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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

ロマン派1-若きヴェルテルの悩み

2021.04.13 10:38

1774年9月、25歳の青年ゲーテの小説「若きヴェルテルの悩み」が出版され、たちまちヨーロッパ中でベストセラーとなった。これは若きゲーテの失恋の体験と、人妻に恋して本当に自殺してしまった友人の体験を合わせた小節である。しかし社会的ブームとなり、自殺ブームも起きた。

自殺はローマ時代には高貴な者の業といわれた。自分の命を自分で決める行為だからである。日本の切腹なども、この延長にある。キリスト教は自殺を悪としたが、これはローマ時代のこの習慣に反対して、みだりに殉教という英雄行為をさせないためでもあった。

中世の騎士のラブストーリーは、やはり貴婦人に焦がれるのだが、彼女のために戦場に行く、これも自殺の代替といえなくないのである。ゲーテのこの作品はそういう青年特有の願望をダイレクトに書いた。当然発禁処分もあったが、もはやそれが通用する時代ではない。

人間の自然な気持ちに素直になろう、というのがゲーテの考えだった、むしろ彼は古典主義となっていく。しかし時代的には、啓蒙の理性から「疾風怒濤(シュトルムウントドランク」の感情を優先する時代に入りかけていたのである。自分の命を情熱的に燃やす時代がすぐ後にやってくる。