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ZIPANG-5 TOKIO 2020 アート市場活性化で 文化と経済の好循環〜「文化芸術立国」の実現に向けて〜【文化庁】

2021.04.13 01:15

岡本太郎画伯に聞く

戦ってこそ、芸術は熱く生きる

昭和61年11月東京・自宅兼アトリエにて
「芸術は、爆発だ!」まさに氏のいのちは、噴火し続ける活火山のようだった・・・


池田満寿夫画伯に聞く

芸術とは、答えの無い世界で答えを探す、無限の可能性

昭和63年4月、熱海・自宅兼アトリエにて
「自分を定義しない。ひとつのスタイルに執着しない」
版画家、陶芸家、工芸家、作家、映画監督…芸術を多彩な才能で表現・・・


グラフィックデザイナー 亀倉雄作氏に聞く

アートとの違い…デザインの本質は「無記名性」ではないかと思う

昭和63年5月、グラフィックデザイナー 亀倉雄作氏 東京・デザインオフィスにて
「グラフィック的思想で環境を見る」
前回の東京オリンピックポスター、NTTのCI・ロゴマークデザイン・・・


北海道・稚内アートフェスティバル会場


日本最北のまち稚内で日本最大級のアートフェスティバル開催!


明日の才能を発掘・応援する 「TOKYO MIDTOWN AWARD」


今年で14回目となる「TOKYO MIDTOWN AWARD」は、東京ミッドタウンが「“JAPAN VALUE(新しい日本の価値・感性・才能)”を創造・結集し、世界に発信し続ける街」をコンセプトに、才能あるアーティストやデザイナーとの出会い、応援、コラボレーションを目指して、アートとデザインの2部門で開催するコンペティションです。


ZIPANG-5 TOKIO 2020
第21回 JQA地球環境世界児童画コンテスト作品募集&優秀作品展開催のご案内

https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/12887216


一般財団法人 日本品質保証機構(東京都千代田区、理事長:小林 憲明、略称:JQA)と国際認証機関ネットワーク(スイス・ジュネーブ、会長:アレクサンドル・ストイチトイウ、略称:IQNet)が主催し、UNICEF東京事務所(東京都渋谷区)の後援による「JQA地球環境世界児童画コンテスト」は、1999年より開催しており、現在21回目の作品を募集しています。



「文化芸術立国」の実現に向けて【文化庁】

第 1 章 アート市場活性化ワーキンググループ設置の背景及び現状認識


1.アート市場活性化にかかるこれまでの動き

近年、アート(文化芸術基本法第 8 条における「美術」を中心に、「写真」や「メディ ア芸術」の一部を含む)の社会的・経済的な価値について、官民問わず広く議論されていた。 その結果、アート市場の活性化を進めることが、社会的にも経済的にも有益であることが一般に理解されつつある。


そこで、我が国におけるアートの市場規模の拡大・活性化に向けた課題を整理し、アート活動を行う者やその関係者(以下、「アーティスト等」という)の活動を活性化させ、文化芸術と経済の好循環を達成することが必要との結論を得た。


その結果、文化芸術立国を目指すための政策等を検討するため、アート市場活性化ワーキンググループ(以下、「本WG」という)が設置された。


アート市場活性化の議論は、平成26(2014)年にさかのぼり、最初に「現代美術の海外発信に関する検討会」(座長:南條史生森美術館館長(当時))を設置。その中で、「論点の整理」を行ったところ、特に「作品の購入促進」が、際立って言及される。


その後、平成29(2017)年に策定された文化経済戦略の6 つの重点戦略のうちの一つ、「5.周辺領域への波及,新たな需要・付加価値の創出」が議論された。


その中に「国際的な芸術祭やコンクールの開催,アートフェアの拡大,世界的なアーティストやキュレーター,ギャラリストの誘致等,我が国の文化芸術資源や文化芸術活動とアート市場が共に活性化し,持続的に成長・発展していくための新たな取組を推進する。」と記載されている。すなわち、アート市場の活性化については国家戦略として取り組むことが明記されていた。


文化庁では、この流れをさらに発展させるべく、文化審議会文化政策部会の中に、本WGを設置し、我が国におけるアート市場活性化の今後の方針について議論することとなった。


2.我が国アート市場と世界における位置付けの現状

アート・バーゼルと UBS の調査によると、2019 年における世界のアート市場は7兆円程度であり、近年同水準で推移している1。


一方、アート東京と一般社団法人芸術と創造の調査によると、我が国のアート市場規模は、推計 2,580 億円程度で世界の取引額に占める割合は3.6%程度である2。


これは、経済規模と100万ドル以上の資産を持つ富裕者の数が世界3位であるにもかかわらず3、アートの市場規模は相対的に低い状況にとどまっていることを意味する。


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 1 The Art Market 2020 (Art Basel & UBS), 2020 年は COVID-19の影響で対2019年比22%減少の5.6 兆円程度(The Art Market 2021, ART Basel & UBS)

2 The Art Market 2020 (Art Basel & UBS),日本のアート産業に関する市場調査2019 (アート東京・芸術と創造)、2020 年は COVID-19 の影響により対 2019 年比 8.4%減少の 2,363 億円(日本のアート産業に関する市場調査2020、アート東京・芸術と創造)

3 Global Wealth Report 2020 (Credit Suisse) 1000 万ドル以上の資産を持つ富裕層の数では日本は 8 位であることから、順位としては妥当という見方もある。


同様に、世界のアートフェアにおけるアート作品等の販売総額は 1.75 兆円なのに対して、我が国で最も規模の大きいアートフェアであるアートフェア東京の販売額は30億円弱にとどまっている。また、アートフェア東京には、ペロタンを除いて、所謂「メガギャラリー(年間売上1000 万ドル超)」は出展していない。


このような状況は、我が5国におけるコレクターの少なさを表しており、2020 年の「TOP COLLECTORS 200」において日本人は5人4しかランクインしておらず5、アート市場における日本の購買力は相対的に低いことがわかっている。


アート市場の相対的な小ささは、世界のアート界における我が国の存在感にも影響を与えていると考えられる。ArtReviewが毎年発表している、世界のアート界において影響力のある100 人を選出する「Power100」において、日本人は 2020年に1人もランクインしていない6(参考:表1)。


近年の状況を見ても、日本からランクインしているのは、草間彌生氏、長谷川祐子氏など極めて限られており、ギャラリストやコレクターなど、アート市場に近い種別からの選出者はいない状況である。


 3.国際的なアートの位置付けと我が国におけるアートの新たな価値

VUCA7とも言われる不確実な時代を迎え、企業における活力、新たな産業の創成など、創造性の源泉として、世界的に、「アート/アーティスト」への関心が高まっている。


実際、アートの経済的波及効果に関する研究や政策への取り込みは、他国がすでに先行しており、米国、英国、シンガポールなどでは、相続税の猶予制度や公的な鑑定士制度を整えるなど、アート市場を活性化させる方策を積極的に講じている8。


我が国は、既に成熟社会の段階に入り、持続的な発展のためには、教養、芸術、観光などの新産業が必要となっている。同時に、少子高齢化社会が到来し、人口増加局面から人口減少局面に転じたことに伴い、今後は、「土地(不動産)」の資産価値低迷が予想されることから、これに代わる新たな「資産」を開発し、持続的な経済循環を維持していくことが必要な段階に入ってきていると考えられる。


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4 石川康晴氏、大林剛郎氏、佐藤辰美氏、前澤友作氏、柳井正氏の 5 名

5 Artnews Top 200 Collectors

6 ArtReview Power100 2020

7 VUCA:Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の略

8平成29年度「我が国の現代美術の海外発信事業」美術品等の寄附税制等に関する調査研究事業(文化庁,2018)


このような状況を踏まえ、文化庁では、アートを新たな産業、新たな資産として捉えるべく、その社会的・経済的な効用について調査を実施し、アートは文化産業、ク リエイティブ産業、さらには産業全体の核になりうるものであり、他の産業への波及 効果があることを明らかにしてきた9。


20世紀後半から、一定期間の生産や支出による「フロー」から算出される国民所得(national income)中心の経済から、過去から引き継がれた資産や資本に着目す る「ストック」をもとにする国富(national wealth)を重視する経済に変化してきている。


しかし、我が国における国富統計において、無形資産や有形資産の中でも文化財やアートがストックとして十分反映されていないように、アートの資産価値は未だ、十分に認識されていない状況のままである10。


4.日本におけるアートを取り巻く現状

資産形成におけるアート作品の占める割合は、資産全体の1%程度と言われているが、日本はその域に至っていない。また、我が国はアート・コレクターの絶対数が少ない状況にとどまっている。これらの事実は、日本において活動するアーティストを支える経済的な基盤の脆弱性の一因となっている。


さらに、日本の美術館の活動が、調査に基づくコレクション活動と展覧会活動による新たな価値評価の形成を行う、という本来的な活動よりも、海外において既に評価され、価値付けられた作品等による展覧会の開催を主体としてきたことから、有望な若手アーティストの発掘や、国際的に活躍する学芸員などのアートのプロフェッショナルが育つ環境として整備されてこなかったと考えられる。


加えて、文化庁のこれまでの美術振興政策についても、日本で生み出された美術的・学術的価値を国際的な文脈で発信すべきところ、欧米における評価の受け入れが中心のまま進められてきており、日本独自の価値を国際的な文脈で発信することが十分できていなかったと言える。


その結果として、日本のアートの国際発信力が弱く(例えば、英語文献が質量ともに極めて少ない)、日本国内から世界の美術史に影響を与えるような潮流が生まれづらい状況が続いている。


実際、「ARTFACTS」における「アーティスト・トップ 100」において、日本人作家は草間彌生氏、オノ・ヨーコ氏、杉本博司氏の 3 名のみ11であり、国際展のディレクターに選任されたり、海外の有力美術館でシニア・キュレーターを務められる人材も数えるほどしかいない状況である。


このような状況となっている要因の一つとして、アートの社会的な理解が進んでい ないことも挙げられる。我が国において、生涯にアートを購入する人の割合は


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9 平成27年度文化産業の経済規模及び経済波及効果に関する調査研究事業(文化庁,2016)

10 平成30年度文化庁シンポジウム「芸術資産『評価』による次世代への継承─美術館に期待される役割」(2018)における柴山桂太京都大学准教授の発表資料より。

11 Artfacts Top 100 Artists Ranking


16.0%12であり、1年に1回以上美術を鑑賞する人の割合は23.6%13である。つまり、大多数の国民にとって、アートは関係性の低いものとなってしまっている。そのため、アートへの関心を高めると同時に、アートに関心がない層への理解を深めることが重要であり、効果的な政策の導入等により、アート市場のみならず、アート活動を活性化させる好循環を生み出していく必要がある
(参考:図 1)。



5.アート市場活性化により期待される効果

アート市場の活性化により期待される効果として、アーティストの社会的・国際的な評価を高め、国内外での評価も高まることで、アーティストの活動基盤の充実につながり、創作活動がさらに活発になる、というアートを取り巻く体系(エコシステム)の好循環の生成が挙げられる。


アート市場の活性化は、アーティスト活動の活性化につながり、ギャラリーを中心とした経済的価値を形成するプレイヤーの活性化が期待される。


アートを取り巻く経済的な状況が好転することにより、美術館をはじめとする美術的・学術的価値付けを行うプレイヤーの活動のさらなる活発化が期待されると同時に、アートに関わる人の増加がアートの社会的な理解の向上にもつながる。


つまり、アート市場の活性化に取り組むことにより、アートを取り巻く環境が改善・強化され、日本国内における活動が活発になることが期待される。


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12 日本のアート産業に関する市場調査 2019 (アート東京,芸術と創造)

13 令和元年度文化に関する世論調査(文化庁,2020)


第 2 章 アート市場活性化等、我が国におけるアートの振興に向けた取り組み

我が国の現代アートについての初めての議論は、平成26(2014)年に行った「現代美術の海外発信に関する検討会」であり、「論点の整理」として課題や問題点が公表された。


その後、アート市場活性化の方策として、平成27(2015)年に、国税庁によって美術品に係る減価償却適用範囲の拡大がなされ、美術品にかかる減価償却の範囲が20万円未満から100万円未満へと拡大された。


税の関係では、税制改正大綱において、平成29(2017)年に美術品に係る相続税の納税猶予制度の創設が認められ、令和元(2019)年に登録美術品制度の対象に現存作家の作品のうち一定のものの追加、令和2(2020)年には、相続税納税猶予の対象に一定の現代アート作品の追加が認められた。これらにより、相続時における美術品に関する税制優遇の仕組みが一定程度整備された。


国内におけるアートの国際的な取引を活発化する方策としては、財務省関税局により、令和2(2020)年に国際的なオークションやアートフェアへの保税地域の運用が明確化され、令和 3(2021)年には、保税地域運用の適用範囲が国際的なギャラリーにまで拡げられた。


文化と経済の好循環の実現を目指し、

平成 29(2017)年に内閣官房と文化庁によって策定された文化経済戦略では、重点戦略のひとつにアート市場の活性化が明記された。


平成30(2018)年には、アートに係るインフラ整備や日本のアートの国際的な評価を高めていくための取組みを推進する「文化庁アートプラットフォーム事業」を開始。


さらに令和2(2020)年には、独立行政法人国立美術館にアート・コミュニケーション推進センター(仮称)設置の予算措置が決定され、我が国におけるアート振興の推進力となることが期待されている(表 2)。



第 3 章 我が国のアート市場活性化にかかる方向性

アート市場の活性化により目指すべきことは、アーティストをとりまく環境を改善し、新しい創造性と多様性に富んだ作品が持続的に生み出されるとともに、アート作品の美術的・学術的価値と市場における価値(価格)がかけ離れることなくことなく「車の両輪」となって発展することにより、安定的な市場の形成が行われることにある。


このためには、アートの本質的・社会的・経済的価値14をバランスよく発展させること により、アーティストの社会的・国際的な評価を高め、そのことにより市場が活性化 し、アーティスト活動がさらに活発になる、というアートを取り巻く体系(エコシステム) の持続的な好循環を生み出すとともに、我が国が国際的なアートのエコシステムの一拠点となることが必要である。


ただし、その際は日本がこれまで育んできたアートのエコシステム(美術館、公募展、顕彰制度等)にも十分配慮することが必要である。


1.本質的価値の向上

(1) 近現代美術の美術的・学術的価値の向上

アート作品の美術的・学術的価値と市場における価値(価格)は「車の両輪」である。しかし、現状は、特に近現代のアート作品において、評価が定まっていないものが多く、投機的な価格付けが発生しやすい環境となっている。


美術的・学術的な価値付けの主体は、いまだ欧米が中心であるが、近年では中国が世界最大級の近現代美術館と言われる「M+(エム・プラス、香港)」の設置を構想しており、世界各国からコレクション(作品購入)を開始するなど影響力を持ち始めている。


このような世界のアート動向を視野に入れつつ、国際的な文脈における価値付けにおいて、日本のアートが評価されることが、長期的には我が国におけるアートの持続的な発展につながる。


そのためには、美術館の学芸員が長期的な視点で調査研究を可能とする体制作りが必要であり、学芸員の能力開発とともに、デジタルや教育普及等について、専門性の高い人材を配置するなど、美術館において多様な専門性を持った人材を配置・活用する取組も検討する必要がある。


また、相対的に発信力の弱い日本のギャラリーの発信力を強化するような取り組みも必要である。あわせて、我が国のアーティストの美術的・学術的価値を評価している日本芸術院など、関連する諸制度等について、こうした国際的な文脈で再検証する必要があるのではないか。


(2)ナショナル・コレクションの形成

ナショナル・コレクションは、国内の美術館が中堅若手を中心としたアート作品を


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14 「文化芸術推進基本計画-文化芸術の「多様な価値」を活かして,未来をつくる-(第 1 期)(平成30 年3 月6日閣議決定)」において、文化芸術の本質的価値とは、人間の創造性、感性を育むもの、社会的価値とは人間相互の理解を促進もの、経済的価値とは付加価値を生み出し高い経済性を実現するもの、とされる。本文中、本質的価値の議論で、特に美術的・学術的価値について言及している際は、美術的・学術的価値と記載している。


同時代に収集することによって形成され、将来的には、国内の美術館において、国際的に影響を持つ優れたコレクションを保有することができるようになる。また、将来において、日本の歴史上も重要な価値を持つことになるようなアート作品はナショナル・コレクションとして、国内で保持する必要があると考えられる。


2014 年の「現代美術の海外発信に関する検討会」による「論点の整理」では、価値付けやコレクション形成の場として、国による現代アートの中核的な美術館の設立について、提言されていた。


(3)アート・コミュニケーション推進センター(仮称)の拡充

独立行政法人国立美術館に設置予定の「アート・コミュニケーション推進センター (仮称)」では、情報のハブ/共同収蔵庫/共同修復拠点/翻訳拠点等の機能を備え、我が国アートの国際的な情報発信の拠点整備、国内美術館への支援体制の強化等を進めるべきである。


さらに、アートと人々を結びつけるために、アートの社会的価値についての説明、具体的な理論、方法論を開発する機能も必要である。その際、アートの現場を巻き込むことが重要であり、学芸員を含め、アートにかかわる人材の海外派遣や交流など、人材の国際化につながる育成等の取り組みが必要である。


2.社会的価値の向上

(1)アートの「社会化」

アートの活性化のためには、アートがもたらす社会的・経済的な外部波及効果を明らかにし、アートに関心がない層からの必要性の理解が必要である。


我が国のアートに対する現状の社会的な評価を鑑みると、過去の調査では、中学生の子を持つ保護者にとって、美術が「必要」と考える割合は 48.0%と全体の最下位となっている(第1位は国語の 96.6%)15 。


また、平成10(1998)年の学習指導要領の改訂では、完全学校週5日制の実施や「総合的な学習の時間」の創設などによって、各教科の授業時数が削減されたが、小学校の図画工作と中学校の美術の授業時数も削減された。


これらの結果は、アートがアート以外にもたらす社会的な効果が多くの人に認識されていないことの表れであると考えられる。


これまで我が国においては、地域のアート・プロジェクトが周辺にもたらす経済的効果やコミュニティの活性化等の社会的効果の事例を積み上げてきた。


アート・プロジェクトに社会の側から期待される役割として、地域活性化、産業振興などの経済的な効果や街づくり、コミュニティ形成、教育や社会包摂などが挙げられている16。


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15深谷昌志(1999)「中学の勉強は必要なのか~親たちの意見」モノグラフ・中学生の世界 Vol62,2-117 ページ,ベネッセ教育総合研究所.

16熊倉純子(監修),菊地拓児,長津結一郎(編集)(2014)『アートプロジェクト―芸術と共創する社会』 水曜社.


例えば直島の事例では、民間企業を中心とした美術館やアート・プロジェクトが中心となって、地域へのインバウンドをはじめとする観光客の集客につなげるだけではなく、地域コミュニティにおける住人の考え方も大きく変えたと言える17。


同様に、越後妻有(えちごつまり)においては、アートを媒介として過疎化が進んだ地域のつながりを活性化させたり、廃校をアートの力でよみがえらせるなど18 、越後妻有の活性化になくてはならないものとなっている。


また、新たな物事を作り出す「アート思考」という考え方がビジネスの世界を中心に注目を集めている。AIが人間の能力を超えるシンギュラリティ19が 2045年には起こるとの指摘もある中、これまでのような知識中心の教育では身に着けることが難しい、新たなものを作り出す「創造性」は、DX化が進んだ社会において、さらに求められる能力となる。


実際、初等中等教育段階においては、芸術的な感性も生かし心豊かな生活や社会的な価値を創り出す創造性などの現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の育成等を図ることが重要であることから、従前のSTEM教育(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に、デザインや感性等を含むArtsが加わったSTEAM教育が推進されている20。


そのような能力を身に着けることができる可能性があるアート教育は、個人の能力開発という点においても、今後、重要な地位を占めることが予想され、推進していくことが我が国の競争力を高める上でも重要であると考えられる。


今後は、これらの知見を蓄積すると同時に積極的に発信し、アートファンでない人にアートの意義・必要性を納得してもらい、「アートには関心はないが、社会的には意義がある」という意識の醸成が重要であると考えられる。


その際、UNESCO等で提唱されているとおり、SDGsの17のゴールと文化芸術を結びつける視点21がアートを社会に開くきっかけになると考えられる。


(2)アートとウェルビーイング

アートとウェルビーイングや健康の関係については、欧米ですでに知見が蓄積されつつある。例えば、英国で導入されている医者が精神的・身体的な障害がある人々等に対して、美術館等でのアート鑑賞やワークショップ等のアート体験などを処方する「アートの処方(Arts on Prescription)」は、患者のメンタルヘルスの改善への効果が明確になっており、調査によると、かかりつけ医への訪問回数を37%、病院へ


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17 秋元雄史(2018)『直島誕生―過疎化する島で目撃した「現代アートの挑戦」全記録』 ディスカヴァー・トゥエン ティワン.

18 北川フラム(2015) 『ひらく美術―地域と人間のつながりを取り戻す』 ちくま新書.等参照。

19 レイ・カーツワイル氏が、著書『The Singularity Is Near : When Humans Transcend Biology(邦題:ポスト・ヒューマン誕生)』(2005)において主張した、AIなどの技術が自ら人間より賢い能力を生み出すことが可能になる地点。

20日本教育新聞「世界で取り組みが進むSTEAM教育、理数系と芸術の融合とは」(2019 年5 月29 日)

21 UNESCO “Culture: at the heart of SDGs,


の来院回数を27%削減し、1年間で利用者1人当たり216 ポンド(約 32,600 円)の医療費の削減効果があるという22。


同様に、アートへの参加は人々の健康とウェルビーイングに好影響があることもエビデンスが蓄積されてきており、英国における「ア ートへの参加プログラム」への参加者の82%が幸福を感じ、79%が以前よりも健康になったと感じている。


財政面においても、「アートへの参加プログラム」への1ポン ドの投資に対して、将来の医療費等の政府の財務負担を13ポンド減らす効果があるという。


また、調査からは、教育面でも幼少期のアート活動への参加が、認知能力、 言語能力及び社会的・感情的な成長の改善に効果があることがわかっている23。加えて、我が国においても、政府を含め幅広い範囲で、障害がある人々のアート活動を支援する取組も行っている24。


これらのアートの効用の積極的な発信が、アートに関心がない人からの理解にもつながると考えられる。


(3)鑑賞教育の充実

我が国において、アートに関心がない層が多いことの原因として、学校教育における美術教育の在り方に課題があるのではないかという指摘がある。


現状の美術教育は、創作に重点が置かれ、鑑賞教育にかかる時間が限られている。アートは高尚であるという考えを持つ人や幼児や小学校段階で美術嫌いになる人は多い。


小学校の図画工作や中学校の美術の学習指導要領では、美術館等と連携し、実物の美術作品を直接鑑賞する機会や、作家や学芸員と連携した多様な鑑賞体験の場を設定することにより、鑑賞活動を充実させ、生活や社会の中の美術や美術文化と豊かに関わる資質・能力の育成を目指しており、このような趣旨をふまえた鑑賞教育の充実が必要である。


また、成人後のプログラムをどのように作っていくのかという視点も大事である。さらに、すべての児童生徒にPCが配備されたことを踏まえ、デジタル技術を用いてオンラインで質の高い作品を日本各地の小中学校の鑑賞できる環境を整備すべきではないか。


また、幼少期だけでなく、大学生等、若者の美術館等への入館料を減免するなど、より早期のアートへのアクセスを確保することにより、アートファンを増加していくことが必要である。


3.経済的価値の向上

(1)アートへの「投資」に対する考え方 


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22 All-Party Parliamentary Group on Arts, Health and Wellbeing (2017) “Inquiry Report, Creative Health: The Arts for Health and Wellbeing” 

23 All-Party Parliamentary Group on Arts, Health and Wellbeing (2017) “Inquiry Report, Creative Health: The Arts for Health and Wellbeing”

24文部科学省・厚生労働省では、「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律(平成30年法律第47号)」 に基づき、平成31(2019)年に「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」を策定し、障害者のアート活動への支援を行っている。


これまでに蓄積してきた芸術資産を「国富」として認識し、長期的な展望のもとで積極的に活用するとともに、次世代のための資産を増やしていくことが重要である。


アート作品は、日常空間に取り入れることで日々の生活に潤いと楽しみをもたらす「使用価値」と金融商品としての「交換価値」をあわせ持っている。


アート市場の健全で持続的な発展のためには、アート作品を居住空間に飾るなど、「使用価値」を感じてくれる人を増加させ、長期的な「投資」を増やすことが重要である。アート作品を「投資」の選択肢と考えた場合、短期保有を前提とした投機のみを目的としたアート作品購入の割合が高まると価格が安定しなくなる。


現在、ギャラリーの多くが転売目的の購入者をリスト化し、投機的な購入の抑制に努めているように、投機だけを目的としたアート作品購入者でなく、長期保有を前提に、アーティストやアート作品を一緒に育てていく「サポーター」が参入しやすい仕組みが必要である。


そのためには、アートの金銭的価値だけでなく、美術的・学術的価値も一緒に議論し、アート作品を購入しやすい仕組みを考えていくことが、投機的なプレイヤーを排除することにつながる。


アート作品の購入を投機だけの目的で勧誘するような販売方法は、長期的にはアート作品価格の不安定化につながるなど、アート市場の持続的な発展にとってだけでなく、新たなアート作品の購入者がアートに対して負のイメージをもつことにもなりかねず、注意が必要である。


(2)アート購入者の裾野の拡大

我が国のアート市場の活性化のためには、より多くの国民がアートに対して投資(作品購入等)を行い、取引が増大することが必要である。


一方、アート作品の購入と美術館への訪問の関係性は低く、単純な美術ファンの拡大だけでは、アート購入者の増加にはつながらない可能性が高いため、アートファンにアート作品の購入を促していく政策が必要となる。


自宅にアート作品が飾られていたことが将来のアート作品購入につながる可能性があることが過去の調査から分かってきているが、ギャラリーや百貨店の収益構造は高額購入者に多くを依存しており、自宅に飾るアート作品を購入するような少額購入者を開拓するインセンティブは小さい。


そのため、長期的には購入者全体に占める割合の高い少額購入者を支援する取り組みが効果的と考えられる。


一方、日本においては、自宅にアート作品を飾るスペースが少ないなどの住宅事情を踏まえると、短期的には、個人だけでなく、企業等による購入を増加させるための取り組みも重要である。


あわせて、アート作品の流通を担っている画廊やギャラリー等の事業規模が、流通が盛んな他国と比べて小さい傾向にあり、国際発信力やアート購入者の裾野の拡大のためには、事業構造の強化が重要である。


(3)公的な鑑定評価の仕組みの導入

誰もがアートを購入しやすい環境を作るためには、アートの価格が客観的に分かりにくいこと、寄附や相続の際の価格根拠や算定の仕組みが不透明であるなどの課題を解決することが重要である。


すでに多くのアート作品が国民の財産として流通しているが、「フローからストックへ」という世界的な潮流の中で、アート作品の時価をどのように算定していくのか議論が必要なタイミングにきている。


時価評価は会計の世界ではグローバルスタンダードである。不動産価格の評価においては、鑑定士制度が整備されているように、公的な鑑定評価の仕組みを導入することにより、時価を評価する仕組みを作り、アート作品を国民の財産として可視化することが、公平で透明な市場形成につながると考えられる。


また、アート市場活性化のためには、より多くの事業者や買い手の参入が必要である。透明性を高めると同時に、購入の後押しとなるような優遇措置等(予算、税制等)を拡充し、より多くの人が参入しやすい環境を整えることが重要である。


(4)アート DX の推進

ブロックチェーン技術はすでにアートの世界にも進出しており、大手オークションハウスが導入を進め、日本発のサービスも開始されている。ブロックチェーン技術の導入により、所有者の情報を秘匿したまま、作品の情報が確認できる。


そのため、インターネットを介したアート作品の売買が活発化する中で、真贋を見極めるためにもますますその実用性は高まると考えられる。また、ブロックチェーン技術を使って、売買されたアート作品の収益がアーティストに還元される仕組みも始まっており25、ア ートの取引が直接的にアーティストの活動の活性化につながることが期待される26。


さらに、美術館・博物館の所蔵品にブロックチェーン技術を活用したICタグ等を設置することにより、収集・保管・展示・修理といった美術館・博物館内の日常業務だけでなく、貸与など複数館をまたいだ業務においても、情報共有が容易になり、業務の効率化の面でも、安全管理や環境保全の面においても重要な役割を果たすことが期待される。


4.アートの国際的な拠点化

(1)美術的・学術的価値付けの拠点としての国際化

我が国がアートの国際的な拠点となることは、アートの美術的・学術的価値の拠点という意味において重要である。グローバル化が進むアート市場において、我が国のアート・エコシステムの好循環を


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25 AIreVoice インタビュー記事より

26 アート作品の転売による対価の一部をアーティストに還元する仕組みは、フランスをはじめ諸外国で導入されている追及権制度が存在する。


実現するためには、アート作品の価値付けがなされる国際的なエコシステムの一部となるべく、我が国のアートの国際的な拠点化が必要になる。すでに巨大な市場を築いている中国やシンガポールでは、関税の取扱い等、国外在住者によるアー トの取引を促す仕組みが整備されている。


実際、香港ではアート・バーゼル香港が定期的に開催され、さらに、サザビーズやクリスティーズといった国際的なオークショ ンハウスによるセールは香港で例年開催されており、当該地域がアジアにおけるアート市場の拠点となっていることが指摘できる。


これに加えて、M+という美術的・学術的な評価装置を備えることで、アジアにおけるアートの国際拠点化を完成させようとしている状況にある。


一方、我が国においては、大規模な国際的アートフェアは未だ実現しておらず、国際的なオークションハウスによるセールは日本国内では行われていない。日本国内で企画実施されているアートフェアは、国内最大規模のアートフェア東京でもアー ト・バーゼル香港とは比較にならないほど規模が小さく、オークションの開催も国内のオークションハウス主催によるものに限られている状況である。


我が国がアートの国際的な拠点として成長し、国際的なアート・エコシステムの一大拠点となることを目指すためには、我が国においても、国際的な価値付けの一翼を担うことができる学術拠点の設立や、国際的なアートフェアやオークションの誘致など、アートの取引を活発化させることにつながる取り組みを推進すべきである。


(2)観光政策の一環としてのアート市場の国際拠点化

我が国アート市場の国際拠点化は、富裕層を取り込むマーケティング政策としても観光政策としても重要である。


アート市場が活性化するためには、国内からだけではなく、海外からの取引も増大させる必要がある。そのためには、海外からの集客力のある国際的なアートフェアやアートオークションの誘致など、世界のアートカレンダーに掲載されるようなアー トイベントの成立が欠かせない。


また、富裕層を対象とした観光政策において、アートの力が有効であることがわかっている。日本政府観光局(JNTO)の分析では、現在の富裕層の旅行では従来型(高齢層)と現代型(ミレニアム世代)があり、特に後者の旅行者は、文化や本物志向であることがわかっている27。


アートの文脈では、例えば、中東の英語話者向けメディアにて、アートバーゼル・マイアミビーチやヴェネツィア・ビエンナーレ、ニューヨークのギャラリーツアーなどが富裕層向けアートツアーとして挙げられている28。


アート市場の国際拠点化は、文化経済政策や富裕層を中心とした観光政策において極めて重要であり、我が国の政策の中心に位置付けていく必要がある。


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27 日本政府観光局「富裕旅行市場の分析とコンテンツづくりのポイント」

28 The National News Top 10 Luxury Art Tour



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ZIPANG-3 TOKIO 2020
全館 和・洋・世界のアンティーク「日本最大級アンティークマーケット吹上の魅力」

https://tokyo2020-3.themedia.jp/posts/6873461/



鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
石川県 いしかわ観光特使



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