桃太郎が教えてくれたこと

🐶ハンセンⅠ型 腰部椎間板ヘルニア(IVDD)

2021.04.01 02:55

ハンセンⅠ型 腰部椎間板ヘルニア(IVDD)


椎間板ヘルニアは、脊柱同士の間にある椎間板が、脊髄を圧迫することで起こる、神経学的疾患です。

椎間板の髄核(椎間板の中のゼリー状の物質)は、 背骨にかかる衝撃を吸収する役割があります。

しかし、ゼリーの部分が石灰化し、硬い椎間板になっていると、椎間板が衝撃を吸収できず、日常の何気ない動作でも、中身が飛び出す誘因となり、脊髄を圧迫したり、損傷したりします。

我が家のブリアナが、腰部椎間板ヘルニアを発症した時のことを、お話しします。


◆ブリアナについて◆

2016年2月7日、フレンチブルドッグ専門犬舎で出会いました。

ブリンドルの母の血をひく、2015年生まれの、とても活発で賢いブリンドルの女の子です。

走ることが大好きで、ドッグランでは目にも止まらぬ速さで、弾丸のように走り回っていました。

◆経緯◆

2017年1月28日 1歳

稀にキャンとなくことがあり、近医を受診。

後肢反射低下を指摘される。

2019年3月8日 21:30 3歳

パピーの頃からブリアナのお気に入りの場所である、ソファの下から這い出る。

直後、聞いたことのないような悲鳴をあげ、震え出す。

即刻、かかりつけ医の夜間救急にかかる。

症状から、椎間板ヘルニアグレード1~2の診断を受け、消炎鎮痛剤の注射と経口薬を処方してもらい帰宅する。

2019年3月9日 3:17

夜間救急からの帰宅後も、荒い呼吸は収まらない。痛みからか体位も定まらず、伏せたり座ったりを繰り返す。

消炎鎮痛剤の注射が効いているとは思えず、悪化傾向にあると思った。

2019年3月9日 4:20

荒く早い呼吸は、収まる様子を見せない。

ブリアナが、身体を震わせながら私を見る。小さな身体で痛みを耐えている姿に心が痛む。

ブリアナは一睡もしておらず、頻呼吸を続けている。その疲労はどれほどのものか。

10分後、とうとう立てなくなった。

立とうとしても腰が上がらない様子。

進行が速過ぎる。

ネットでヘルニアの名医を調べまくり、電話やLINEでコンタクトを試みるも、まだ朝の4時台。この時間に連絡が取れるわけもない。

すがる思いで、留守電やLINEに連絡先を残した。

2019年3月9日 7:35

都内でヘルニアを得意とする、整形外科病院の獣医師が留守電を聞いて連絡をくれた。

ブリアナの様子を聞いた医師は、一刻も早い方が良いと午前中のMRI枠を空けてくれた。

2019年3月9日 10:00

整形外科病院での診察時、ブリアナは全く立つことができず、困った顔をして私を見つめる。

痛覚検査では盛大な悲鳴をあげ、痛々しいながらも痛覚が残っていることで、まだ回復の希望はあると感じた。

診断はグレード4。

昨日の21:30発症後、数時間でグレード1,2から4まで進行した。

2019年3月9日 11:43

MRI、造影MRI、CTの結果が出た。

L(腰椎)1、L2、L3椎間における、左側脊髄に圧迫所見がある。

そして飛び出た椎間板が散弾銃のように、広範囲の神経を損傷させている。

L1には椎体形成異常もあるとのこと。

椎間板物質による脊髄への圧迫を減退させるために、片側椎弓切除を行い、進行性脊髄軟化症への移行が疑われることから、硬膜を切開、除圧する。

また、手術では椎弓を切除するため、その後はスクリューにて椎体を固定する、椎体同定術を行うとのこと。

2019年3月9日 14:00麻酔導入開始、17:00手術終了

手術は無事終了したものの、脊髄の色が悪くなっていたこと、脊髄硬膜切開後、血液が混ざった脊髄液が出てきたことから、予断は許さない状況。

脊髄軟化症を発症するか否かは、術後7日間がヤマになるとのこと。

そして、術後には深部痛覚も消失しており、グレード5となった。


◆今のブリアナ◆

手術から2年経った現在まで、ブリアナの深部痛覚は消失したままです。

しかし、車椅子を乗り回し、キラキラした笑顔で走り回る姿は以前と変わりありません。

椎間板ヘルニア発症後、下半身麻痺になり歩けなくなったことを悲観していた私ですが、ブリアナが自分の力を疑うことなく、できることをしている姿や「脚は動かなくなったけど、だから何?」と言わんばかりの溢れる生命力に、励まされてきました。

お友達と遊ぶ姿や、ケンカの仲裁に入る姿は、車椅子に乗っていても変わりません。

お散歩やごはんの時は、真ん丸の目をキラキラさせ、我先にと、兄のポルコを押しのけ前に出ます。

病気はしましたが、ブリアナ自身は何も変わっていないのです。


◆遺伝について◆

フレンチブルドッグは病気が多いなと、個人的にも感じていますし、周りにいるフレンチブルドッグでも、一度も病気になったことが無いという子の話は、あまり聞きません。

フレンチブルドッグ自体が、様々な犬種をかけあわせ、生まれた犬種であり、自力での交尾、出産、子育てはほぼ無理であると言われています。

ブリアナは、父方の血統にパイドが一頭いるだけで、あとは父母どちらの系統も、ブリンドルかフォーンしかいません。

つまり、かけ合わせが悪いと言われているブリーディングをされた子ではないということです。

それでも、椎間板ヘルニアを発症した背景には、椎体形成異常等の先天的要因と、ジャンプをしたり、ソファ下に潜り込む等の環境要因があったと思います。

フレンチブルドッグは、ほとんどの個体が何らかの奇形を持っていると聞きます。

人間が好むように作られた、自然界では生きていけない犬種ですから、納得です。


環境に適応する、身体の強さを持った犬種ではないのでしょう。

少しの気温の変化、少しの段差、少しの食材が、その子の命を脅かす病気のトリガーとなり得ることを、痛感しています。

最近、日本でもJKCで認められていない毛色のフレンチブルドッグが販売されるようになりました。

珍しい毛色の需要が増えると、当然その分無理な交配をさせる業者も増えるでしょう。

生体展示販売をしているペットショップでは、故意かどうかはわかりませんが、父母の毛色を教えてくれませんでした。

また、ブリーダーでも故意に血統書を操作する犬舎もあるそうです。

こうなると、何を信じて良いのかわかりません。


そもそも、人間の好みに合わせて交配されてきた「フレンチブルドッグ」を求めること自体が、不健康な子を生み出す基盤となっているのではないか。

最近、そのようにも思っています。


しかし、人間かと思うほどの豊かな表情、しぐさ、天真爛漫さは、フレンチブルドッグならではです。

それに、彼らはすでに家族なんです。

ならば、彼らの脆弱性を認識した上で、病を発症させない住環境にすること、有事の際に十分な治療を受けさせることができるように、予め準備しておくことが大切なのではないでしょうか。


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