国際部と国際研究会
ポートインク前を流れる川(本川)沿いの桜もほぼ完全に散り、遊歩道も落ち着いた雰囲気になりました。
僕は今、有難いことに、日税連(日本税理士会連合会)の国際部の委員と、同じく日税連の国際税務情報研究会の研究員の役目をもらっています。
国際部というのは、諸外国の税務専門家団体との情報交換や国際交流等をメインに活動してますが、最大の役目は、年1回主に海外で行われるAOTCA(アジア・オセアニア・タックスコンサルタント協会)の国際会議への出席です。
2019年の会議は韓国の釜山で行われ、僕もプレゼンターとして、日本の税理士制度と税務行政について発表させてもらいました。とてもよい経験でした。
去年、インドネシアのバリ島で開催される予定だったAOTCA国際会議がコロナで延期されましたが、今年9月の開催予定とのことで楽しみにしてました。ところが、今年もコロナが収まらずまた延期になったと聞かされて落胆しています。
国際税務情報研究会では日税連会長の諮問をうけて諸外国の税制などを研究していますが、現在は、いくつかの先進国で導入されているMDR(義務的情報開示制度)の情報収集をやっていて、僕はイギリスを担当しています。
MDRというのは、節税スキームを考案して主に富裕層に販売するプロモーターやそれを利用した納税者に、そのスキームの内容を税務当局に開示する義務を負わせる制度です。開示義務に違反した場合は罰金の対象になるという、かなり強権色の強い制度にみえます。
税務当局にとっては、早期にスキームの内容や利用者を把握して、調査の選定や税法改正の立案によって、極端な節税(租税回避)が広まることを防ぐために役立つとされています。
納税者にとってはあまり利点がないように見えますが、イギリスでは、スキームを開示したうえでの申告は、合理的注意を払った申告ということで、一定期間が経過した後における追加課税処分を受けにくくなったり、課税処分を受けたとしても加算税(penalty)が免除されやすくなるという点で有利となっています。
日本でもこのMDRの導入についての検討が始まっているようですが、プロモーターや納税者に開示義務を課すのであれば、その開示による何らかの利点も同時に提供する制度でないとバランスを欠くと僕は思います。
今後さらに研究を深めるつもりです。