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蛍の俳句

2018.04.09 02:28

https://idea1616.com/hotaru-haiku/  【蛍の俳句 30選 -蛍火-】 より

草に止まって光っている蛍

夜に光を発しながら飛ぶ蛍は、夏の風物詩の代表的なものといえるでしょう。

平安時代の頃から和歌にも詠まれて、その姿は人々から愛されてきました。もちろん俳句においても、蛍は多くの俳人によって取り上げられ、多くの作品に詠み込まれてきました。

このページには、蛍が詠まれた俳句の中から 30句を選びました。蛍のいる風景が目に浮かんでくるような俳句ばかりですので、どうかじっくりと鑑賞してみて下さい。

蛍が詠み込まれた俳句を集め、句の文字の五十音順に並べました。

なお、蛍は俳句において夏の季語として扱われます。

紫陽花を はなれし昼の 蛍あり【作者】水原秋桜子(みずはら しゅうおうし)

【補足】紫陽花(あじさい)の花の色はよく変わるので、「七変化」「八仙花」等とも呼ばれます。

一心に ともして飛べる 蛍かな【作者】高橋淡路女(たかはし あわじじょ)

薄羽織 袂に放つ ほたるかな【作者】高橋淡路女【補足】「袂」の読み方は「たもと」です。

大いなる 蛍の闇に 細き道【作者】星野立子(ほしの たつこ)

遅月に まぎれて飛べる 蛍かな【作者】西島麦南(にしじま ばくなん)【補足】遅月(おそづき)とは、月の出るのが遅いことをいいます。

月と蛍

重なりて 蛍の水を 覗きけり【作者】長谷川かな女(はせがわ かなじょ)【補足】「覗きけり」の読み方は「のぞきけり」です。

艸の葉を 落るより飛 蛍哉【作者】松尾芭蕉(まつお ばしょう)【補足】「艸」の読み方は「くさ」です。

叢に かたまり落つる 蛍あり【作者】星野立子【補足】「叢」の読み方は「くさむら」です。

月光に 蛍雫の ごとくなり【作者】川端茅舎(かわばた ぼうしゃ)【補足】「雫」の読み方は「しずく」です。

脂粉なき 少女とともに 蛍狩【作者】山口誓子(やまぐち せいし)【補足】脂粉(しふん)とは化粧のことで、もともとは「べに」と「おしろい」のことを意味しました。

すつと来て 袖に入たる 蛍哉【作者】杉山杉風(すぎやま さんぷう)

瀬の音の うすくきこゆる 蛍かな【作者】久保田万太郎(くぼた まんたろう)

篁を つひに出でざる 蛍かな【作者】日野草城(ひの そうじょう)【補足】篁(たかむら)とは、竹の林・竹藪(たけやぶ)のことです。

てうつしに ひかりつめたき ほたるかな【作者】飯田蛇笏(いいだだこつ)

手うつしに 蛍もらひぬ 垣根ごし【作者】高橋淡路女

葉の裏に止まって光っている蛍

手の螢 橋の上より 放ちけり【作者】阿部みどり女(あべ みどりじょ)

とぶ蛍 柳の枝で 一休み【作者】夏目漱石(なつめ そうせき)

憎ひ蚊と 同じ盛の ほたる哉【作者】横井也有(よこい やゆう)

逃て来て ため息つくか はつ蛍【作者】小林一茶(こばやし いっさ)

庭草に 蛍ともりぬ 雨のあと【作者】山口青邨(やまぐち せいそん)

庭の草に止まっている蛍

光洩る その手の蛍 貰ひけり【作者】中村汀女(なかむら ていじょ)【補足】「洩る」「貰ひけり」の読み方は、それぞれ「もる」「もらいけり」です。

人寐ねて 蛍飛ぶ也 蚊帳の中【作者】正岡子規(まさおか しき)【補足】「寐ねて」「蚊帳」は、それぞれ「いねて」「かや」と読みます。

蛍火に 天蓋の星 うつり去り【作者】山口誓子【補足】天蓋(てんがい)とは、空の果てのことです。

蛍火の 静かに消ゆる 愁ひかな【作者】高橋淡路女【補足】「愁ひ」の読み方は「うれい」です。

蛍火の 鞠の如しや はね上り【作者】高浜虚子(たかはま きょし)【補足】「鞠の如し」の読み方は「まりのごとし」です。

木々の中で飛び交う蛍の群れ

蛍火や 岸にしづまる 夜の水【作者】炭 太祇(たん たいぎ)

蛍よぶ 昔も今も 同じ唄【作者】星野立子

明滅の いづれ悲しき 蛍かな【作者】川端茅舎

山風の 谷へ火ながき 蛍かな【作者】原 石鼎(はら せきてい)

夕空の 星とわかやぐ 蛍かな【作者】原 石鼎


http://sogyusha.org/ruidai/02_summer/hotaru.html  【蛍、初蛍、ほうたる、蛍火】より

蛍、初蛍、ほうたる、蛍火、昼蛍、夕蛍、朝蛍、蛍狩り、蛍籠、草蛍、蛍売り

 蛍のうち俳句に最も多く詠まれているのがゲンジボタルで、体長は1・5センチほど。川辺に生息し、宵から夜半近くまでは尻を光らせながら盛んに飛ぶが、深夜になると草の中に隠れてしまう。ヘイケボタルは体長0・8センチ前後。池や水田などの止水域に生息する。本州にはこのほかヒメボタル、マドボタルなどがいるが、俳句に詠まれることは稀だ。

 蛍を放し、捕まえることを「蛍狩り」というが、光を愛でることも意味する。

五月雨に火の雨まじる蛍かな   荒木田守武

高野山谷の蛍もひじりかな   松永貞徳

ふく風に居尻定めぬ蛍かな   西山宗因

水辺に付けはなれゆく蛍かな   西山宗因

蛍火をひるは何所(いずこ)に池の水   杉本美津女

(注)美津女は1647年没。最初の女流俳人とされる。

夜の錦うき世は昼の蛍かな   井原西鶴

喜撰法師蛍のうたもよまれけり   山口素堂

昼見れば首筋赤きほたる哉   松尾芭蕉

草の葉を落つるより飛ぶ蛍かな   松尾芭蕉

目に残る吉野を瀬田の蛍かな   松尾芭蕉

己が火を木々の蛍や花の宿   松尾芭蕉

蛍灯の昼は消えつつ柱かな   松尾芭蕉

すつときて袖に入りたる蛍かな   杉山杉風

しののめにほたるの一つ行く白し   杉山杉風

稲舟に休みかねてや飛ぶ蛍   河合曾良

牛部屋に昼見る草のほたるかな   池西言水

蛍火や吹きとばされて鳰(にお)の闇   向井去来

手のうへにかなしく消ゆる蛍かな   向井去来

蓑乾して朝々ふるふ蛍かな   服部嵐雪

飛ぶ蛍暮れてもあれが天王寺   小西来山

桐の葉に光り広げる蛍かな   服部土芳

あはれさは昼を埋火の蛍かな   越智越人

暗闇の筧(かけい)をつたふ蛍かな   森川許六

蚊遣火の烟(けむり)にそるる蛍かな   森川許六

草の戸に我は蓼くふ蛍かな   宝井其角

(注)其角が脱俗・遊蕩の自分を詠んだ句。芭蕉は「朝顔に我は飯食ふ男かな」と応えた。

柴舟にこがれてとまる蛍かな   宝井其角

こいこいといへどほたるが飛んでゆく   上島鬼貫

藪垣や卒塔婆のあひを飛ぶ蛍   上島鬼貫

蕗の葉をへだてて見るや這ふ蛍   野沢凡兆

さびしさや一尺消えてゆく蛍   立花北枝

笛の音や蛍出てちる水の上   立花北枝

田の水を見せて蛍のさかりかな   立花北枝

呼ぶ声は絶てほたるのさかり哉   内藤丈草

ついと来る椽(えん)に蛍や池の露   内藤丈草

持ち寄りて放つ蛍や椽の先   内藤丈草

(注)美濃(岐阜県南部)の光明寺で開かれた句会で。持ち寄った蛍を一斉に放った。

松山や蛍消え込む朝あらし   志太野坡

消えかねて蘆にうたるる蛍かな   志太野坡

窓に寝て雲を楽しむ蛍哉 各務支考

傾城の蚊屋にきのふの蛍かな  滝瓢水

(訳)遊女の蚊屋に昨夜放った蛍がとまっている。客(私?)が遊びで放った蛍だ。

しからるる子の手に光る蛍かな   横井也有

奪ひ合うて弱らかしたる蛍かな   横井也有

とまるものなくて町ゆく蛍かな   横井也有

川ばかり闇はながれて蛍哉   加賀千代女

うつす手に光る蛍や指のまた   炭太祇

飛ぶ蛍あれといはんもひとりかな   炭太祇

学問は尻からぬけるほたる哉   与謝蕪村

狩衣の袖のうら這ふ蛍かな   与謝蕪村

掴みとりて心の闇のほたる哉   与謝蕪村

さし汐に雨の細江のほたる哉   与謝蕪村

洪水を見てかへるさのほたるかな   与謝蕪村

水底の草にこがるる蛍哉   与謝蕪村

ほたる飛ぶや家路にかへる蜆(しじみ)売り   与謝蕪村

辻堂の仏にともすほたる哉   与謝蕪村

淀舟の棹の雫もほたるかな   与謝蕪村

佐保河のほたるに遊ぶ上草履   与謝蕪村

手習ひの顔にくれ行くほたるかな   与謝蕪村

静けさの柱にとまるほたるかな   与謝蕪村

淀舟の棹の雫(しずく)もほたるかな   与謝蕪村

迷ひ子の泣き泣きつかむ蛍かな   堀麦水

追れては月にかくるるほたる哉   大島蓼太