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夜守堂

手児奈

2021.04.07 12:26



  花はものいはぬ、と世は信ずる。非ず、言はざるにあらず聞かないのかも知れない。


──泉鏡花『雌蝶』



歩こう、と思ったんです

予定もなんにもない、から


くうはくを うめてゆくのは ゆっくりとした あしどり こきゅう

かわぞいを はじめてのみちを こうさてんを ふりかえる こともなく


古い桜の樹は冬枯れて、花も葉もなけれど、無骨な幹の逞しさ、露わに


お香のかおりに誘われるようにおとずれた、初詣のひとで賑わう弘法寺と、そのてまえにある手児奈霊堂

——むかしむかし、おおくのひとびとから求愛されて悩み苦しんだ美しい乙女は、入日とともに海へ没したのでした


  手折らるる花の嘆きはいかほどか


合わせた掌が、蝶になり、ため息をつれて飛びたった


歩こう、と思えたんです

予定もなんにもない、けど、

まっさらなこころで、もういちど