自然で染めたモノを身に着けるという選択(1) - アパレル業界に求められるサステナブルな取組み
最近よく耳にする、サステナブルという言葉。
今、世界中のアパレルブランドがサステナブルな取組みを行っているのはご存知ですか。
「サステナブルって聞いたことあるけれど、具体的にはわからない。」「何かできることをしたいとは思うけれど、取組み方がわからない。」という方も多いと思います。
そこで今回は「サステナブルなファッションと色」をテーマに、サステナブルなファッションとは何か、色とサステナブルの関係について考えます。
(SHIORI)
世界は今、サステナブルな社会を目指している
サステナブルとは“持続可能な“という意味です。地球温暖化や環境汚染、資源枯渇など、地球は今さまざまな問題をかかえています。そのような中、2015年国連サミットで、自然環境や資源に配慮し、未来の世代もずっと平和で豊かに生活し続けるサステナブルな社会の実現について提唱されました。現在、世界中の国や企業、業界、そして個人で、それぞれにできるサステナブルな取組みが行われています。
アパレル業界のサステナブルな取組み
アパレル業界では、世界のトップブランドを筆頭に、不要な服を回収してリユースしたり、素材を見直したりするなど、さまざまな取組みが行われています。アパレル業界がサステナブルな取組みを積極的に行っている背景には、洋服を製造〜流通〜販売する過程で環境に大きな影響を及ぼしているという現実があるからです。
日本では年間約30億着が廃棄されている
安価で提供するために洋服を大量生産し、売れなければ大量廃棄するのが今のアパレル業界。2018年には、ブランド価値を保持するために年間40億円もの洋服などを廃棄しているブランドがあることが分かり問題となりました。
現在日本でも、年間約30億着の服が廃棄されています。廃棄された服は焼却され大量のCO2が排出されているのです。
アパレルと水の問題
2000年代からファストファッションが流通するようになり、低価格な服を大量生産する工場の中には、排水処理が適正にされず、有害物質が排水として流れ出ているところもあります。また、服を染色するためだけに毎年5兆リットル(オリンピック競技用プールの200万杯分)もの水が1年で使われていることも問題となっています。
環境に影響を及ぼす化学的な染色方法
色に耐久性があり、安価に一定の品質で染めることができる化学染料は、アパレル業界にとって都合が良く、大量生産される服の染色方法として一般的です。現在流通している洋服の実に99.9%に化学染料が用いられています。
石油由来の化学染料が環境にさまざまな影響を及ぼしていることは言うまでもありません。染色に大量の水が消費されるのはもちろんのこと、流れ出た排水による健康被害や環境破壊が世界中で起こっています。
改めて注目される「草木染め」
今、サステナブルな選択肢として改めて注目されているのが、天然染料です。天然染料とは、植物や動物から抽出した天然色素が使われた染料のこと。染色師と呼ばれる伝統的な技法を用いて染色する職人が天然染料を用いて人の手で染色する「草木染め」には長い歴史があります。この昔ながらの染色が、化学物質をつかわないサステナブルな考え方だとしてあらためて見直されています。
天然染料は水も人も守る
天然染料は自然の植物から色素を抽出するので、煮煎じたときの排水も環境を傷つけることはありません。また、染色する際に使用する水も、化学染料ほど大量ではないのです。天然染料を使うことで、大切な資源を必要以上に消費せず、必要最低限の水と素材で、洋服をつくりあげることができます。
水以外にも考えなければならないことがあります。それは、染色工場で働く人や周囲の環境です。化学染料を扱うことで、排水による人的な被害も起こっています。染色に携わる人々の健康を守るということも大切なポイントです。
サステナブルなファッションを身に着けること
大量廃棄や環境汚染に大きく影響を与えるという側面もあったこれまでのアパレル業界。現在では世界中の企業で、リユースやエコな素材での洋服作りなど、サステナブルな取組みが行われていますが、その中でも重視して取組むべきアクションは、環境や人々の健康に大きな影響を与えている水問題です。
天然染料を使った染色方法は、水問題の解決に繋がる他、ひとつのモノを長く使うことができる、素材を大切にする、資源を使いすぎないようにする、など多くのサステナブルな取組みに繋がります。