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猪羊集

2018.04.13 06:33

https://kanekotota.blogspot.com/2015/05/blog-post_32.html【金子兜太句集『猪羊集』】より

山国の橡の大木なり人影だよ          日本海に真冬日あらん山越えれば

さすらえば冬の城透明になりゆくも       春の航夢にがぶりて鱶の腹

荒天の高知菜の花粉微塵(こなみじん)      鮎食うて旅の終りの日向ある

一舟そこにさすらうごとしこおなご漁      夏は白花(しろはな)抱き合うときは尻叩け

朝の星黄金虫標本室は彼方に          食べ残された西瓜の赤さ蜻蛉の谷

道志村(どうし)に童児山のうれしさ水のたのしさ  死火山屋島菜の花どきはかもめかもめ

空海幼名は真魚(まな)春鴎くる内海        えんぶり衆白き夜雲の田へ帰る

桃の里眼鏡をかけて人間さま           桃の村からトンネルに突込む塩気

新墾(にいはり)筑波胡瓜はりはり噛めば別れ    立山や便器に坐禅のような俺が

黒部の沢真つ直ぐに墜ちてゆくこおろぎ 

後記  『猪羊集』   金子兜太

       

猪は山国の名物、私が末(ひつじ)ということで、猪羊集という題をひねりあげた。山国育ちの羊の句集ということである。

内容は、過去の句集九冊(未刊句集二冊を含む)から旅の句中心に好きな句を抄出し、それに、その後にできた旅の句を加えるかたちをとった。思いかえしてみると、兜太百句式の自選句集で手軽なものが、『戦後排句作家シリーズ』(海程戦後の会刊)の兜太集以後なかったのである。

あれは十五年以上も前の刊行で、すでに絶版になっている。その後に出たものは形が大きい上に部数が少ないから、とても手軽とはいえないし、近刊句集の句がはいっていない。

 旅の句に執着したのは、旅の句が好きということと、ここ十年くらいは旅で得た句が圧倒的に多いことによる。なお、抄出に当って表記を修正したものがいくつかあるが、この句集のものを決定版としておきたい。

解説・海程同人 安西 篤(金子兜太集第一巻より転載)

付・後記 (著者エッセイ(俳句によせるおもい)(守武のこと俳諸のこと))/

解説 (「金子兜太句集『猪羊集』に寄す」山田みづえ)/「金子兜太年譜」/ 「金子兜大著書目録」/「あとがき」総頁260頁、判型・ B6判、造本・並製カバー装、

装幀・上口睦人、口絵二頁(写真・田沼武能)発行・1982年7月20日初版、発行所・現代俳句協会、「現代俳句の一〇〇冊」 シリーズ10

『猪羊集』は、第一句集『少年』以降『遊牧集』にいたるまでの九冊(未刊句集二冊を含む)のなかから、旅の句中心に抄出し、さらに『遊牧集』以後の旅の句76句を加えたもの。本句集全体は278句を収録しているが、ここでは重複を避けて、『遊牧集』以後の

76句のみを収めた。

「あとがき」によると、題名の由来は「猪は山国の名物、私が未歳(ひつじ)ということで、猪羊集という題をひねりあげた」という。好評を博した旅吟のアンソロジーである。


https://this.kiji.is/752530167625678848?c=39546741839462401 【イノシシ防除にヒツジが活躍 景観改善、休耕地再生にも効果 平戸・中瀬草原キャンプ場】 より

2021/4/7 23:35 (JST)4/9 10:26 (JST)updated

©株式会社長崎新聞社

雑草を食べるヒツジ。イノシシ被害の防止にもつながっている

 長崎県平戸市田平町の中瀬草原キャンプ場が、昨年4月にリニューアルオープンして1年が過ぎた。以前、周辺は雑草が生い茂り、イノシシのすみかになっている場所もあったが、運営する民間会社「中瀬草原キャンプ場」(同市、白石悦二社長)は雑草処理にヒツジ10匹を投入。想定以上の効果を上げている。

◇秘密兵器

 同キャンプ場は、旧北松田平町が整備。2005年の自治体合併後、平戸市が継承したが、施設の管理が十分に行き届かない状況が続き、市はキャンプ場を再整備した上で同社に運営を引き継いだ。

 ダンチク、セイタカアワダチソウ…。リニューアル前、キャンプ場周辺には雑草につる草が絡み付いた状態で密生。一部、イノシシがすみ着いている場所もあった。つる草が付いた雑草は、機械での刈り払いが困難。そこで、同社が雑草処理の秘密兵器として投入したのが、島原市のNPO法人から借りていた10匹のヒツジだった。

 ヒツジは、つる草やセイタカアワダチソウなどを好んで食べる。人の手では処理が難しかった雑草を黙々と食べ続け、景観は飛躍的に改善。同社によると、敷地を囲む山林、境界付近の雑草が生えやすい箇所(林縁部)の管理を徹底したことでイノシシも姿を見せなくなり、捕獲用のわなを撤去したという。

 同キャンプ場の成果を受け、田平町中央公民館は、雑草が繁茂する休耕地(約千平方メートル)に同社から借りたヒツジ2匹を放し、畑を再生。小麦づくり体験講座を実施している。同公民館の赤木寛参事は「イノシシ防止のワイヤメッシュ柵に絡んだつる草は処理がしにくい。そういう箇所もきれいにしてくれる」と働きぶりを高く評価する。

 ヒツジの奮闘を知った同町大崎地区の住民も、同社に派遣を要望。3月から活動しており、耕作放棄地の再生とイノシシ防除の両面で効果が期待されている。

景観の維持・改善にヒツジの活躍が欠かせない中瀬草原キャンプ場=平戸市田平町

◇最善の策

 白石社長がこの1年、キャンプ場の景観維持・改善に取り組む中で実感したのは「山林や休耕地が荒廃すると簡単に元に戻せない」という現実。今回はヒツジ作戦が奏功したが、イノシシ対策として侵入防止柵などを設置しても、その周りに耕作放棄地や手入れされていない山林が広がっていれば、イノシシが生息しやすい環境になっていることに気付いた。

 白石社長は「わななどでイノシシを捕まえて駆除するのは根本的な解決にならない。イノシシが好む環境をなくすことが最善の策」と指摘する。

 市内では農家の後継者不在などに伴い耕作放棄地が増え、イノシシの生息数も拡大している。同社は、ヒツジの飼育を学ぶ羊飼い養成講座も計画。白石社長は「1次産業、農林業、畜産業の後継者育成につなげたい」と今後を見据える。

 同キャンプ場は広々とした草原と平戸瀬戸、平戸や壱岐などの島を一望できるロケーションが会員制交流サイト(SNS)などで共有され、週末を中心に多くのキャンプ愛好者が利用。同社は、複数の企業から協業の提案を受けており、まちづくり、地域振興への貢献につなげようと検討を続けている。