Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

トリニティ

鶏の恩恵

2021.04.23 15:00

なんというか

忙しい日々を過ごしている。


もはや

4月も終わりに近づいて



桜の話をしたいたのは

ひと月前で。



寒さと暑さを繰り返しながら


日々が矢のように流れていく。



気がつけば

半袖を着たいような

真夏日和が続く。



草引きが追いつかない。



でも忙しい合間をぬって

土に向かうと


こんがらがっている

頭の中が

30分もすると

すーっと冷えてくる。


考え事をしていたのに


もう流れに任せよう、

すっきりと思える。



いつか草取りの時間を

哲学の時間と書いていた人がいた。



私には

瞑想の時間なのである。



バタバタとする夕飯を作り出す前に

30分、土に向かうと


また落ち着いて作業に戻れる。


いつのまにか

かけがえのない時間になっていた。




いろんな出来事が起きて

記録も追いつかない。




しかし

3月の1番のヒットは

長女の卒業式だった。





熊本ツアーから帰った翌々日

長女は卒業式だった。



2月に京都で会った時から

構想は聞いていた。




でもまさか

こんなにリアルな仮装になるとは。



徹夜して1日で作り上げたらしい。



長女の卒業式の衣装は

鶏の仮装だった。

長女の生き物への愛は

いつも深すぎる。



常に何かを育ててきた。



最近知ったのだが

昨年孵化した鶏の中で

1番虚弱だった鶏を1羽だけ

今でもアパートで飼っているそうな。



驚いた。

またしても大家さんの顔が浮かぶ。




京都で通っている芸術大学には

日本画のモデル用に

天然記念物の鶏を

つがいでいく組か飼っていた。



その鶏の世話は

通常は学生の仕事なのだが、



昨年からの567騒動で

学生が大学に来れない

事態になった。



大学の教授や教務が

文句を言いながら

世話をされていたらしい。



大学の近くに住む長女が

たまたま大学に行くと

鶏の世話のバイトを

教授から仰せつかった。


元々自分でも育てているくらい

鶏が好きなのだ。



世話をしていると


天然記念物の

プライドのお高い鶏たちとも

徐々に

交流が深まっていた。


そして画を描きながら

疲れてくると

鶏小屋で鶏と戯れて

ストレス解消していたそうだ。




そんな折、

再来年には大学の移転があり



この鶏たちは

移転先の駅周辺では

鳴き声などの問題で

連れて行けないことを知る。



貰い手が見つからないと

殺処分になるのだと。




子供の頃から

それはおかしいんじゃないか?

と思うと

すぐに口に出さないと

気が済まない、

気の荒い長女は



いつもどこかで

戦ってきた。




しかし親元を離れて

1人で暮らすうちに



声を荒げても

問題提起をしても



仕方のないこと

感心を持たれないこと



流されていく事柄が

たくさんあることを

経験してきた。


でも仕方ないだけで

終わっていいの?



いつもそこで葛藤が起きる。


そういうことが続いて

苦しんだ

時期もあった。



少しずつ意識に蓋をして

流せるようにもなった。



けれど



鶏のことは

流してはしまえなかった。



しかし

他の学生からしたら

関心の薄い事柄だ。




それで


卒業式での仮装を思いついた。



「お世話になった鶏のことを忘れないで」



長女なりの

せめてものメッセージだった。




自分にできる

最大のアプローチとして



すっかり仲良しになった

天然記念物の鶏を



小脇に抱えて

卒業式に出席した。




卒業式では注目の的だった。




そもそもこの大学の卒業式は

伝統的に仮装する学生がいて

毎年ニュースになっていた。



そんな

仮装大会もどきの

卒業式の中で



鶏の頭を被った長女は


堂々と鶏と共に


卒業生一同の写真にも

教授陣とともに

一列目に座り

写真におさまっていた。




送られてきた

写真を見て



家庭でも弟妹とも

常に戦い、


幼稚園

小学校

中学校

高校と


どこででも

だれどでも

喧嘩をしては



代わりに

頭を下げてきた

母親としては




この平和的な

抗議のアプローチぶりに



長女の成長を

しみじみと

感じていた。




表現者として

正しい在り方ではないか。





動物たちは

時間はかけて

愛情をかければ


いつしか応えてくれる。



長女はその動物たちの

押しつけがましさのない

さりげない


愛情の受け取りかたと

愛情の返しかたに


たくさんのことを

学んだのではないか。






多くの卒業生から

写真を一緒に撮ることを

求められ



少なくとも

同期の卒業生だけは

絵のモデルで

お世話になった

鶏のことを



きっと長女の仮装とともに

思い出して

くれるのではなかろうか。





移転までは

まだ2年弱の時間がある。

 


「なんとか貰い手を捜すつもり。


    だが、

    しかし、


    どうしても見つからない時は

    1組のつがいだけは


    実家で飼ってやってね。」



なんと。



猫のネムちゃんに引き続き

京都から

鶏まで連れて帰ろうと

目論んでいるとは。



「断る!!!

 ネムちゃんが鶏に手を出したら

 どうするの?

 そんな凄惨な場面は見たくない」



「大丈夫、頑丈な小屋を建てれば

 問題ないから。

 それに意外と 

 ニワトリの方が猫より強いのよ。

 敵はタヌキとかね」


「小屋にはあの辺りが適してるかな」


とまで、言い出す。





あああ。


深いため息をつく。



そのうち

我が家の庭に


ブレーメンの音学隊が

そろうのではなかろうか。




頭をかかえながらも



古い日本家屋の

高い屋根の上で

天然記念物の鶏が


「コケコッコー」


と、雄叫びをあげる姿を

想像している自分が



ちょっと


恐ろしかった。



平安京をバックに

長女の飼ってるニワトリと共に。。