Tom Seidmann-Freud
本日も、絵本の歴史の中では重要な作家でありながら、日本では殆ど知られていない作家の絵本をご紹介します。
こちらは本日オンラインストアに更新をしたTom Seidmann- Freud(トム・ザイトマン・フロイト)の絵本です。(トムと言う名前を使っていますが女性です)
1892年生まれのオーストリア出身の画家、絵本作家で、名前を見てあれ?と思った方が居たかもしれないのですが、精神分析学者のジークムント・フロイトの姪なんですね。
ロンドンの美術学校を卒業後すぐにアーティストとしては成功をし、幾つかの子供のための絵本をこの世に残すのですが、夫とともに興した出版社が1929年の世界恐慌の煽りを受け倒産し、夫の自殺、自身のうつ病の発症。
そして1930年に睡眠薬の過剰摂取により37歳の若さでこの世を去ってしまった、早世の作家です。
画家としての天才肌、というよりも子どもたちへの教育についての関心が強かった人物のようで(出版社を興しているのもそうした彼女の活動の一環なのでしょう)読み書きの本などを幾つも作っており、純粋な物語絵本よりも、学習を目的にしたような絵本作品に比重を置いていたと思われます。
当店に入荷した二冊の絵本ともに、そうした傾向が感じられますね。
ドイツ語圏の絵本の歴史の中ではクライドルフや、フライホルトとも並んで語られる独特な個性を持った絵本作家です。
彼女の描く絵は可愛らしいイラストでありながら、それだけにとどまらない何か奥深さを感じる(この感触はやはりフライホルトと似ていると思います)もので、フランスのジャクリーヌ・デュエームなども、彼女の影響を強く受けていると思われますね。
ドイツ語のABCの読み書き絵本の方では、ジュッターリーン体(20世紀前半の限られた期間にドイツで使用されていた筆記体。当店の本ではエルゼ・ヴェンツ・ヴィエトールの古い絵本などで使用されています)の書き方のページもあったりするのも面白いです。
なかなか日本では手にすることのない作家だと思います。
是非当店オンラインストア、店頭でも御覧ください。
当店のTom Seidmann-Freudの絵本はこちらです。