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[記事紹介]「歴史からトランスジェンダーの物語を消すのはやめよう」

2021.04.03 09:09

Noteとの使い分けを悩んで、ほったらしてしまっているブログ。ここでは、気になった記事や本の紹介をしていこうかな(と言いつつ、またしばらく放置しそうだけど)。


今回は、元記事は、「Sapience」という名前の「人類学マガジン」に掲載された、「Stop Erasing Transgender Stories From Historyの紹介。

著者は、Gabby Omoni Hrtemann。Federal University of Minas Geraisで、人類学と考古学専攻の博士課程の学生。

*自動翻訳DeepL用いつつ、英語と照らし合わせて訳し直しをしていますが、チェック甘くて言葉使いが変ところもあるかもしれません。


「歴史からトランスジェンダーの物語を消すのはやめよう」 Gabby Omoni Hrtemann(抜粋:小見出しは砂川による)


▼トランス男性の死をめぐってブラジルで起きたこと

2019年、ブラジルで、78歳の男性Lourival Bezerra de Sáさんの死がニュースになった。自然死だったが、遺体が3カ月以上も警察の管理下におかれた。埋葬が遅れたのは、男性とされた書類と、性器から女性とされた法医学の報告書が一致しなかったことだった。メディアは、おそろしいことに、彼を男性になりすました女性として表現した。

彼の死後のこの騒動は、悲しいことに、過去と現在の物語の中で、ジェンダーの多様性が消去されている一例だ。西洋の世界観の影響を受けた地域では、男らしさや女らしさは、生殖器や生殖能力と直結される。それは、人間を身体的特徴(sex 生物学的性別)によって厳密に二分し、それによって社会的・文化的な役割(ジェンダー)が生じるというものだ。


▼普遍的ではない、二項対立的性別

人類学的・生物学的研究では、「sex(性別学的性別)」も「ジェンダー」もこうした二分割が当然とは考えてない。人の体の形に基づき、社会的役割の選択肢を2つに割り当てる考え方は、すべての時代や文化にあてはめることはできない。

このような可能性が忘れられたり、禁じられたりしている現代社会において、sex/ジェンダーにおける二項対立を超えて存在する個人が暴力の対象となっている。トランスジェンダー、ジェンダー・ノンコンフォーミングの人々は、世界で最も殺害されている人たちに入る。トランスジェンダー、ノンバイナリーの考古学者として私が暮らし、働いているブラジルでは、2019年の1年間に124人、2020年に175人のトランスジェンダーの人々が殺害された。

トランスジェンダーの考古学者である私は、古代のことを知ると、懐かしいような思いで胸がいっぱいになることがよくある。人類は、歴史を通して、様々な文化の中で、男性性と女性性の間に流動的な概念を持ち、その存在を悪者にされたり侵害されたりすることなく生きてきた。インドのヒジュラ、メキシコのムクス、ポリネシアのマーフー、ラコタ族のウィンクテなどは、人類の男性性と女性性の両方に属するものとして伝統的に認識され、敬意を払われてきた人々の一例だ。


▼考古学者も二項対立論に基づきがち

だが、考古学を含め、学問の世界でつくられる人類の過去に関する物語の多くは、ヨーロッパ中心の二項対立論に大きな影響を受けている。

多くの考古学者が、古代の人体描写においては、人類の区分がほとんど二項対立的ではないという事実を指摘してきた。

考古学者のBenjamin Alberti は、ギリシャの青銅器時代後期の具象美術を研究の中で、その描写に生殖器が全く存在しないだけでなく、色分けや身体的特性の体系だった連関、あるいは、衣服の慣習などによって性別を決めることは不可能であることを示した。

考古学者のMaría Fernanda Ugaldeは、紀元前3500年頃のエクアドルの3,000体以上の土偶を分析し、これらが、現在の西洋的なsexやジェンダーの概念に適合するものとは異なる、身体的特徴や衣服の組み合わせが存在することを指摘した。


▼近年の研究の成果

「男性」あるいは「女性」に典型的だとされるモノと一緒に埋葬された人物が、その性別と異なる生物学的性別であることが確認されることも起きていきた。ペルーの、第一千年紀(1年〜1000年A.C.)のモチェ族のミイラが、鼻飾りや金の棍棒など、エリート男性戦士のものと解釈されてきた王権を示す埋葬品ともに発見された。しかし、この遺骨は生物学的には女性のものであるということが、分析結果から判明した。

古代の遺骨の分析を専門とする生物考古学者のPamela Gellerは、研究者が生物学的性別を推定する際、一般的に「不明」「女性」「女性の可能性が高い」「男性」「男性の可能性が高い」という5つのカテゴリーに分けることを指摘している。しかし、その「不明」とは、研究者の確信に属するものであって、個人の性別に属するものではないと彼女は指摘している。

考古学者たちは、sexやジェンダーにおける二項対立にあたはらまない人々がいたことを示す証拠を定期的に発見しているが、それらを「異常」や「不明なケース」として、妥当性を消し去る傾向にある。そして、その考えはメディアで再生産され、男性性や女性性の流動性を体現した人々の物語を消し去ることに貢献してしまう。


▼考古学者に求められること

現在のトランスジェンダー、インターセックス、ジェンダー・ノン・コンフォーミングの人々に対する暴力を止めるには、教育が重要だ。考古学者もそれ以外の世間の人も、すべての人が、私たちトランスジェンダーは人類が誕生したときから人類の一部であったことを知る必要がある。そして、私たちの知識と経験から学び、私たちの権利のために、私たちに添った戦いが求められている。

シスジェンダーの考古学者は、考古学的記録を見る方法を変える必要がある。解釈をする前に、男性と女性、あるいは男性と女性という厳密な区分けに当てはまらない存在の可能性を頭に置くことが求められる。

シスジェンダーの考古学者をはじめとする遺産に関する専門家にとって、分析カテゴリーとしてジェンダーとsexにおける二項対立的概念を放棄することは怖いかもしれない。それは、人類学の歴史の中で中心的な位置を占めてきたし、現代西洋社会の中でとても自然なことと感じてきたからだ、しかし、こうした改革は、トランスジェンダーの生きてきた記録を残すためになし得る道なのだ。西洋的な二項対立ジェンダーにしがみつくことは、過去にも現在にも害をもたらし、死を招くことさえあるのだ。