛いやん。見てないけど

わかな:めちゃくちゃ可愛いよ、見せてないけど。ていうか完成したらあげるよ

りお:えっいいの?やった

わかな:お揃いしよ、お揃い

りお:友達っぽーい

わかな:いや、親友なんよ、わたしら

0:ふたりで笑い合いながらフェードアウト