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マスコミ登場の方法  Ownd

期待されているということ

2016.11.24 10:04

きょうはまったくの世間話。よもやま話です。

私が高校を卒業した年、浪人生活が始まりました。

北海道で浪人生活を送るなら、普通は札幌です。

しかし、私は東京に行くことを選びました。

親にも迷惑を掛けたくないというか…

親を超えるために働きながら浪人生活を送ると決めました。

今の時代とは違います。

30数年前、若者が働く場所は限られていて、私は新聞配達を選んだのです。


午前4時に起き、午前4時半には新聞販売店に着き、チラシを入れ、配達に出ます。

その時、私を必ず待っている人がいました。

70歳を超えたご隠居さんです。

和服姿でした。

玄関から出て、私をいつも待っているのです。

あ…私を待っていたのではなく、新聞を待っていたのです。


ご隠居さんは当時には珍しく、大学出だと言っていました。

そして、私が浪人生活で新聞を配達していると知ってから、

玄関先で必ず牛乳を1本、飲むように勧められました。

仁王立ちして「頑張れよ」と。白い髭。怖くて優しい目。背が高かったご隠居さん。

いまでも思い出します。


私は当時、朝刊を多い時で320部、配っていました。

当然、早く配り終えるようにコースを組み立て、不配が無いように頭に入れます。


だけど、そのご隠居さんは毎朝、玄関先で待っています。

ある時から、コースを変えて、そのご隠居さんへの配達を優先しました。

そして必ず牛乳を渡されて「がんばれよ」と。

牛乳が飲みたかった訳ではありません。

その和服姿のご隠居さんが、私の運ぶ新聞を待っている。

それに早く報いるために、ご隠居さんを優先しました。


この考え、今でも心の中にあります。

新聞記者は機械ではありません。情もある。

だから、あなたも取材してくれた記者と心を通わせて、何度も取材してもらえるように、

記者の考えを深く知る必要があるのです。


えこひいき、という言葉でくくるのは簡単ですが、そうじゃない。

人にはすべて心がある。情がある。だから対応も違うのです。


メディアコンサルタント・荒川岳志