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庭月野 議啓 監督

2016.10.06 07:04

庭月野 議啓(にわつきの のりひろ)監督

独自の新しい世界観に挑戦する監督

漫画家、ビデオゲームのクリエイター、小説家などいろいろな仕事にチャレンジしたけど、どれにもなれなかったと苦笑する庭月野議啓監督。しかし小さい頃から一貫して物語を作りたいと思ってきた。大学でふとプロモーションの映像製作をしたら周りに褒められて感動したのが映画へのきっかけだった。そして実写•アニメを組み込んだ映画『仁光の受難』はバンクーバー国際映画祭の初日からいきなり完売となり異例の3回上映となった。監督は史実「延命院事件」や伝承「二恨坊の火」から着想を得て、海外でなじみの薄い『妖怪』『浮世絵』『百物語』などを盛り込み、カナダ人の興味を大いに誘った。この作品は自分自身で監督、プロデュース、編集、アニメなどを担当して4年という年月をかけたそうだ。映画の資金はパブリックからのクラウドファンディング(製作費の1/10)と自費で、インディー(自主製作)ならではの過激に納得のいく映画作りを目指した。だが撮影準備にはかなりの苦労をしたそうだ。まず内容に女性の裸があると日本では即AV(アダルトビデオ)のイメージになる。多くの女優は脱ぐ必要性がわからない理由で出演を断わった。またそういうシーンがあると成人向けになり上映できる映画館も減った。またお寺や国の自治体が管理している建物の撮影許可も断られて大変だった。

撮影は全部で約20日未満。主演の俳優•辻岡正人さんをスキンヘッドにさせる期間にも限りがあった。短期の撮影で撮りきれない部分はむしろアニメの方が良い場合もあったので、撮影後の編集にかなり時間をかけた。自主制作映画だから出来る表現で、これまでにないような納得できる映画が作れたと監督は語る。次の作品について聞くと、しばらく考えてこの第1作目を超えられる仕事ができるか、第2作目をどうするかで今後の映画監督の人生が変わってくるような気がすると真面目に答えてくれた。この後予定されている釜山国際映画祭のレッドカーペットには九州に住んでいる家族を呼んでいる。これからも楽しみな新鋭監督だ。


The Sufferings of Ninko (仁光の受難)

監督:庭月野議啓

セクシーで愉快な百物語

誰よりも実直な仏教の僧侶•仁光(にんこう)はなぜか町の女性にモテる。そして自分も心のどこかで女性や一部の男性を求めていることを悟ってしまう。自分の迷いを打ち消すために一人修行に出た仁光の前に、能面をかぶった怪しげな女性が登場する。僧侶、人斬り、妖怪、浮世絵などカナダで受ける要素たっぷりの自主映画。平林勇監督のマジカルな短編映画『Heanven』と同時上映。