小松孝 監督
小松孝監督
映画と同じく個性的で明るい監督とスタッフ
海外が初めてという小松孝監督。映画製作を10年ほど休んで復帰した作品が見事バンクーバー国際映画祭の招待を受けた。本来家族一緒にご飯を食べる『食卓』だが、今は食べるものや見たいテレビ番組が違って会話もない。我慢の切れた義母は怒りをフライパン•アートで消化させる。そして食卓がだんだんアート置き場になっていくという最後まで笑える映画だ。説明やセリフが少なくただ画面を見ているとわかるので、言葉がわからないカナダ人も大いに喜んだ。これは「見ている側が積極的に映画に参加してほしい」という小松監督の処方によるものだった。「僕もフリーなので仕事をしていない時はこの映画のような実家にいるニート(注:就学、就労、職業訓練を行っていない無業な人)です。父はアル中で、もし母がいなくなったらどうなるだろうと考えてストーリーに反映させました。それにこの家は僕の本当の家なんです」とさらに笑わせてくれた。国内の映画祭でグランプリを受賞した後バンクーバー国際映画祭に招待された。何か生活が変わったかという会場からの質問に「呑むお酒のグレードが上がった」と笑わせた。
俳優の渡辺直也さん
詩人のニート役を演じる俳優の渡辺直也さんは小松監督の大学時代からの後輩で映画仲間。監督の映画の半分以上に出演していて、監督のいう「使い放題」的な存在。映画と正反対でさわかやな笑顔を持つ男優だ。今回プロの俳優は彼一人だったので「押し付けがましくなく、やりすぎないように、極力抑えてラフに」を心がけて役に挑んだそうだ。「ただあの汚い環境にいると、だんだん顔がこんな風になってリアクトするだけでした。スタッフの中で気分が悪くなって帰った人もいたんです」と笑わせると「普段僕そこに住んでいるんですけど」と小松監督が横から話した。衣装やセッティングを担当したスタッフの上原つかささんも監督の指示通りに私物を集めてセットしたが、ペットボトルやビールの空き缶は「全て僕が自分で飲んだもの」と監督が認める。現地プレスのインタビューのスケジュールがびっしり詰まってバンクーバー観光ができなかった監督とスタッフ。初めての海外進出は大成功だった。
Out of the Frying Pan… (食卓)
監督:小松孝
全く予測ができないある家族のおかしな物語
母親を亡くしアル中で年金生活を送る父親と一緒に暮らす中年の自称詩人。信じられないほど汚い一軒家で二人は話をしないし、一緒にご飯も食べない。そんな時、父親がネットの結婚相談所で見つけた新しい母親を連れてきたことから、父は酒をやめ家がきれいになり、三人は食卓を囲むようになった。だがその怪しい空気にやがて変化が訪れる・・・。セリフがほとんどなくポエムが朗読されるという、最後まで見たくなる映画。