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コロナで加速したテレワークによる新しい仕事と住まいの形

2021.04.12 00:27

(株)北島建築設計事務所

北島俊嗣

感染症と社会の意識

2020年初頭から始まった新型コロナウィルス感染拡大は未だに終息を見せていませんが、私達はパンデミックや大災害(台風・地震)や戦争がいつでもどこででも起こるということを認識するようになりました。それらへの備えには今までの対策準備では不足していることも体験し、自分で考えて柔軟に順応して強い災害に対応出来る準備をしておかないとならないことも分かったところです。

変化する習慣と価値感

自然災害などとは別に、デジタル・インターネットが普及したことで、伝達速度と価値観が変容しています。不要なもの(これって本当に必要か?)と、新しく必要なもの(こっちの方法がより便利だが?)などの感覚が現実になり始めて来たと思います。(河野太郎 行政改革担当大臣が推めた役所間文書の印鑑撤廃は記憶に新しいところです)

この変化が今回のパンデミックにより一挙に始まり加速したと考えられます。

人と人との直接対話や集合を避けること(3密の回避)が推奨されて、それを支えるインターネットの技術(テレビ会議による会話やテレワークの業務)が本格化して、部分的には通勤時間がなくなり、ネットにさえつながればどこででも働けることが可能になってしまいました。

つまり、都心にオフィスを構え、そこに満員電車に乗って集合する必要がなくなったと同時に、通勤時間が無くなり、人の満足感も変化し始めました。

都会で他者の言動と視線を気にしつつ時間を費やし、高額商品を所有する満足感から、山河や草花が身近にあり、静かな環境で家族と過ごすことが幸福であることに気付き始めた年になりました。

今後の社会の潮流がどうなるかは全く不明ですが、少なくとも歴史から将来を予測することは出来ます。

それは、例えば産業革命が起こった際に、それ以前の技術や習慣のままだった人々がどうなったか を見据え、「今のままで十分だ」と固執することなく、順応出来る状況にしておくことは大事なことであると考えます。

就寝離別から合体へ

前置きが長くなりましたが、建築の世界の変化は社会の潮流より一歩遅くなることが多いので、急激な変化は未だ起こっていないように見えます。しかし、戦後に起こった「就寝分離」(住まいと働く場所を分ける)の動向から、一部では「就寝合体」の動きになることは明らかです。

テレワーク・リモートワーク・書斎

そのような状況のなか、新たな住まいを建てられた際に、ご自宅でデスクワークが行えるようにしたいご要望をいただいたもので、リビングなどの一角にデスクを造り付けで設置された事例をご紹介します。

サテライトテレワーク自宅勤務用書斎事務机を木造3階建住宅のリビング吹き抜けに面して設ける

詳細は こちらを ご覧ください

自宅で仕事をする

東京都心の3階建て木造住宅のお客様は、お勤めが外資系企業で、お仕事を自宅でされることが多く、住まいのどこかにワークスペース=造り付けのデスクや本棚を設けられた書斎的な場所を設けたいとのご希望でした。

吹き抜けリビングに面したワークスペース

住まいの間取りプランは間仕切り壁を一切設けない方針で、ワークスペースはリビングの吹き抜けに面した3階に配置することになりました。

関連記事: 「夫婦二人で間仕切のない家」

幅の広いワークスペース

吹き抜けに面したワークスペースは手すりの代わりに本棚を巡らせて、幅の広いワークスペースになりました。

二世帯住宅にテレワーク用事務机仕事スペースを設ける

詳細は こちらを ご覧ください

自宅で仕事をするテレワーク

横浜の二世帯住宅のご主人様はお仕事をご自宅でされています。

お住まいの建替えでも業態は変わらないとお聞きしました。

ご主人様のお仕事は、パソコンで行うデスクワークで、それまでは 床に座り座卓で業務をされていました。

座式から椅子式に変わったリビングにデスク板を造り付ける

既存のお住まいでは床に座って座卓でお仕事をされていて、建て替えられるお住まいでは、椅子に座って作業をされたいご希望をいただきました。

さらに仕事場はリビングに面した部分に設けて個室にはしないご希望もいただきました。

リビングの壁面の一面に、デスクとなる厚板を設置しました。使い方を絞らないで、壁面の長さ一面のテレワークスペースになりました。

和風住宅のリビングにテレワーク用事務スペースを設ける

詳細は こちらを ご覧ください

横浜の和風住宅では、週の半分以上をご自宅で勤務なさいます。

既存のお住まいにおいては居間で事務作業をされていましたが、建て替えられるお住まいでは、椅子に座って事務をされたいご希望でした。

リビングでデスクワーク

そこでリビングの一部で事務作業ができるテレワークスペースを設けることになりました。

食卓とは別のスペースで事務作業を行う

食卓テーブルとは別に、造り付けのデスクを設けて、電話、パソコン、プリンター等の機器を置き、いつからでも事務作業が始められるような設えにしました。

電源コンセント設備と壁面収納

電源コンセントやネット通信の引き込みケーブルはデスク下に設置して、ケーブルはデスクに開けた孔を通して使います。造り付けたデスクはシンプルな板で、使い勝手を固定せず、どこにでもパソコンやプリンターを配置出来るようにしました。デスク下には引き出しや収納扉を設けました。

机の上の壁面には収納棚が取付けられました。地震の揺れに棚の中身が揺れ落ちてこない金物を設けました。

賃貸アパートでテレワークをする

詳細は こちらを ご覧ください

中目黒の木造2階建アパートでは、大家様は入居者様がパソコンでテレワークをすることを想定されました。

吹き抜けのある容積がたっぷりのアパート

部屋は天井を貼らずに屋根の形に沿って開放して吹き抜けの空間になっています。

テレワーク用のデスク造作を設ける

部屋の1部分を外側に突き出して、造り付けのデスクを設けました。小窓を設けて明かり取りにしました。

ワンルームを可動間仕切りで区切る

面積が広い部屋なので、テレワークをする部屋とキッチン食卓が分けられるように部屋を分割する引き戸型の可動間仕切りを設けました。

最後に

勤務する会社や所属する団体の業態よって一様ではないにせよ、大きな変化が起こる際には既存の生活習慣や価値基準を捨てられる意識と変容・順応出来る状況に個人の環境を整えておくことが重要と考えています。