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Me and Songs

ヴィヴィアン・キャンベル (Def Leppard) #5 / ナイスガイ・フィル・コリン

2021.04.04 01:45

さて、途中長い中断を挟みながらもお届けしてきたDef Leppard のヴィヴィアン・キャンベルのインタビューも今回で最終回!


過去の使用ギターをテーマにしながら、その背後に隠された思わぬエピソードが語られているのですが、今回も「色々大変だったんだなぁ…」と思うことが…(笑)


最終回のテーマは「自主規制」「ギター、返して!」「使いたくなかったギター」「ナイスガイ、フィル・コリン」です。



I: インタビュアー

V: ヴィヴィアン



やめられない、とまらない!


30:30


I: “Holy Diver” は黒のレスポール、”Last In Line” ではシャーベルのギターをつかったという話ですが、それによって作曲にも影響はありましたか?



V: いや、僕にとっての唯一の大きな違いは、アームが付いたことだけだったよ。


ただ、僕は他のギタリストみたいにトリッキーな技のために使うのではなく、主に*「ダイブ・ボミング」(dive-bombing) だけだったからね。


(*映画などで爆弾が降下している時の効果音にも似た、ヒュー⇒ギュイーンというあの音)


逆に言うと、僕が唯一アームで出来たことは「ダイブ・ボミング」だったのさ、かなりウザいだろ?(笑)


I: 笑



V: あの頃は誰もがアレをやっていたし、後に僕があのタイプのギターを使わなくなったのもそれが理由だった。


あの「ギュイーン!」を自分でも止められなくなるんだよ(笑)


そのアームが付いたこと以外で、作曲面で僕にどれだけの影響があったかは定かではないかな。



Still of The Night のギター


31:40


I: 他にも当時、Rand Guitar も使っていましたが、あれはどうでしたか?



V: あれを使っていたのは80年代半ば、Whitesnake にいた頃だったと思う。


僕があのギターについて言えるのは…「尖っていた」ということぐらいかな(笑)そういう時代だっただろ?


ヘッドの先端がすごく尖ってて、アームが付いてて…とにかく激しいルックスだった。あのギターにはもう何年も触れていないけど、LAの倉庫に保管してあるよ。



よく覚えているのは、高音フレットに行った時でもすごく弾きやすかった、ということだね。当時は少しでもラウドに、少しでも速く、少しでも多くの音数を!という時代だったから。


どうやってあのブランドと繋がったのか思い出せないけど、ビルダーはすごく良いヤツでね。


彼と出会ってあのギターを渡されたのはWhitesnake のMV収録の一週間ほど前だったから、ちょっと使ってみるか、という感じだったんだ。



I: “Still of The Night” ですね。


V: 正直、あのギターを弾いた記憶ってあまりないんだよね。あの撮影の後であのギターは回収されちゃったし。


多分、あのMVが大ヒットして有名になったから、手元に置いておきたかったんじゃないかな?あのヒットのおかげで価値は上がったと思うよ(笑)


それと入れ替える形で、彼は僕にグリーンのギターをくれて、それを今でも保管してるってわけさ。



I: では、当時のギター雑誌の表紙であなたが持っていたRand Guitar は、そのMVで使われた一本ということですね?


(*33:25で日本のヤング・ギターの表紙が表示!)


V: ああ、そうだね。


いつの頃からか、ギタービルダーとはそういうものだ、と気が付いたよ。自分が作ったギターが何かしらの理由で有名になると、返して欲しがるものなんだ(笑)



醜いギターのあのブランド⁉


34:20


I: 他にもサラッと触れておきたいのですが、一時*BC Richも少し使っていましたよね?あれは?



V: あぁ…色んな意味で、あれは良くない状況だったよ。


そもそも、僕は一度たりともBC Richのギターに興味を持ったことが無かったし…(言いにくそうに)少し知っていたのは、あの…すごい醜い形のヤツぐらいで…(笑)


あのブランドに関する僕の知識は、ほんとそんな程度だったんだ。


あれは醜いギターだったし、あんなのを自分で欲しいとも思ったことはなかった。



当然、僕はあのメーカーと繋がりなんてなかったんだけど、あの頃、シャーベル/ジャクソンで僕の窓口になってくれていたヤツがBC Richに移ったんだ。


そこで彼は、子供のようにしつこく「頼むからうちのギターを試してくれ!」と言ってきた。


「キミが醜い形のギターが嫌いなのはよくわかってる。だから、ストラトタイプのギターを作らせるからさ!」という感じでね。(34:47参照)



とにかく、やり取りを重ねる度に関係性は悪化の一途をたどって行ったよ。まるで強制されているかのような状況でさ。


明らかに僕が得る利益よりも、彼らが得るものの方が多かったんだ。当然、彼らとの関係は長く続かなかったよ。



*BC Rich

70年代から奇抜な形のギターを製造し、一部のギタリストの間では愛用されていたブランド。



Aerosmith のジョー・ペリーが愛用していた影響か、GNRのスラッシュも10代の頃から使っていた。 



レスポールに戻した理由


42:20


I: あなたの盟友フィル・コリンと言えば、サステイナーを使うことでも知られていますが、長年彼と組んだことで自分でも同じようなサウンドを出してみたいと思ったことはありますか?



V: イエスでもあるし、ノーでもあるよね。


実際、サステイナーが付いたフィルのモデルを一本持っているし、レコーディングでも使ってきたしね。


僕が “Slang” アルバムの頃にレスポールに回帰したのは、フィルと自分のプレイをより明確に差別化したかったからなんだ。


元々、僕らは全然タイプの違うギタリストなんだけど、当時の時代背景もあって、あの頃僕もアームの付いたストラトタイプのギターを使っていた。



必然的にサウンドもちょっと似てきちゃったから、ギターサウンドによりバラエティを持たせるために、僕はレスポールに戻したんだ。


ご存じの通り、(前任の)スティーヴ・クラークはいつもギブソンを使っていただろ?


なので、Def Leppard でやる時に、わざわざフィルと同じようなサウンドにしようとは思わないよ。



あれは彼が長けていることなんだからね。


僕は僕のやるべきことをやり、そういった二人の異なる強みが組み合わさることで上手くやって来れたんだと思うな。



Def Leppardのオーディション


48:20


*Def Leppard加入前までに、自身でも最強と思える(でも、複雑な)サウンドシステムを構築していたヴィヴィアン。


日本語に訳された当時のインタビューが動画内で紹介されています(↓45:23)



積み上げると冷蔵庫ほどの高さになるそのシステムを携えて、Def Leppard のオーディションに臨んだヴィヴィアンでしたが…。


V: River Dogs ではギタリストは僕一人だったから、サウンドの面でも自由が利いた。


でも、Def Leppard ではフィルがいて、当時彼は非常に限られた中音域のサウンドをしっかりと出していたんだ。



で、僕が初めてスタジオでバンドとプレイした時、曲の合間に彼は僕の所に来て…キミ達もフィルがどれだけ良いヤツか知ってるだろ?(笑)


すごく申し訳なさそうに「悪いんだけど…もう少しだけボリューム下げてくれない?」って言うから、「ああ、もちろんさ!」と言って僕はボリュームを下げた。


しばらくプレイした後、彼はまた僕の所に来て申し訳なさそうに「ほんとにゴメン!ほんとに悪いんだけど、もう少しだけ下げてくれる?」と(笑)



またボリュームを下げてしばらくプレイした後、彼が三回目に来た段階で僕は気が付いたんだ。


それはギターの音量のせいじゃなく、僕ら二人のサウンドの周波数が被ってしまって、フィルの音が聴こえ辛くなってしまったんだ、とね。


終/



*バンド経験者ならあるあるだと思いますが、他のパートに対して「ボリュームもうちょっと下げて!」って言うのもイヤですし、言われるのも結構イヤだったりするんですよね(笑)


でも、このフィルとヴィヴィアンのやり取りからは、二人がすごく建設的で冷静だということがわかりますし、フィルが全く先輩面していないのも素晴らしいと思います。


「これがあのバンドやあっちのバンドだったら、多分殴り合いになってたんだろうな…」と思っちゃいました…(笑)