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狂犬病予防接種を受けましょう

2021.03.30 02:38

“狂犬病”とは、犬に噛まれると感染してしまう恐ろしい病気です。そのことは知っていても、それ以上のことはあまり知らないという方は、意外と多いのではないでしょうか。

「犬に噛まれたら狂犬病になるの?」「うちの子が狂犬病の予防注射を打っていない犬に噛まれちゃった!狂犬病が移るのかしら?」と怖がる方がいる一方、

「うちは室内飼いだから狂犬病になんかならないわ」「うちの子は人のことを噛まないから大丈夫」と言って狂犬病のワクチンを打たない方も時々いらっしゃるようです。

今回は、改めて“狂犬病”についてと、“狂犬病予防注射”についての正しい知識を学びなおしてみましょう。


狂犬病とは

狂犬病は狂犬病ウイルスという病原体が原因となって起こる病気です。犬という字がついていますが、犬だけでなく人や猫、キツネや牛などすべての哺乳類に感染します。感染してから症状が出るまでには2週間から数ヶ月かかることもありますが、この間にも感染した動物の唾液の中には病原体が排出され、他の動物を噛んだり、傷口や口元を舐めたりすることで広まっていきます。体内に入ったウイルスはその後神経を伝って脊髄・脳に達し、麻痺や興奮、けいれんなどの症状を起こします。一旦発症すれば効果的な治療法はなく、致死率はほぼ100%と言われています。


日本と世界における狂犬病

日本では昭和25年に狂犬病予防法を定め、ワクチンの徹底と野犬の捕獲を行なったため、昭和31年以降は日本内での狂犬病の発症報告はありません。

しかし世界的に見ると、日本のように狂犬病を撲滅することが出来た国はごく少数です。日本、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、アイルランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、台湾、グアム、ハワイ、フィジー諸島のみが厚生労働省が指定する狂犬病清浄地域で、あとの国はまだまだ狂犬病の脅威が見られているのです。

世界中では今でも、年間4~7万人ほどの死亡患者が出ているといわれています。

このように、狂犬病は世界中で多く見られている病気であるため、現代のように誰でも簡単に海外旅行ができ、また海外からどんどんペットが輸入されている状況では、いつまた日本に狂犬病が再び入ってきてもおかしくないのが現状です。

そこで、国内ではすでに見られなくなった狂犬病でも、法律によって犬に毎年予防接種を打たせることを義務化し、いざというときに感染が広がらないように備えています。

そのため、たとえ愛犬が人を噛んだりしなくても、また室内飼いであったとしても、予防接種を愛犬に受けさせる義務が飼い主さんにはあるのです。


狂犬病の予防接種

狂犬病予防法では、生後91日以上の犬を飼うときには30日以内に地元の役場に登録を行い、狂犬病予防接種を受けさせなければいけないことを義務づけました。狂犬病が広まらないようにするためと、全国に飼われている犬の頭数を把握するためです。法律による義務なので、もし飼い主さんがこれを怠ると罰金刑(20万円以下)が科せられます。

予防接種はだいたい4~6月の春に行なわれ、地域によって、近くの公園などで集合注射が開催される場合(近年では実施する市町村が減ってきています)と、動物病院で接種する場合があります。どちらの場合でも、初めて接種したときには“鑑札”と“注射済票”を、2年目以降は“注射済票”を交付してもらいます。鑑札には接種年月日と市町村名、番号が記入されており、その番号を見れば、飼い主さんの住所や名前、その犬の名前がわかるようになっています。鑑札は犬にとってのマイナンバーカードのようなものです。これは1度しか交付されないため、番号は愛犬手帳にひかえておき、落としたりしないようにしっかりと首輪につけるようにしましょう。


狂犬病のワクチン

狂犬病のワクチンは一般に不活化ワクチンと呼ばれる種類のものです。不活化ワクチンとは、病原体のウイルスを殺して、免疫を作るのに必要な物質だけを取り出して作られたものをいいます。体内に入れてもウイルスは増殖しないため、発病する心配もありません。しかし、その反面免疫の持続期間が短いため、一年に一回、追加接種をする必要があります。


狂犬病以外のワクチン

「うちの子はついこの間ワクチンを打ってもらったから、狂犬病はもう打たなくても大丈夫」という方、ワクチンにもいろいろな種類があることをご存知ですか?

狂犬病ワクチンのほかに、犬に打つワクチンには混合ワクチンというものがあります。混合ワクチンとは、ジステンパーやパルボウイルス感染症など、日本にも存在していて発症すると生命に危険がある病気に対するワクチンで、この中に狂犬病は含まれていません。

狂犬病ワクチンなのか混合ワクチンなのか、何のワクチンをその時に打ってもらったのかはよく把握しておく必要があり、混合ワクチンを打ってもらった際には、どんな病気に対する免疫をつけたのかもワクチン証明書を見るなどしてよく確認しておきましょう。

ちなみに、ほかのワクチンを打ってしまうと、しばらくの間は狂犬病のワクチンを打つことが出来ません。最近、混合ワクチンを打ったという方は狂犬病予防接種を打ってもらう前に、必ず獣医さんにその旨を申し出るようにしましょう。


狂犬病予防接種の受け方

狂犬病予防接種を受ける時にはまず、ワクチンを受けても大丈夫な体かどうかを確認しましょう。人でも風邪を引いていたり、熱があるときにはワクチンを打つことが出来ませんよね。それと同じで集合注射のお知らせがきても、愛犬の体調が悪かったり、普段と様子が違うようなら接種は止めておきましょう。

具体的には、いつもよりも元気がない、お腹を壊している、旅行から帰ってきたばかりでとても疲れている、発情中である、病気の治療中である、などです。集合注射ができなくても、多くの動物病院ではいつでも狂犬病のワクチンを打つことができるので、慌てずに愛犬の体調が万全なときに接種するようにしましょう。


集合注射に向かない子

おうちの子がとても臆病だったり、喧嘩っ早い場合は無理をして集合注射に行くべきではありません。集合注射は多くの犬が集まり、注射という嫌なことをされているのですから、一種独特な雰囲気になっています。普段大人しい子ですら、おうちのひとの言うことが聞けなくなってしまうことがあり、犬同士のトラブル、犬から人へのトラブルが起こりやすくなっています。また、精神的なストレスや興奮から、それだけで病気になってしまう子もいます。怖がりで注射を見ると暴れるような子やほかの犬に喧嘩を売るような子は無理に決められた日に集合注射に行くことはありません。

近所の動物病院に相談して、別の日に静かな環境で打ってもらうようにしましょう。


狂犬病予防接種の免除

狂犬病予防接種は法律によって義務付けられていますが、例外として接種が免除される場合があります。

たとえば、以前に狂犬病の予防接種を打ったときに副作用が出てしまった場合、てんかんなどの神経症状の病気を持病として持っている場合、老齢や病気のため予防接種をすることが逆に生命の危険を伴う場合、妊娠中の場合、などです。これらの時には動物病院で狂犬病予防注射猶予証明書を書いてもらい、役所に申請書を提出すると、申請年度は狂犬病予防接種が免除になります。


予防接種を受けた日は

特に集合注射に行った子は神経が高ぶっています。予防接種を受けた後はなるべく静かに過ごせるように心がけてあげましょう。当日のお散歩は控えめにして、トリミングや来客、旅行など、ストレスがかかることは数日空けてからにしましょう。


副作用について

狂犬病ワクチンの副作用は一般的に少ないといわれています。しかし、少なくても接種後から半日は注意深く観察して、もしも普段と変わったことがあればすぐに動物病院に連絡するようにしましょう。よく見られる副作用としては、発熱、元気食欲の減少、接種部の腫れや痛みなどです。


登録の変更

犬の登録は一生に一度、鑑札をもらったときだけです。ですので、もし引越しや譲渡のために今までと違う市町村に住むことになった場合は、今までの市町村の鑑札を新しい所在地の鑑札と交換しなければなりません。引越しをしたときには自分の住所だけでなく、犬の住所も忘れずに手続きをしてあげてください。この場合、新たな登録手数料はかかりません。

また、犬の名前や住所、電話番号などの登録情報に変更があった場合や飼い主さんが変わった場合、亡くなってしまった場合にも届出は必要です。各市町村の役場、保健所、動物管理センターに届出をしましょう。


まとめ

狂犬病がどのような病気なのか、狂犬病予防接種がなぜ大切なのか、分かっていただけたでしょうか?

必要以上に怖がる必要はありませんが、みんなが協力して予防を行なわなければいけない病気であることを、犬を飼っていらっしゃる飼い主さん一人一人が実感してもらえたら幸いです。