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地域計画家・高尾忠志

【長崎市景観専門監】稲佐山電波塔ライトアップ:夜景をふるさとの風景に

2016.11.21 21:03

■事業概要

2014年に長崎で国体が行われた際に、長崎商工会青年部のご尽力で大会期間中の稲佐山電波塔ライトアップが実現した。この活動を受けて、2015年度に長崎市による恒常的なライトアップの検討が行われることとなり、景観専門監にアドバイスの依頼があった。

■ コンセプトの検討

事業目的は「稲佐山山頂電波塔をライトアップすることにより、稲佐山山頂の魅力向上・賑わいの創出はもとより、鍋冠山公園及び風頭公園等視点場や長崎港など麓からの夜景を構築するとともに、長崎のランドマーク、視点場としての顕在化を図る」と設定されている。いかにも行政言葉らしい内容であり、ライトアップを行うことがどのような「コト」を市民に提供するのか、アウトカムについてのイメージが曖昧であった。単なるライトアップではなく、その「あかり」で何を表現するのか、どのような意味を持たせるのかを考えることが重要である。

私は夜景やライトアップの専門家ではないが、ずいぶんと考え、悩んだ末にたどり着いたイメージは、京都の「五山の送り火」であった。稲佐山は長崎のまちの至るところから見える。電波塔とライトアップすることによって、稲佐山全体にあかりが灯り、それが千年続く、市民の「ふるさとの風景」になってほしい。稲佐山の夜景が市民の心の拠り所になってほしい。そういう思いを持って今回のライトアップのプログラムを考えようと担当者に申し上げた。夜景が市民のふるさとの風景であればこそ、それが観光客の心を打つ。第一義的には市民に愛されるライトアッププログラムとすることが重要である。

■ ライトアッププログラムの検討

夕暮れから夜が深まるまでの時間的変化、春夏秋冬の季節の変化、長崎市民の手で展開される祭やイベント等の歳時記、そうした自然の移ろいやまちの変化と連動したプログラムを検討するようにアドバイスした。担当者が苦労してまとめたものを施工者選定プロポーザルの応募書類に加え、選定された施工者にはこれをもとにライトアッププログラムを検討していただいた。

年末から年度末の寒い季節に数回実証実験を行い、様々な色のライトアップを見比べてみて、電波塔が最もよく綺麗にひかり、飽きのこない色を平常時の色として選定した(上写真)。この色は秋冬には少し色温度を下げて、暖かい色となる。

また、毎時00分と30分には、季節ごとに若草色(春)、青色(夏)、オレンジ色(秋)、赤色(冬)に3分程度変化する。さらに21時00分には新・世界三大夜景をイメージして三本の電波塔を青(長崎)、赤(香港)、モナコ(オレンジ)に配色した。

ライトアップ開始時は、まずは市民の皆様に定着するようにと、ここまでのシンプルなプログラムにしているが、検討段階ではもっと多くのプログラムを準備してあり、今後順次季節やイベントにあわせて展開していくこととしている。

参考HP:長崎市公式HP

http://www.city.nagasaki.lg.jp/kanko/8200000/824000/p028264.html