世界貿易とアジア通貨指数
JPモルガンアジア通貨指数が瀬戸際にある。1997年の急落はタイバーツの下落から本格的な急落となり、1998年1月に底打ちした。7か月で25%近くの下落を見せ、アジア通貨危機と呼ばれるまでになった。
ニッセイアセットマネジメント作成のJPモルガンアジア通貨指数の構成ウェイトを見ると、その内訳は中華系で50%を超える。
8月に人民元の切り下げがあり、同指数は中国元の動きに連動して下落。中国元の切り下げは他のアジア通貨にも影響を与え、シンガポールドルもバンド切り下げを発表した。
当然、アジア貿易では中国にどの国も依存しており、中国人民元が安くなれば、各国は中国からの輸入品が高くなり、輸出品の価格は安くなる。このことにより、交易条件が悪化するため、何かしらの弊害が出てくるのは避けられないだろう。ひとまず、同指数は様子見局面にあるが、現状では下落圧力の方が高いだろう。
一般的に、2001年以降の経済発展の循環メカニズムは
①投資を中心とする中国の経済の上昇/下落→②設備・素材・原材料を中心として中国の輸入の増/減→③設備・素材輸出国(先進国、アジア新興国)、資源輸出国(新興国)の景気拡大/縮小→④世界的な内需拡大/縮小→⑤中国からの消費財輸出拡大/縮小という流れと、
⑥素材を中心とする需給の増/減→⑦素材・原材料価格の上昇/下落→⑧資源輸出国の交易条件の好転/悪化→⑨新興国を中心とする貿易・経済収支の好転/悪化→10新興国の為替圧力の変化(貿易・経済収支悪化→為替下落圧力、輸入インフレ圧力、貿易・経済収支好転→⑪為替上昇圧力、輸入インフレ低下圧力)といった要因で、商品価格・為替水準に大きな影響を与えてきた。
現在の状況では、中国の成長率引き下げ見通しの結果、負のスパイラルがもたらされており、かつ対中国に貿易依存が大きい国に対してその影響力が大きく働いている。
高級品輸出(自動車)を主とするドイツ、電子機器・機械輸出を主とする日本、台湾、マレーシア、タイ、資源を輸出するインドネシア、ブラジル、南アフリカは、この影響を大きく受けている。
2001年に中国がWTIに加盟してから、世界の貿易総量は圧倒的に拡大したが、これは①~⑪までの循環が正に作用したためである。2013年に世界貿易総量は頭打ち1800兆規模だが、このところの中国の経済失速で貿易総量が低下していることが予見される。
この状況を打破し、再び経済を上向き反転するには、EPAやFTAなどの自由貿易協定の拡大が望まれるが、TPPは暗礁に乗り上げている。
反転きっかけの一つの材料として、TPP合意を挙げておきたい。ただし、貿易縮小を遅らせる程度のものだろう。