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温泉と鉄道の将来

2021.04.01 02:56

1.まえがき

 今回は「温泉と鉄道」の将来について執筆していきます。日本の重要な観光資源である温泉を、どのように活用していくことができるのか…最後までお読みいただければ幸いです。

 なお、本研究では基本的に首都圏を主眼に置いて執筆して参ります。ご了承ください。

2.温泉地の現状

 読者の皆様もご存知のように、日本には非常に多くの温泉地が存在し、首都圏にも94箇所(※)の温泉地が存在します。しかし、年々温泉を取り巻く環境は厳しくなっています。下のグラフをご覧ください。

 自然災害などの影響による増減はあるものの、1989年ごろから現在に至るまでおおむね横ばいであることが分かります。

(※)温泉旅行予約サイト「ゆこゆこ」の調査による

 また、関東地方の中でも著名な草津温泉・伊香保温泉を擁する群馬県の平成28年度調査では、主要9温泉地(草津温泉・伊香保温泉・水上温泉・四万温泉・老神温泉・磯部温泉・やぶ塚温泉・猿ヶ京温泉・万座温泉)の観光客数が草津温泉を除いて少しずつ減少の一途を辿っていることが明らかになっています。

 さらに、今後増加する外国人観光客に対応することが重要になってくることは容易に予想ができます。外国人観光客が車を使って観光することは少ないため、温泉地と鉄道はこれから関連性を増してくるというわけです。


関東地方の一大温泉地である伊香保温泉


3.鉄道による温泉地連絡の現状および問題点

 現在、特急列車や一部の観光列車をはじめ、多くの列車が温泉地の最寄り駅に向けて運行されています。しかし、数多くの問題点も存在します。


鬼怒川温泉へ向かう特急「きぬ」

湯河原駅を経由する東海道本線

(1)駅から温泉地へのアクセスが悪い

 先述したように、首都圏には数多くの人気温泉地がありますが、実は鉄道でのアクセスは非常に悪くなっています。次の表をご覧ください。


(「ゆこゆこネット」関東地方の温泉地・甲信越の温泉地より15箇所を抜粋

現況に沿って一部改変)

 石和温泉駅や鬼怒川温泉駅など、中には駅と温泉街が直結しているところもありますが、大半は長時間バスに乗車してのアクセスとなっています。高速バスは温泉街に直接アクセスできることが多く、所要時間では鉄道が有利とはいえこの面では大きく差をつけられているといえます。

 また、草津温泉近辺にある施設の案内サイトには次のように記されています。

電車・新幹線

 JR吾妻線長野原草津口駅下車後JRバスで約25分、JR軽井沢駅より草軽交通バスで約1時間30分。

高速バス

 東京都内から高速バス・上州湯めぐり号が定期的に運行されています。乗り換えなしで目的地草津温泉バスターミナルまでお越しいただけます。詳細はJRバス関東へお問い合わせください。

自家用車

 天狗山レストハウスおよび草津音楽の森国際コンサートホールには駐車場がございます。草津入りされた後も、草津アカデミー・シャトルバスの時間に拘束されず自由に行動できますので、お車をお持ちの方は車でのご来場をお勧めします。

(草津夏期国際音楽アカデミー 公式サイトより引用)

 このことからも、鉄道・バスが不便であることはよくわかります。

(2)JRに温泉観光客が利用できるような「お得なきっぷ」がほとんど存在しない

 現在、JR東日本には68種類もの「お得なきっぷ」が存在していますが、そのうち温泉観光をプッシュしている首都圏発の切符は、静岡県の伊豆方面に向かえる南伊豆フリー乗車券のみです。北関東方面へのお得なきっぷは皆無といえるでしょう。

4.現状の改善策・結論

 駅を温泉地に近づけることがベストですが、温泉街は古くから人が集まる場所であり、それに伴い古くに建設された路線が多く、また山間部の急峻な場所に立地しているなど、困難な条件が多いため不可能といえます。そのため、温泉連絡バスによるアクセスは継続せざるを得ないでしょう。

 このままでは都市部から直接温泉街に行ける高速バスのアドバンテージが大きいため、問題点(2)で挙げたお得なきっぷを増やし、温泉連絡バスへの乗り継ぎを強化することはできるでしょう。

 また、温泉地付近までの観光列車の運行を増加させることも一手であると考えられます。現在、観光列車「リゾートやまどり」が不定期に運行されていますが、「リゾートやまどり」は1編成のみの在籍であり、多方面に運行することは困難であるため、リゾートやまどりのような観光車両の増備は不可欠であるといえます。


         大宮駅から中之条駅を経由し長野原草津口駅まで

        不定期に運行されている観光列車「リゾートやまどり」

5.あとがき

 温泉地への観光をテーマにしてみたものの、鉄道を使うことの優位性を見出すことは難しく、結果1つの結論に落ち着いてしまいました。やはり、テーマ選定は重要だと改めて感じました…今更遅いのですがね。

 

6.参考資料

・高崎経済大学 温泉地における集客の取り組みに関する基礎的考察

http://www1.tcue.ac.jp/home1/c-gakkai/kikanshi/ronbun16-4/03misui.pdf

・環境省 温泉利用経年変化表

https://www.env.go.jp/nature/onsen/pdf/2-4_p_3.pdf

・温泉旅行の宿泊予約・宿探し ゆこゆこ 関東地方の温泉地

https://www.yukoyuko.net/onsen/search?largeAreaCode=03

・群馬県 平成28年 観光客数・消費額調査(推計)結果

https://www.pref.gunma.jp/contents/100030363.pdf

・旅行年報2015 日本人の旅行に対する意識(公益財団法人日本交通公社)

https://www.jtb.or.jp/wp-content/uploads/2015/10/nenpo2015_1-4.pdf

・草津夏期国際アカデミー 草津温泉へのアクセス

http://kusa2.jp/access/access-kusatsu/

・JR東日本 おトクなきっぷ

http://www.jreast.co.jp/tickets/

・日光旅ナビ

http://www.nikko-kankou.org/access/


おことわり:Web公開のため一部表現を変更させていただきました

この記事に掲載された情報は部誌発行当時のものです。現在と状況が異なる場合があります。