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Baby教室シオ

絵本『うさぎのニコラス』

2021.04.04 00:00

アメリカの児童文学作家リチャード・スキャリーの美しい世界をご覧いただきます。日本の絵本作品とは明らかに異なる鮮やかでページ全てが主張してくる心奪われる美しさが存在します。

横13.5cm、縦24.5cmというサイズが持ちやすく、子育てをしている最中はバックに入れ、待ち時間のあるときに出しては読んで楽しんでいました。視覚重視で発達する子供達にとっては、何度繰り返し見てもその色彩溢れる世界に引き込まれてしまいます。

絵本は絵を楽しむもの。絵から何かを感じ読み解く力をつけてほしいと考えます。元々イラストレーターであったスキャリーの絵には不思議な世界観が存在します。主人公のニコラスを離れた所へ配置し、風景を手前に描く遠近感と色彩の魔法が読み手や聞き手がその場を覗き込んでいるような感覚に陥らせます。


中表紙を開くと赤いオーバーオールを身に纏ううさぎのニコラスが、深い紫色のスミレの香を確かめるように鼻を埋めています。白木蓮の花の下に広がるラッパスイセンお手にしたり、鮮やかな種類の蝶を追いかけるニコラスが春を満喫する幼い女の子のようでもあり、わんぱくいたずらっ子のようにも見えます。

このシーンで思い出すのは我が子が祖母の大事にしているスミレを摘んでしまったこと。庭の脇にそっと自生しているスミレを手折る儚さや落胆する祖母の気持ちに思いを馳せたのもこの絵本がきっかけでした。


夏は野原に横たわり鳥のさえずりに耳を傾け、虫たちの行動を眺め、葦の自生する水辺のほとりでカエルを眺めている姿は夏休みの子供の一日そのもの。


露がやってきてタンポポの花が白い綿毛に変わると、その綿毛を積んでは息を吹きかけ飛ばすニコラスの姿は人間の子供のよう。うさぎのニコラスに子供自身が自分を投影し空想しながら絵本の世界を楽しみます。そうこうしていくうちに秋が訪れ、葉が秋色におめかししニコラスの上へ舞い降ります。

このシーンではニコラスが落ち葉を集めて何をするのだろうかと子供と空想を巡らせたものです。落ち葉の絨毯を敷き詰めておままごと、ふかふかの落ち葉布団で寝るんだとか、サクサク踏んで音を楽しんだり、葉っぱのネックレスを作ったり、昆虫たちが冬を過ごすために倒木の元へ集めたり、腐葉土を作りカブトムシを飼うんだと一気に夏に逆戻りなんて空想をし実際に行動に起こしたこともああります。

森の小動物たちの冬支度を想像させるページを過ぎると一変した冬の銀世界。

赤いベルベットの上に黄色いコート、白いボンボンのついた赤い毛糸の帽子に赤い手袋。小さな手で降る雪を掴もうとする姿はなんと愛らしいのでしょう。

降り積もる雪の中を一生懸命歩いてきたであろうことを物語る足跡。しんしんと降り積もる雪の中をサクサクと踏みしめながら歩く音さえ想像させてくれます。


季節の移り変わりを、四季折々に変化する風景を子供達のするであろう行動をうさぎのニコラスに扮させた素敵なお話です。皆さんの横にも赤いベルベットを身に纏ったウサギのようなお子さんが側にいることを思い出してそっと見守ってみてください。季節を楽しんでいる行動をしているかもしれません。